小説

【乃南アサ】【凍える牙】訓練したオオカミ犬を使った大胆な殺人事件

小説『凍える牙(乃南アサ 著)』の感想レビュー。
男職場に悩む女性刑事と狼と大型犬のハイブリッドドッグとの心の交流を描いた作品。

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あらすじ

深夜のファミリーレストランで、客の男性の体が突如発火、炎上し死亡した。
燃えながら助けを求めていたことから、自殺の可能性は消され捜査本部が組まれる。

機動捜査隊で珍しい女性の刑事・音道貴子は、中年刑事の滝沢と組み捜査に当たることになる。

操作を進めていくうちに、大型犬にかみ殺される事件が相次いで発生する。
ファミレスで炎上死した男性にも同類の噛み跡があったことから事件が関連付けられ捜査は進む。

そうして捜査線上に浮かんだのは、オオカミと一般犬を掛け合わせたオオカミ犬(≒ウルフドッグ)だった。

作品の舞台

ハードカバーの出版日は1996年4月。
作中に明確な年代の表記はないけれど、
連絡の手段がポケベルや公衆電話だったので90年代の内容だと思われる。

音道貴子(おとみちたかこ)

交通警察官→刑事の職歴を持つ。
オートバイ乗り。

刑事という男性社会に食らいついていく胆力のある人。
自分を異物と認識し、必要以上に相方とコミュニケーションを取らない。

今まで受けた仕打ちから男刑事との意思疎通を図らろうとする気も起こさない。
もう少し柔和に接していればチーム捜査も気楽にできたのでは・・・?

物語終盤、ウルフドック・疾風(はやて)と謎の意思疎通をこなすようになる。

滝沢保(たきざわたもつ)

貴子とチームを組んだベテラン刑事。
小太り中年、ハゲ、脂肌という人物像。
※音道の偏見を多分に含む。

刑事は男社会だと思っており、音道とペアを組まされたことに不満を持っている。

女性警察官と女性刑事について

かつて女性警官は全国的に交通部門に配属されることが多かったが、交通部門は凶悪事件を扱わず、比較的安全な職務が多いからとの見解もある。
残業が多い刑事部門・地域部門の外勤が男担当で、重労働・危険度の少ない部署は女担当という認識で配属されることが多かった。

現在交通課の業務も安全・定時的ではなくなっており、飲酒運転など交通マナーの低下により危険度は増えている。
一般的に初任配属先は地域課もしくは交番勤務と規定され、女性警官の場合は原則的に交通課であったが、近年の配属先には多様性が見られる。

さらに女性被疑者の増加、性犯罪の多発により女性の能力も求められ、刑事課や生活安全課に配属される女性捜査員が増員されている。
刑事部門は能力や適性や素質を重視する傾向が強く、刑事への志願者が少なかったという現状もあるが、
適性のある警察官がスムーズに任用されるようになった結果もあり、よって女性刑事も増えている。
なお、2000年以降では私服警察官のうち約20%が女性警察官。

wikipediaより

感想

放火事件・・・逆恨み
オオカミ犬事件・・・復讐
二つの事件に女性の社会進出問題というエッセンスを加えた作品。

放火事件、オオカミ犬事件共に最初は事件の一部始終があり、
その後、音道と滝沢の視点を行き来しながら操作を進める展開。

最初に殺しの一部始終を見せられる展開には驚いた。
最初も最初、物語冒頭4ページ目で人間が燃えるんだもん。

グッと物語に引き込まれて、その後の事件捜査パートも難なく読める。
得意じゃないんだよね、捜査パート。
捜査中に事件の詳細を語られるよりインパクトがあったなぁ

人体放火はインパクトがあったけど、次第におおかみ犬にシフトしていく。
オオカミ犬は、狼とイヌを交配した犬種で、ミックスで狼の血が濃いほど人気が高い。

作中で登場する疾風は、指示した人間を噛み殺す訓練を受けたオオカミ犬。
時速50km程度で貴子の乗るバイク、滝沢の乗る警察車両を引き連れて首都高を爆走する。

最終的に自宅を放火した犯人に辿り着くんだけど、どうやって見つけたのだろう?
あと、最初の太ももの噛み跡はなぜ失敗してしまったのか?謎だ。

最終的に貴子と謎のテレパシーで意思疎通。なんじゃそら?
貴子が『そうであってほしい』と思っただけかもしれないけど。

放火事件、オオカミ犬事件、女性の社会進出、家庭問題・・・
それぞれ独立した問題なので、詰め込んだなぁという印象。
もっと事件部分を掘り下げて欲しかった。

そうすれば、放火事件の犯人のクズさも際立ったろうし、
オオカミ犬事件の犯人への同情と、疾風が殺人を犯すことに応援もできた。

事件オンリーだと、普通の刑事小説になっちゃうし・・・
むずかしいね。

印象に残っている言葉

流れているのは似合わないような気がするシャーデーの最初のアルバム。
見かけないと思ったら、ここに入れっぱなしになっていたのだ。
何をしても、何を聴いてもどこかの記憶につながっていく。
それが、年を重ねていくということなのだろうか。
思い出したくもない風景ばかりを、
自分のうちにため込むのが人生だというのか---。

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