『ラブカは静かに弓を持つ(安壇美緒 著』
全日本音楽著作権連盟(JASRAC的な組織)に所属する橘は、音楽教室ミカサ(ヤマハ的な組織)で著作権音源が使用されていないか、
生徒として侵入調査をすることになる---。
あらすじ
少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢のような夢に苛まれながら生きてきた橘。
ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。
目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。
橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。
師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、自分はスパイ。
証拠がそろい、いよいよ、法廷に立つ時間が迫り、自分が裏切り行為をしたことに悩まされるが---。
感想
チェロの習い事の帰りに発生した、幼少時の誘拐事件。
事件自体は未遂に終わったけど、家庭環境の悪化や、チェロをやめてしまったことなど、
主人公の橘にとって、尾を引く事件だった。
その影響で長らくチェロからも離れていたところに、潜入調査の依頼。
いやいやながら、音楽教室ミカサへ通うことになる橘。
そこで、チェロの楽しさを再認識。
そこで出会った講師やチェロ仲間たちとの交流をするにつれ、
長年患っていた不眠症も改善していく。
しかし、自分はスパイ。
二年の期限付きで法廷で争うことになる運命。
そんな、心の葛藤を描く本作。
出会いはどうあれ、チェロは楽しかったのは事実。
講師へ迷惑をかけないようにと、職場のパスワードを予測するところはご都合主義観を感じたけれど、
身元割れからの仲間たちのやさしさにホロリとしてしまった。
自分が講師側だったら、許せねぇッ!!
って、絶縁しちゃうよ。
和解の仕方も、不器用ながらほっこりする感じ。
サクサク読めて、ほっこりできる本です。