小説

【影法師】光当たるところに影があり。不器用な友情がたまらない【百田尚樹】

『影法師』ハードカバー表紙

小説『影法師(百田尚樹 著)』の感想レビュー。

あらすじ

時は江戸時代の茅島藩(架空な藩)で下士の家に生まれながらも筆頭家老にまで上り詰めた勘一は、
江戸から帰国後、幼い日に目の前で父親を切り捨てられた日に出会い、後に竹馬の友となった磯貝彦四郎の訃報を知る。

頭脳明晰で剣の達人。将来を嘱望された彦四郎がなぜ不遇の死を遂げなければならなかったのか?

感想

下士の出で、主人公の凡庸な勘一が立身出世していき、
中士の出で、頭脳明晰、剣の腕も同年代では最強の彦四郎が没落していく、
才能があっても、コツコツ努力を積み重ねた者には勝てないんだよ。
という、寓話的な内容。
と、途中までは思っていました。

物語は、勘一が江戸から22年ぶりに帰郷するところから始まり、
帰郷後受けた、彦四郎の訃報。
そこから始まる、自身の半生の回想。
回想と、現在を行き来して、勘一の人生を賭した目的、
『干潟を開墾して藩を豊かにする』
ための事業内容が判明していくとともに、
親友・彦四郎の生涯も見えてくる。

人生の目標が早い段階で見つかった勘一と、
文武ともに非凡な才能を見せながら、目標の無い彦四郎。

なのに、一方は筆頭家老、一方は家を追い出された浮浪者。
いったいどこで差がついた・・・?

百田小説はどの作品も読みやすい。
それは時代小説でも同様に。
江戸時代の藩の社会構造や環境って残酷だよなぁ
家の位がすべてっていうか。
勘一みたいに成り上がるのは難しいのかな?
いや、一人じゃ成り上がることはできなかった。

侍の一生、
恋愛、
友情、
殺し合い、
嫉妬
人生の残酷さ、
後悔、
様々な要素が組み合わさった作品で、テーマは『友情』。

読了後、タイトルの意味が分かったときの気持ちといったら・・・!

影法師

光が当たって、障子や地上などに映る人の影。

こういう不器用な友情って好きなんだ。
オススメです!

作中で好きなシーン

上覧試合の前に、
住職で剣の師匠の一人、恵海から教わった秘剣を封印するシーン。

「上覧試合では、その技を使うつもりか?」
「その技を使えば、一位となるも可能だろう」
「だが、これだけは申しておく。世の中に必勝の剣法というものはない」

「この剣法にも弱点はあるのですか?」

「初めて見た者には、まず破ることはできぬだろう。
だが、剣技というものは、ひとたび披露すれば、必ずやそれを打ち破る技が生み出されると心得よ」

恵海が言おうとしていることがわかった。
「今度の上覧試合で、私がこれを使えば、もうこの技は必勝の剣ではなくなるということですね」

「武士にとって、剣を抜くことは一生に一度あるかないかだろう。
言いかえれば、剣の修行に励む者は、その一度のために修行をしているようなものだ。
お前が、三日後の仕合を一生に一度の大勝負と考えるのならば、存分に使えばよい。
だが、お前がその技を披露したその時から、その技はもはや必勝の剣技ではなくなる」
「いつの日か、お前が真剣で戦う時が来たならば、その時は---その技では勝てぬと心得よ」

そのやり取りのあと、仕合では秘剣を封印。
→これ、絶対、見せ場くるやつじゃん!
→秘剣の見せ場もカッコイイ!

激熱展開なんだよ~

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