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【死にゆく者の祈り】教誨師が担当した死刑囚は命の恩人だった【中山七里】

『死にゆく者の祈り』ハードカバー表紙

小説『死にゆく者の祈り(中山七里 著)』の感想レビュー。

あらすじ

無二の親友は確定死刑囚だった――。
司法の裁きと救済の意味を問う、哀切の社会派ミステリ!
囚人に仏道を説く教誨師の顕真。拘置所で目に留まった一人の確定死刑囚。
それは、かつて顕真を遭難事故から救った親友だった。
友はなぜ人を殺めたのか。担当刑事とともに遺族に聞き込みをはじめるのだが――。
事件の驚愕の真相とは。友は絞首台の露と消えてしまうのか・・・。
人間の「業」を丹念に描く、渾身のミステリ長編!

感想

たまたま先輩の代わりに囚人たちへ説法に出かけた先で、大学時代の友人を発見する、教誨師の顕真。
友人は死刑囚で刑の執行を待つ身。
親友が教誨に顕真を指名してから再び交流が始まる。

顕真は、友人の罪状に興味を持ち調べるが、友人にあるまじき短絡的な犯罪だったため、改めて事件を調べ始める。
担当刑事と共に、遺族や関係者を当たっていくうちに、友人の殺しは冤罪だった可能性が出てきて---。

自暴自棄気味な友人と、それを助けたい顕真。
哀しいすれ違いと償いで罪をかぶった友人。

でも、真犯人は別にいて・・・

親友の死刑執行が決まって、ラスト20ページ。
まだ真犯人は見つからない。
まさかこれ、死刑が執行されるパターン!?
と、残りページの少なさでこのまま事件解決されるのか不安になってしまう。

さて、結末はいかに!?

勉強になったこと

永山基準

1968年10月から11月にかけて当時19歳の永山則夫が、横須賀アメリカ海軍基地から盗んだ拳銃で四人を射殺した。
これが世に言う<永山則夫連続射殺事件>だ。
そして逮捕後の公判で永山は死刑判決を受けたが、その死刑判決の傍論として挙げられた死刑適用基準が、後の死刑判決を宣言する際の参考とされた。
具体的には次の九項目だ。

1.犯罪の性質
2.犯行の動機
3.犯行態様、特に殺害方法の執拗性、残虐性
4.結果の重大性、特に殺害された被害者の数
5.遺族yaまじの被害感情
6.社会的影響
7.犯人の年齢
8.前科
9.犯行後の情状

むろん、この九項目すべてに該当すれば直ちに死刑というものではなく、それぞれを総合的に判断した上での判決となる。
「永山基準で最も人口に膾炙されているのは4に挙げられた被害者の数です。
一人ならまだよし、二人であれば極刑もやむを得ない・・・
俗説と片づける向きもありますが、実際永山事件以降、被害者の人数が死刑か懲役刑かの分岐点になる判決が多くなりました。
もっとも近年、永山事件並みの凶悪事件が頻発して永山基準が変化しつつあるのも確かですけどね」

死刑の基準があるのか・・・

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