『虐殺器官(伊藤計劃 著)』の感想レビュー。
あらすじ
戦争やテロリズムが激化した近未来、
先進国では自国民のあらゆる行動をコンピュータでテロ対策を行い、一定の成果が上がっていた。
一方、後進国は不自然なほどに内戦が頻発しており、
事態を重く見たアメリカは、情報収集及び戦争を扇動する人物を突き止めるため、戦の現場に軍人を送り込み暗殺させる作戦をとっていた。
調査を進める内に、内乱を誘発している人間が居ることを突き止めた。
名前は、ジョン・ポール、アメリカ人。
主人公、クラヴィス大尉は、戦地に浸透して暗殺任務を行う特殊部隊の一人。
クラヴィスは、ジョン・ポール捕獲の任務を受け、内戦地に赴く・・・
感想
近未来装備を駆使して、アメリカ情報軍・特殊検索群i分遣隊クラヴィス大尉が敵地に浸透して、
最優先目標を暗殺し無事に帰還するまでを描いた近未来SFアクション。
と思いきや、戦闘描写はそこまで多くなく、クラヴィスの一人称視点で内面を描きつつ物語は進む。
近未来兵器の説明は非常にワクワクする。
・動物の筋肉を使った突入ポット
・時間帯同期剤
リージョンシンク
体内時計を調節する薬
・痛覚マスキング
痛みを遮断する処置
・副現実(オルタナ)
仮想空間を表示させられる目薬型コンタクト
・社会網有向グラフ解析
ソーシャル・ネットワーク・ダイレクテッド・グラフ・アナリシス
最新の技術で痛覚を遮断された兵士(痛み理解できるけど認識できない)は、
腕が吹き飛んで、足を撃ち抜かれて、腸が飛び出しても、
死ぬ間際まで100%のコンディションで応戦できる。
おっそろしいわ。
日常パートだと、
先進国では、あらゆる場所で生体認証(指紋、静脈、網膜など)を求められる。
そのお陰であらゆる人間の追跡が可能になり、あらゆる犯罪が減ったんだけど、
それを窮屈に思う人や生体認証の網を潜り抜ける術を編み出したりしてる。
キャッシュレス化が確実に進行していて、アナログ紙幣を見るのが珍しいほど。
時代を先取りできる人ってどういう発想しているんだろ?
キャッシュレス化なんて、僕は最近移行し始めたばかりだよ・・・
ルツィアがジーンズから財布を出したので、ぼくはびっくりした。
ここ数年、財布なんてものにはお目にかかったことがないからだ。
さらに驚いたのは財布から紙幣を取り出したことだ。
ルツィアはその紙幣をボーイに渡す。チップ。
認証による支払いが市場を支配してからすっかり消滅してしまった風景だった。
人間には常々虐殺を誘発する器官が内蔵されている。
ジョンが虐殺の言葉により、虐殺器官を刺激し、内乱を誘発する動機が良かった。
これも一つの愛のかたち。
クラヴィスはジョンから受け取った言葉をなんでこういう形で使用したんだろう?
癇癪で全てを壊したかった?
全てを平等にしたかった?
よくわからん。
近未来の一つのかたち。オススメ!