小説『歌舞伎町セブン(誉田哲也 著)』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
冬のある日、歌舞伎町の片隅で町会長の高山が死体で発見された。
死因は急性心不全。事件性はないはずだった。
だが、これを境に、この街の日常はなにかがずれ始めた。
それに気づき、手探りで真相を追い始めた人間たちが、必ずぶつかる「歌舞伎町セブン」とは何を意味するのか。
そして、街を浸食していく暗い狂気の正体とは―。
感想
警察官の小川は、急性心不全で亡くなった高山の死因を疑っていた。
高齢なれど、健康だった高山が急性心不全だったこと。
死因が、14年前に亡くなった自分の父親とそっくりだということ。
フリーライターの上岡は高山が最後に会っていたとして警察に職務質問を受ける。
さらに、フリーライターの人脈からきな臭い噂をかぎつける。
「これはネタになるかも・・・!」
死因やネタの裏取りを行っているうちに小川と出会い、二人は利害関係の一致から
『歌舞伎町セブン』『欠伸のリュウ』を調べ始める。
小川、上岡の一般人視点と、
市川、陣内などの裏稼業視点。
二つの視点から物語は進み、やがて交錯する。
殺し屋の二つ名がカッコイイ!
・欠伸のリュウ
・枕のキョウ
など
俺もなー、二つ名欲しいなー
終わり方が、
”法を犯すものはいずれ裁かれるんだぞ”
と示唆しているよう・・・
動機は恨み
陣内が狙われた理由は恨み。
陣内の姉:静江
母子家庭で育児放棄気味だった母親に対して、二人で肩を寄せ合って暮らした幼少期。
静江が小学校六年になると自身も売春をはじめお金を稼ぎ始める。
売春で得た金で陣内を育てるが、こんな生活は嫌だ惨めだと思っていた。
やがて、陣内は家に帰らなくなり、静江の行方も分からなくなる。
私をこんな境遇に落とした歌舞伎町を無茶苦茶にしてやる・・・
静江の野望は長年を賭けて実り始めた。
そんな折、陣内と再会する静江。
そこには、夫婦に子供一人という幸せな家族像があった。
「私はこんなに苦労しているのに、お前は幸せな家庭を作りやがって・・・
ゆ、ゆるせん!」
というのが動機。
元歌舞伎町セブン:キョウ
無一文で歌舞伎町に来た陣内は、ヤクザの臨時見張りなどで日銭を稼ぎ飢えを凌いでいた。
そんな折、二代目平松組若頭の斎藤に喧嘩を売り、返り討ちに。
それが縁になり、住む場所の無い陣内に仕事と住処を与え、ヤマさんと一緒に行動させる。
ヤマさんは、『欠伸のリュウ』と呼ばれる殺し屋で、陣内はその仕事を学び、
次代『欠伸のリュウ』として指名されることとなった。
それが気に入らないのが自分こそが『欠伸のリュウ』になると思っていたキョウ。
自分の殺しの腕こそがチーム随一だと思っていたのに、割り振られた役割は、『目(監視)』。
『目(監視)』の役を引き継いだら『手(殺し)』の仕事は二度とやることができない。
自分こそがチーム一の殺し屋のはずなのに・・・
陣内許すまじ・・・!
そして、静江とキョウは利害が一致し、陣内を追いつめることになる・・・
まとめ
一生懸命生きていても、周りから恨みは買ってしまうんだな。
もっとコミュニケーションをとっていれば防げた事件のような気もするけれど・・・
なかなかうまくいかないものですな。