小説『フリーター、家を買う。(有川浩 著)』感想レビュー。
もくじ
あらすじ
就職先を3か月で辞めて以来、自堕落気ままに親のスネをかじって暮らす”甘ったれ”25歳が、母親の病を機に一念発起。
バイトに精を出し、職探しに、大切な人を救うために、奔走する。
本当にやりたい仕事って?やり甲斐って?
自問しながら主人公が成長する過程と、壊れかけた家族の再生を描く、愛と勇気と希望が結晶となった長編小説。
コミュニケーション不全家族
主人公、誠治は仕事を止めてからは両親に甘えて実家暮らしのフリーター。
父、誠一は仕事が出来る分プライドが高いけど口下手。さらに、酒癖が悪い。
母、寿美子は大人しく言いたいことを上手に伝えられない内向的な人。
姉、亜矢子は言いたいことをしっかりと伝え、父との喧嘩は日常茶飯事だった。
この中で対人関係でまともなのは亜矢子だけで、しっかりと伝えるべきことを伝えていたからこそ喧嘩もしたけど、家族という集団は保たれていた。
そんな亜矢子が嫁ぎ、数か月が過ぎた後・・・
不健全コミュニティーの実態は、寿美子うつ病発症という形で露見する。
誠治、誠一、寿美子の誰が悪いというのではなく、全員が全員に原因がある。
誠一は確かにクソ野郎だけれど、憎み切れない部分もあるし、
うつ病になるほど自分を抑えていた寿美子にも原因があると思うんだよなー
なお、亜矢子はコミュニティーの問題を把握し、唯一健全に保とうと努力していた人。
やりかたが悪かったのか失敗してしまった。
いや、一度、現実をこれでもかを見せないと実態に気づけない家族だったのかもしれない。
誠治の就職活動
誠治の就職編もすごく面白い!
クソ親父だと思っていた誠一も仕事関係になると口下手ながら的確な指摘をくてくれて、評価が上がる。
クソだなーって前提は残ったままだけど。
バイト先の土建屋のオヤジ達は粗野ながらやさしい人たち。
年齢を重ねた分だけ言葉に重みが出ますよ。
まとめ
家族の機能不全の是正というコミュニティーの内側に向けた問題、
就職活動をし会社に勤めるというコミュニティーの外側の問題、
二つを楽しめる。
家庭編と職場編、切り離されているようで繋がっていてどちらが欠けても成立しなかった物語。
母親のうつ病の看病という重たい問題を経験することで、誠治は現実と向き合うことが出来るようになった。
どん底を経験しなければ人間は強くなれないのかなぁなんて思ってしまう。
僕は、こういった経験を読書で疑似体験して、自分の血肉に少しでも変えている。
・・・家族や他人ともっとコミュニケーションを取らなきゃいけないなぁ
オススメ!