『あきない世傳金と銀13 大海篇(髙田郁 著)』の感想レビュー。
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あらすじ
宝暦元年に浅草田原町に江戸店を開いた五鈴屋は、仲間の尽力を得て、一度は断たれた呉服商いに復帰、身分の高い武家を顧客に持つことで豪奢な絹織も扱うようになっていた。
だが、もとは手頃な品々で人気を博しただけに、次第に葛藤が生まれていく。
吉原での衣裳競べ、新店開業、まさかの裏切りや災禍を乗り越え、店主の幸や奉公人たちは「衣裳とは何か」「商いとは何か」、五鈴屋なりの答えを見出していく。
時代は宝暦から明和へ、「買うての幸い、売っての幸せ」を掲げて商いの大海へと漕ぎ進む五鈴屋の物語、いよいよ、ここに完結。
感想
吉原衣装比べに始まり、店舗増設、吉次のための色、火事、音羽屋忠兵衛との決着、そして大海へ・・・
巻が進むごとに季節の巡りがどんどん早くなってくる・・・
十三巻でまとめなくちゃいけない理由なんかあるのかね?
作中で三年も四年も経たれちゃたら登場人物と読者との間の時間間隔が合わなくなるぅ~
もっとのんびりやってもいいんだよ?
店舗増設からの音羽屋忠兵衛の嫌がらせかと思いきや、惣ぼんまさかお前・・・
惣ぼんも自社の利益のためなら古巣への犠牲を厭わない。
という冷徹さを垣間見せた。
音羽屋忠兵衛との決着はずいぶんとあっさりしていたね。
刃傷沙汰になったら、それは作風と違うよな・・・ってなるのでこういう決着しかないのかな。
作者、試練は与えるけど、不幸は与えない感じだよね。
結の行動は、姉に対するわだかまりなのか反骨なのか。
色々あったけど、姉の呪縛から解き放たれて幸せにやってくれたらな・・・なんて思わせてしまう。
最後のすごろくは、幸と五鈴屋の歴史を追っていて、ジーンときちゃったな。
一緒に写っているのが誰とでも取れる男は、賢輔だったら嬉しいな。
作品全体の感想
一人の女性の半生をつづった物語。
まだまだ幸の人生も五鈴屋も続いていくけれど、物語はここでおしまい。
後半の駆け足感が嫌だったけど、当時の新規事業はこれだけ時間がかかるってことだったのかな?
個人的に一番好きなシーンは、浴衣づくりかな。
花火大会で、皆が同じ浴衣をきて船にのるシーンは情景が思い浮かぶほど。
直前の型紙窃盗のストレスもあって、うぉぉぉっ!!ってなった。
その後の湯屋に偵察にいくと、みんなが同じ鈴の模様で染めた浴衣を着ているのも努力が報われた感がいいよなぁ
僕だったらここで満足しちゃいそうだ。
そうやって足を止めると、十数年先に没落してしまうんだろうな・・・
日々、常に努力。ツライヨー
外伝では、幸の逝去と信念の継承が行われたりするのかな?
もう少しだけ、あきない世傳金シリーズを楽しめそうだ。