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【あなたの人生、片づけます】あなたが片づけられない原因はなんですか?【垣谷美雨】

小説『あなたの人生、片づけます』ハードカバー表紙

小説『あなたの人生、片づけます(垣谷美雨 著)』の感想レビュー。

部屋の片づけは、人生の片づけ。
片付け請負人、大庭十萬里が様々な依頼人の部屋や家を片づける。
部屋は、見るからに汚部屋なものから、
一見綺麗だけれど・・・なものも。

部屋を片づけるというより、
汚くなる心因を解消して、結果、部屋や家を綺麗にしていくのが十萬里流。

本作には、四人の片づけられない人が登場し、各々の悩みを抱えている。
十萬里はどんな片づけ方法を指南していくのか?

もくじ

あらすじ

結婚適齢期を過ぎた独身OL、
連れ合いに先立たれた老人や資産家女性、
一部屋だけ片づいた部屋がある主婦。
『部屋を片づけられない人間は、心に問題がある』と考えている片づけ屋・大庭十萬里は、原因を探りながら手助けをしていく。
この本を読んだら、きっとあなたも部屋を片づけたくなる!

十萬里さんってどんな人?

「大庭十萬里ならテレビで見たことあるよ」
綾子の話によると、昨年九月に『あなたの片づけ手伝います』を出版した五十代の女性だという。
ブログが出版社の目に留まったのがきっかけだったらしい。
「だけどね、いまいち売れてないみたい」
「どおりで聞いたことないと思った。
それにしても二番煎じもいいとこだね。
きっと、今までベストセラーになった本のいいとこ取りでまとめたって感じなんでしょ」
「それがそでもないらしい。
部屋だけじゃなくて人生そのものを整理してくれるとかで、熱狂的なファンもいるよ」
「人生を?どういう意味?」
「人生相談にも乗ってくれるってことじゃないかな」

ドアを開けると、意外にも丸顔のおばさんが立っていた。
顔と同じで体つきも丸い。
黒の半そでポロシャツにジーンズを履き、大きなカバンを肩から提げている。
ポロシャツの袖回りがきつそうで、二の腕がむにゅっとはみ出している。
ぷっくりとしたきめ細かい肌は柔らかそうだ。
母とは正反対のタイプに見えた。
母は体が薄べったくて、見るからに神経質そうだ。

以外にも落ち着きのある声だった。
もっと甲高くて、いかにも愛想のいい商売っ気たっぷりといった声を想像していたので、
警戒心が少し緩んだ。
玄関に行ってみると、普通のおばはんが立っていた。

玄関にはどこでもいそうな普通のおばさんが立っていた。
きっと実物を見たら意外に美人だとか、
思っていたよりずっとスタイルがいいなどとかんじると想像していたのだけれど、
全然そんなこととはなかった。

特別な技術のある感じではなく、普通のおばちゃんって印象。
それが相手に警戒心を抱かせないポイント?

感想

ケース1:OL

作中随一の汚部屋。
誰が見ても「これぞ、汚部屋!」の持ち主。
片づけられなくなった原因は、

・結婚をちらつかせて不倫を継続させる上司
・Noと言えない性格

から来るもの。
十萬里は、片づけと並行して上記の問題も解決していく。

彼に認めてほしくて、彼の好きなものを買って、
結局使わなくって溜め込んでしまう・・・

あるあるなのかな?
僕はあまり相手に合わせたりしないので。
あれだけ惚れていたのに、目が覚めると大したことない男だったと気づく。
そして、掃除ははかどっていくのであった。

ケース2:妻に先立たれた家事をできないおじいちゃん

家事を一切しない職人肌のおじいちゃん。
近くに住む自分の娘が仕事帰りに食事や洗濯をしてくれる生活。
娘は、夫が会社でトラブル、息子は不登校になるわで精神的に限界が来ていて・・・

十萬里は、おじいちゃんの片づけを敢行するとともに、
依頼人である娘のケア、はたまた家族問題の全てを上手く利用して、
問題を解決していく・・・

個人の問題ではなく、コミュニティ全体の問題だった今回の話。
ご都合主義っぽく進むけど、みんな前を向いて進むようになったのが良い。

ケース3:豪商の館に一人残っている中年女性

収納が沢山あるので表向きは綺麗な一軒家。
その実、過去の栄光にすがるだけの骨とう品が溢れかえってきた。

ほとんど泊りにくることがなくなった、息子(娘)夫婦やその孫たちのための布団。
大量に来客があった時のための座布団、
デザインが古臭い冠婚葬祭用の着物たち。

だれも訪ねてこず、子供や孫の現状すら情報が古い中年女性のお片付け。
これも、子や孫を巻き込んでの整理整頓。

有事の事を思って捨てられないのは、あるあるですね。
僕も昔はそうでした。
さすがに、使えるからって洗濯機数台、炊飯器数台とか残してはいないけど・・・
いや、収納があったら残していた可能性もあったり・・・?

最終的に、中年女性は家を売ったのではなかろうか?
と想像してみたり。

ケース4:子に先立たれた母

交通事故で亡くした長男が忘れられずに、一日ぼんやりするようになった母親。
母親には、夫も、娘も二人居る。
母親が亡き長男溺愛のため、
夫は仕事に逃げ、
娘は母親の愛情を確認したくてグレてみたり、無視してみたり・・・

十萬里はどのようにして、母親から長男の出来事を受け入れさせのか・・・?

運転手も即死の事故だったため恨む相手を失ったのも、母親がおかしくなってしまった原因の一つ。
これは他人に解決するのは難しいんじゃ・・・と思いきや、
自身の経験を生かして、上手いこと解決に導いていた。
グレた娘も子供帰りして、この家庭もここからまた踏み出していくんだろうな・・・
という終わり方。

本ケースでは、十萬里がなぜ片づけ請負人になったのかも少し語られている。

まとめ

十萬里メソッドが染みついて、
よーし、もっと片づけて、これからの人生を楽しむぞ!
というところで終了。
その後をもうちょっとだけ見たいなー
ってところでどの話も終わってしまう。
その分、今後を想像する余地があるってことなんだけど。
それはそれで、楽しいのであった。

現実問題でも、片付けられない人って、原因がどこかにあるのかもしれない。
なんて思ってしまった。
中にはただグータラなだけって人もいるだろうけど・・・

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