小説

【慟哭】娘を失った男の悲しみと狂気【貫井徳郎】

小説『慟哭』ハードカバー表紙

小説『慟哭(貫井徳郎 著)』の感想レビュー。

あらすじ

連続する幼女誘拐事件の捜査は行きづまり、捜査一課長は世論と警察内部の批判をうけて懊悩する。
異例の昇進をした若手キャリアの課長をめぐり、警察内に不協和音が漂う一方、マスコミは彼の私生活に関心をよせる。
こうした緊張下で事態は新しい方向へ!幼女殺人や怪しげな宗教の生態、現代の家族を題材に、人間の内奥の痛切な叫びを、鮮やかな構成と筆力で描破した本格長編。

感想

捜査一課長・佐伯視点の警察パートと
娘を殺された父・松本視点の新興宗教パートの二編が交互に進行していく形式。
奇数章が警察パート、偶数章が宗教パートと綺麗に交互進行。

警察パートは、
巷で起きている幼女連続殺人事件を追う展開。
手がかりが少なく、捜査がなかなか進まずにいる間に犠牲者が増えてゆく・・・

宗教パートは、娘が誘拐されて殺された男が心の隙間を埋めるために新興宗教にのめり込む話。
お布施をし、貢献上位信者しか参加できない儀式や教義を教えてもらい、松本は自分の娘を復活させる方法を模索していく・・・

読み進めていくうちに、宗教パートは犯人パートであることが分かる。
自分の娘を復活させるために名前の相性の良い同年代の子を依り代にして娘の魂を憑依させる・・・
なんてことは実現するわけもなく、「次は成功させる・・・!」と松本は犯行を重ねていく。

読み終わると、松本の『慟哭』がよーく伝わる話でした。

---ネタバレ感想---

信じるということ

「あなたはどうしてこんなことをしでかしたんですか?
須藤という記者に聞いて、新興宗教がまやかしだと知っていたはずでしょう?」

「それは愚問ですよ。
人は自身が信じたいことだけを信じるのです。
私は娘が生き返ると信じたかったから、信じた。
それだけのことですよ。」

本文より

正しいものを信じるんじゃない。
信じたいものを信じるのだ。
って誰かが言っていた。

時系列のズレについて

早い段階で予想の一つとして当てていた。
そうなると、佐伯と”彼”は同一人物なのでは・・・?
でも、”彼”は松本って明記されているし・・・
でもでも、個人描写が少ないから妙に違和感が・・・?
???佐伯=松本、違うのかなぁ・・・

佐伯の旧姓について

佐伯の旧姓は松本。
実父は、押川英良。
これのせいで散々混乱させられたんだけど、認知はしたけど結婚はしてないんだよね!
明言されてたのにぃぃぃ!

松本とは佐伯の母方の姓。

タイトルの『慟哭』について

さらに、結末に至ると、何と、メインの事件は解決していないのである。
(中略)
そして、まさに《解決していない》ことによって、そこにはぽっかりと暗い穴が開くのである。
この黒を背景として、佐伯の慟哭が---絶望が、そして狂気が浮かび上がる。
この効果は絶妙である。

解説より

良い解説だぁ~
終盤にタイトルと佐伯の心情がリンクするんですよ。
そして、ラストの一行!
慟哭は過去形ではなく、現在進行形だということが判明した時の気分といったら・・・
鳥肌がブワッと立った。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。