小説【ひとつむぎの手(知念実希人 著)』の感想レビュー。
お医者様が主人公の物語というと、
聖人君子か、
手術がプロフェッショナル
のどちらかだと思っていたけど、
患者に対しては紳士だけど、
他人に嫉妬するわ、
上昇志向はあるけど、
手術の能力はすこし上手なくらい。
とーっても平凡な主人公。
よくあるーパーお医者様主人公と違って親近感がある。
そんな主人公が、
・院内の権力闘争
・不正の密告調査
・新人教育
を自分の進路(出向先)をエサに巻き込まれ、成長していく物語。
あらすじ
大学病院で過酷な勤務に耐えている平良祐介は、医局の最高権力者・赤石教授に、三人の研修医の指導を指示される。
彼らを入局させれば、念願の心臓外科医への道が開けるが、失敗すれば・・・。
さらに、赤石が論文データを捏造したと告発する怪文書が出回り、祐介は「犯人探し」を命じられる。
個性的な研修医達の指導をし、告発の真相を探るなか、怪文書が巻き起こした騒動は、やがて予想もしなかった事態へと発展していく---。
感想
院内の権力闘争というか、
密告文書の犯人捜査にに巻き込まれて、
院内トップたちの考えや、
ライバルの苦悩を知った平良。
さらに、研修医三人を通して、
興奮冷めやらぬ口調で言うと、牧は小走りに去っていった。
「なんだったんだ?」
あっけにとられていると、宇佐美が忍び笑いを漏らした。
「男って単純ですよね。牧君、さっきの発表を聞いて、平良先生に心酔しちゃったんですよ」
「心酔って、俺はべつに特別なことなんて・・・」
予想外の言葉に、祐介は気恥ずかしくなる。
「平良先生にとってはきっと特別なことじゃないんでしょうね。
けれど、それって本気で患者さんのことを考えていて、
そのうえしっかりとした知識があるからこそできるんだと思います。
きっと、牧君はそこに惚れちゃったんですよ」
「惚れ・・・?」
絶句する祐介に向かって、宇佐美はからかうように言った。
「男に惚れられる男性って、本当に格好いい人だと思いますよ」
嫌われていた研修医に惚れられるの図。
積み重ねではなく、ワンエピソードでキライ→尊敬と手のひらを返されたので
ご都合主義感を感じるし、これを残りの研修医二人からも見せられるので食傷気味になる。
※宇佐美のエピソードが一番良かったな。
※「男に惚れられる男性って~~~」とクッサイ台詞付きだしね。
けど、相手というより自分の打算で行動して失敗して、
実際の行動で挽回する。
こういう展開、嫌いじゃないよ。
「俺はこんなもんじゃない!」
「あのときの事故がなければ・・・」
「あいつはズルい、俺も血縁だったら・・・」
と、過去や外部にヘイトを求めていた平良だったけど、
最後は、ようやく自分の実力に気付き、
自分の適材適所に向けて進路を決め、前向きに進んで行く。
とても人間臭い医者が主人公の物語でした。