小説

【犬がいた季節】犬が見つめた少年少女たち十八歳の群像劇【伊吹有喜】

『犬がいた季節』表紙

『犬がいた季節伊吹有喜』

もくじ

あらすじ

1988年夏の終わりのある日、高校に迷い込んだ一匹の白い子犬。
「コーシロー」と名付けられ、以来、生徒とともに学校生活を送ってゆく。
初年度に卒業していった、ある優しい少女の面影をずっと胸に秘めながら・・・。

昭和から平成、そして令和へと続く時代を背景に、コーシローが見つめ続けた18歳の逡巡や決意を瑞々しく描く青春小説の傑作。

1988年夏の終わりのある日、八稜高校に迷い込んだ一匹の白い捨て犬。
コーシローと名付けられたその犬は以後、学校の看板犬となった。

高校に居ついたコーシローは、生徒たちと一緒に高校生活を送ってゆく。
コーシローが見守った昭和末から平成中期、少年少女たち十八歳の群像劇。

全五編+最終章。
読み終わったあとは、是非表紙カバーをめくってください・・・

コーシローについて

サイズ

大中小の大まかなくくりとして考えると、

■大型犬
作中で何度か抱っこされているシーンがあるので大型犬ではなさそう。

■小型犬
抱っこするには丁度良さそうだけど、上履きを咥えて走り回るかというと、あまり絵にならなそう。
純白の犬種として日本スピッツがキャストで似合いそうだけれど・・・

■中型犬
上履きを口に咥えるにも丁度良い大きさ。
サイズ的には女性でも抱っこも出来なくもない。
ブラッシングのシーンが多くあるので、モフモフなダブルコート犬と予想。

紀州犬かな?

個人的に小型犬より中型犬が好きなので、コーシローは中型犬。いいね?
犬種は、捨てられていたし、貰い手が見つからなかったことから雑種なんだろうね。

八高に来た年齢

でも実際にコーシローを見ると、みんな(里親になるのを)やめてしまう。
子犬ならいいんだけど、こいつ、ほとんど成犬になりかけてるから。

”ほとんど成犬”ってところから、中型犬が成犬になるタイミングと合わせると、約1歳と予想。

感想

めぐる潮の音

昭和63(1988)年度卒業生
コーシロー1歳

飼い犬が捨てられるシーンからはじまり、「おいおい、悲しいのは勘弁だよ・・・」
と思っていたら、高校で拾われ、飼われることに。
名前はコーシロー。

毎話、二人のキャラクターにフォーカスが当てられ物語は進んでいく。
本話は、パン屋の娘、塩見優花と絵が上手な、早瀬光司郎。

すれ違う二人の恋心がたまりませんな。

セナと走った日

平成3(1991)年度卒業生
コーシロー4歳

堀田五月と相羽隆文。
属性のまるっきり違う二人がF1という共通の趣味で盛り上がる。
学校って、性格が合わなくてもとりあえず友達になれちゃったりする。
けど、本来はこうやって趣味が合うもの同士で遊んだほうが楽しいよね。

男同士の友情物語。

明日の行方

平成6(1994)年度卒業生
コーシロー7歳

上田奈津子と祖母

阪神・淡路大震災の年。
震災で祖母が奈津子の家に避難してきて滞在、ギクシャクする家族。
大学合格し奈津子が上京後すぐに祖母が亡くなった。
効率重視っ子だった奈津子は非効率だった医者になることを決意する。

スカーレットの夏

平成9(1997)年度卒業生
コーシロー10歳

学校では冴えないけどバンドをやっている鷲尾政志と親元を離れたくて仕方がない青山詩乃のお話。

最初にコーシローが老齢になってきたのを実感させられる。
優花と光司郎の再登場におおっとなる。

売春は褒められることではないけど、それほど親元を離れたいって気持ちが強いんだろうね。
売春でささくれだった詩乃の心をさりげなく政志が癒す。

人生経験が豊富なのはいったいどちらなのだろう?

永遠にする方法

平成11(1999)年度卒業生
コーシロー12歳

教師になって母校に戻ってきた塩見優花と、絵描きになりたい中原大輔。

優花は祖母が、大輔は祖父が同じ病院に入院しており、死期が近づいていた。
大輔は祖父のために実家の牧場の絵を描く。
一心不乱に絵を描き続けたのは初めてで、人に喜んでもらえたのも始めて。
大輔は画家を目指す決心がついた。

優花の祖母も、大輔の祖父もなくなった。
そして、コーシローも・・・

犬がいた季節

令和元(2019)年

八稜高校100周年。
群像劇の主人公たちが大集合。
著名な画家になった光司郎が寄贈する一枚の絵。
そこにはコーシローや優花が描かれていて・・・

ずっと一緒に居たい。
コーシローの願いがかなったのかな?

物語初期からの恋心も一歩進展。

感想の感想

年代を飛び越えた少年少女の群像劇。
そこに同一の観測者が居る。ってのがいいね。
観測者は何でも良いのだろうけど、人間より先に死んでしまう犬ってチョイスがまたたまらん。
無機物の学校とか、言葉が通じる老齢の管理人とかじゃこの内容にはなれないよね。

あと、物語のとっかかりを作るだけで無理に介入しないのもいい。あくまで傍観者の立ち位置。
ただただ人の流れに身を任すまま、出会いと別れ。それでも優花の事は忘れられなくて・・・

読了後は是非表紙カバーを外してみて!
僕は図書館でかりたので表紙カバーがぴったり張り付けられていた。
他の人の感想を見て、画像を検索・・・
こんなにくい演出が入っているとは!

面白かった。
オススメの一冊です!

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