小説

【金閣寺】青年僧は何を思い放火したのか?心の葛藤をひも解く一冊【三島由紀夫】

小説『金閣寺』表紙

『金閣寺(三島由紀夫 著)』の感想レビュー。

1950年に実際に起きた金閣寺放火事件に対し、
三島由紀夫が容疑者の人物像や犯行動機に対する自身の解釈や見解を提示した作品。

あらすじ

貧しい寺の子として育った少年は、学僧として鹿苑寺(金閣寺を所有する臨済宗相国寺の寺)に預けられる。
「金閣寺ほど美しいものはない」と父から言い聞かされていた少年は想像の中でその美しさを膨らませていたが、実際に初めて見た金閣寺にはそれほど美しさを感じられず落胆する。

戦争が激化し、自分も金閣寺もともに空襲で焼けるかもしれないという運命の共通性を感じ、その命の儚さから金閣寺に秘められた悲劇的な美を見出す。
戦争が終わり大学に進学した少年は、内反足の障害のあるクラスメイトの柏木と親密になり、障害がもたらす内面の屈折と人生観、そして女性に対して抱く特殊な心情を共にする。
そうした大学生活を送るうち次第に欠席が増え、寺の中での彼の評価も下がっていく。
孤独の中に墜ちていく少年が導き出した答えは「金閣寺を燃やす」というものだった。

1分間名作あらすじより

感想

主人公の回顧録という形で本編は進行する。
主人公の溝口が金閣寺を放火するまでの心の葛藤を描いたものなんだけど、

・父親にすごいぞーすごいぞーと言われてた金閣寺を実際に見たら大したことなかった。
・戦争で失われると思って愛したのに燃えなかった。
・色々やろうとしてるのに金閣が邪魔する。
→だから燃やそう!

と、自己中心的な動機にしか見えなかった。

名作小説なので様々な考察がネット上にはある。
読み終わって、感想書く前にそれらに目を通しちゃったので、
自分の感想がなんか情けなくてなぁ

金閣の美しさを永遠にするため
→実態の金閣を燃やすことで永遠の金閣を構築する
→わかる

溝口も肉体からの解放を求めていた。
→金閣と共に肉体から解き放たれようとおもったけど、やーめた
→なんで?

実際の事件で、文豪や評論家から様々な解釈が提出されたけど、
犯人の本当の気持ちって結局わからないんだよな。
誰かの理由が当たっているかもしれないし、
短絡的に放火しただけかもしれない。

でも、こうやって一冊読むと、こんな気持ちだったのかなーなんて思ってしまう。
他の考察本を読んだら違う犯人像になるのかな?

好きな言葉

金閣が焼けたら、
こいつらの世界は変貌し、
生活の金科玉条は覆され、
列車時刻表は混乱し、
こいつらの法律は無効になるだろう

ないない。
どんな事件であろうと、日常を繰り返すうちに、いずれは風化してしまうんだ・・・

俺は君に知らせたかったんだ。
この世界を変貌させるものは認識だと。
いいかね、他のものは何一つ世界を変えないのだ。
認識だけが、世界を不変のまま、そのままの状態で、変貌させるんだ。
認識の目から見れば、世界は永久に不変であり、そうして永久に変貌するんだ。
それが何の役に立つかと君は言うだろう。
だがこの生を耐えるために、人間は認識の武器を持ったのだと云おう。
動物にはそんなものは要らない。動物には生を耐えるという意識なんかないからな。
認識は生の耐えがたさがそのまま人間の武器になったものだが、それで以て耐えがたさは少しも軽減されない。
それだけだ。

生を耐えるのに別の方法があると思わないか

ないね。あとは狂気か死だよ

世界を変貌させるのは決して認識なんかじゃない
世界を変貌させるのは行為なんだ。それだけしかない

ちゃうちゃう。
世の中に不満があるなら自分(認識)を変えるしかない!
自分以外を変えるには相当な労力が必要だし、完璧に反映されるとは限らないからね・・・

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