『ムゲンのi 上(知念実希人 著)』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
精神科医の識名愛依の勤める神経精神研究所附属病院には
特発性嗜眠症候群、通称『イレス』と呼ばれる患者が入院していた。
イレスとは、夜、普通に眠っていただけの者が、朝になってもそのまま目を醒ますことなく延々と昏睡に陥る奇病のこと。
世界でもわずか四百例ほどしか報告されていない疾患で、治療法も確立していない・・・
日本では数年以上発症例がなかった疾患の患者が四人。
それだけでも異常事態なのに、さらに奇妙なのは四人が同じ日にイレスを発症したこと。
そんな奇妙な状況のイレス患者二人の主治医となった愛依だけれど、治療法は一切分からなかった。
そんな状況で疲れてしまった愛依は、祖母に会ってみると、
愛依はユタとしての才能があるという。
ユタとは、患者の精神に潜ることができる能力のこと。
患者のマブイ(魂)を救うことでイレスから目を醒ますことができる能力。
愛依は、ユタとして患者の精神に潜り、イレスになった原因を突き止め、
マブイ(魂)をマブイグミ(救う)することができるのか?
感想
精神科医を主人公にした話。
知念実希人先生の本は一冊読んだことがあって、
【ひとつむぎの手】打算的だけど結果オーライ。人間臭い医者の物語【知念実希人】
これも内科医?の医療小説だった。
医療関係の話を作るのが好きなのかな?
今回は精神科医の話なのかな?
と思いきや、患者の精神に潜り込みだすスピリチュアルな内容。
患者がイレスになった原因、心を閉ざしてしまった原因を患者の精神世界で探すという
ミステリー的な要素も。
この本は、ファンタジー×ミステリー×医療がミックスされた小説。
各章で患者一人をイレスから目覚めさせる内容で、
上巻は二人の患者を治療した。
患者の精神世界はなんでもありの世界なので、後出しし放題。
これが苦手な人は読むのがツライかもしれない。
患者ごとにイレスになったエピソードがあり、
一冊の本で色んな出来事を追体験できるのは面白いとおもった。
患者
片桐飛鳥
パイロットの父に憧れ、自身もパイロットを目指している女性。
しかし、父がアルコール中毒になり、パイロットをクビになってしまった。
そしてそのまま父と母は離婚。
飛鳥はショックを受けるものの、パイロットは継続して目指すことに。
離婚後も父とは月一で面会しており、
たまには・・・と、飛行機をレンタルし、大空に飛び立つ二人。
ところが、父は自殺をほのめかすような言葉を叫びながら地面に急降下した。
飛鳥は、父から操縦桿を奪い、ギリギリのところで絶命は免れるものの、
片目を失明してしまい、パイロットへの道は閉ざされてしまった。
同時に命が助かった父は病院で自殺。
そのショックから飛鳥はずーっと眠り続けている。
佃三郎
『正しいこと』を行うために弁護士になった三郎。
『恋人を薬品で溶かして殺した』事件の容疑者を弁護し無罪を勝ち取るものの、
その容疑者は後日人を殺してしまった。
しかも電話越しに「恋人を殺したのは自分です」という告白も受けて。
自分が無罪を勝ち取ったから次の殺人が起きてしまったのではないか?
『正しいこと』とはいったいなんなのだろう?
三郎は今まで弁護した人たちの顔を思い浮かべて、それが正しい行いだったのか自問自答する。
そして、そのまま眠りから覚めることはなかった・・・