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【人間失格】こんな厭世的な人間がいるものか?【太宰治】

『人間失格』表紙

小説『人間失格(太宰治 著)』の感想レビュー。
図書館がコロナで閉館しているので、kindleで無料で読める純文学シリーズ

あらすじ

「恥の多い生涯を送って来ました」。
そんな身もふたもない告白から男の手記は始まる。
男は自分を偽り、ひとを欺き、取り返しようのない過ちを犯し、「失格」の判定を自らにくだす。
でも、男が不在になると、彼を懐かしんで、ある女性は語るのだ。
「とても素直で、よく気がきいて(中略)神様みたいないい子でした」と。
ひとがひととして、ひとと生きる意味を問う、太宰治、捨て身の問題作。

大庭葉蔵

主人公。
本作は葉蔵の手記を読み返す。という形で進行していく。
面が良いからなのか、
庇護欲をそそられる立ち居振る舞いなのか、
小さい頃から様々な女性が世話を焼いてくれる。
そんなうらやましい状況なのに葉蔵はどこか満たされない様子。
ふ、ふざけやがって

小さい頃(第一手記~第二手記途中)では、
自分の本心を偽り、道化を演じることで家や学校での居場所を確保している。
ところが、クラスの知的障害予備軍の竹一に見破られ・・・
といっても、葉蔵の主観だからね。
”見破られたと思っている”だけ。
どこまで本当かはわからない。
人の顔色を伺うだけの幼少時代で鬱屈していく。

学生時代(第二の手記途中~最後)では、
東京の高校に進学し、父の別荘へ下宿。
が、高校に通学せずに絵の勉強ばかり。
その時、画塾で6歳年上の悪友の堀木と出会い、
「酒」「煙草」「淫売婦」などを教えてもらう。

葉蔵は、人間に対する恐怖を忘れるためにそれらにのめりこんでいく。
そして、知り合った女性を自殺しようとするも葉蔵だけ失敗してしまう。

成人後(第三の手記)では、
さらに鬱屈度が高まる。
父が別荘を売却したため、無一文に。

女に養われている自分、
生きていくための仕事、

自分がやりたいことって?
親友が欲しかったけど、手に入れる手段がわからない。
世間という自分が作り出した幻想におびえる

現実逃避をするために酒に逃げ、
最後はモルヒネ中毒に。

最後は家族に泣きついて隔離病棟へ。
・・・救いどころが何一つない。

感想:なぜか共感できる

恥の多い生涯を送って来ました。
の冒頭の一文は有名。

どんだけ恥が多いんだよ。
と思っていたら、想像以上の屑っぷりでびっくりだよ。

けど葉蔵に関わった人たち、とくに女性陣はそこまで嫌がってない印象なんだよな。
読めば読むほど、葉蔵の生き方は不器用だけど、共感できる部分が多い。
※女性が寄ってくるところ以外

僕の場合は、幼少期に自分を隠して家族に接したり、学校生活を送るシーンは胸が痛かった。
自分も葉蔵ほどでないにしても道化ていたからね。

更には、父親が上京したときにお土産をねだるシーン。
僕も、誕生日プレゼントを上手にお願いできなかった。
ホントは、ゲームソフトが欲しいんだけど、高いから特に欲しくないものを言ってみたり・・・
ホント、共感できる部分が多いんだよ。

大人になっても、”自分は何をやっているんだろう?”って悩みには共感する。
僕は、酒も煙草も麻薬にも関わらずにひたすら自分の内側に籠っていたけど。

結局、現状を打開するには困難に立ち向かわなくちゃいけないんだよね。
逃げていても

そういう感想を持つ作品じゃないのかもしれないけど。
僕はそこまで深読みできません。
なので、他の人の感想をこれから見てきます。

救いのないストーリーで、葉蔵の生き方は逃げてばっかりのクソ野郎なんだけど、
行動のどこかしらに共感してしまう。そんな不思議な話。

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