小説『ぴりから 私の福岡物語』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
福岡県が大好きな6名の著名人が描く、「福岡」をテーマとした小説集。
上京前の不安な心境、仕事や恋愛の失敗、親と子のぶつかりあい・・・。
そんなピリッとからい出来事に直面した主人公たちは、福岡ならではのあの場所、あの味、あの人の心にふれ、新たな希望を見つけていく。
1991年 俺のDESIRE(堀江貴文)
感想
DESIRE・・・欲望
ホリエモン自身を投影していると思われる作品。
行き場のないエネルギーをどこに向けていいのか分からない。
そんな地方出身者の若者を描いている。
何かを成す人は現在の環境に飢えている人なんだろうなぁ
いい意味でも悪い意味でも自分が世界の中心だって錯覚できるパワーがあるのが、若さの特権というやつだ。
たとえ幻想であってもそれでいいのだ。
とこやさんの魔法(田中里奈)
感想
姉が帰郷して地元で美容師をしている妹のところにやってきた。
散髪をしていると姉が話し出す、『たぬきのとこやさん』という絵本の話。
髪を切ることで感情も一緒に切り離してくれる床屋さんの話。
姉は悩んでいた。
姉は髪を短くした。
姉のかなしみも一緒に切り落とすことが出来ただろうか?
あの頃の私が見えてた景色は、大人になった今は見えなくなったけれど、
その代わり、新しい世界が目の前に広がっている。
変わっていないように感じても、時は経ち、人は歩き、見える景色は変わっている。
同じような毎日でも、全く同じ日なんてないのだ。
そう思うと、毎日勝手に訪れる今日という日が、なんだか尊いものに感じられた。
恋木神社(鈴木おさむ)
感想
私の友人と二股をかけていた彼氏にどっちを取るのか?
と詰め寄ったら捨てられた。
私がキープだったのかよ・・・
しかも格下認定していた友達を取るなんて。
傷心のまま地元の恋愛成就で有名な『恋木神社』にお参りにくると、
よぼよぼのおばあちゃんがお参りに着ていた。
(あの女の不幸を願うのよ・・・)
参拝していると、となりにお婆さんがいた。
(この婆さん、まだ恋をしたいのかよ。よし聞いてみよう)
「え?おばあちゃん、旦那さんがいるのに、新しい恋、探しているんですか~?」
「そうよ。またいつか主人に逢って恋ができますようにって」
・・・よっし、私も新しい恋がんばるぞ~☆
・・・は、なんなんだこいつは?
人の不幸を願ったところでね、結局、自分が幸せになることはない。
誰かのために引いたおみくじ(坪田信貴)
感想
私は男運が悪い。
旦那には逃げられ、一人息子には殴られた。
私の男運の悪さは、お父さんとの不仲から始まっている。
事があるごとに反発し、家を飛び出していったのだ。
久しぶりに実家に帰ってきて、アルバムをめくっていると、
大学入試のときのお父さんのメッセージがでてきた。
・・・結局、自分の不幸を他人のせいにしてきた自分のせいだったのだ。
主人公が自分を変えようとする話。
私は自分の人生の嫌な部分を、父や夫や息子の姓にしていただけなのかもしれない。
今になると当たり前のことだけれど、どんな環境であっても、決断をして行動をするのは自分。
そして他人は変えられないけれど、自分は自分の意志で変えることができる。
『ニュースワイド』の時間です。(小林麻耶)
感想
上京して八年。
アナウンサーとして『ニュースワイド』のメインキャスターに抜擢されてから約半年。
結果がついてくることはなかった。
地元に帰り、先輩と飲んでいると、
「他人を気にしすぎて自分を出せていない」
と助言をもらった。
そういえば、自分をちゃんと見せてなかったな・・・
最後の出演後、電話があった。
「まぁまぁね!」
先輩からの電話だった。
他人の評価を気にしすぎると、自分を失っていく。
自分の言葉を持ち、自分の人生を生きていこう。
伝え方が1割の男(佐々木圭一)
感想
小さな印刷業者をめぐるコミュニケーションのやりとり。
要所要所でコミュニケーションレクチャーが入る。
小説の要素もありつつ、伝え方も学べる話。
思ったまま話したって、逆に伝わらないんだ。