小説『何者(朝井リョウ 著)』の感想レビュー。
大学生の就職活動の時期。
自分にはなにか素晴らしい才能があるんじゃないか?
最後の拠り所を打ち砕かれた先にあるのは
等身大の自分を受け入れる心?
それとも他者を妬む気持ち?
あらすじ
「あんた、本当は私のこと笑ってるんでしょ」
就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺……自分を生き抜くために必要なことは、何なのか。
この世界を組み変える力は、どこから生まれ来るのか。
影を宿しながら光に向いて進む、就活大学生の自意識をリアルにあぶりだす、書下ろし長編小説。
感想
平均的な能力しかなく、たいした努力もしていないのに、『何者かになりたい!』
なんて願いだけは人一倍。
その願いも、『何者になる』とか『ビッグなる』とか『面白いことをしたい』とか、ふわっとしていることばかり。
・・・そう、僕のことです。
作中でもそんな連中がわんさか出てくる。
ただ、就活を通して、経験から、友人の指摘などから自分は『何者』でもないことに気づき、等身大の自分を見つめて生活を送ることができるようになる。
作中の登場人物の誰に羞恥心のツボを押されるかで自分がどんな人間なのか客観的に観測できるのが面白い。
僕は、隆良かな。
僕が学生時代にSNSが発達していたら自分の事を棚に上げて、サブアカで他人の愚痴や人の欠点ばっかり指摘するクソ野郎になっていたかもしれないんだよなぁ・・・
作中の言葉
「なんかもう、今までみたいに、自然に名前が変わることってないんdなって思っちゃってさー。
わかる?
終業式が終わったら次は二学期、卒業式が終われば中学生、部活を引退したら受験生、みたいなのがさ、今まではあったわけじゃん、ずっと!」
「俺たちって今までそうやって、自動的に区切られてきたわけじゃん?
小学校入って、六年経てば中学生って名前がかわって、三年経ったら高校生って名前になって。
でもこれからは、自分でそれをしていくしかないんだなってことなのよ」
「たとえば、結婚とか、子どもができたとか、転職とか?
何でもいいんだえど、これからは、もう自分で動かないと自分の名前ってかわんないのかとか、いきなり思っちゃったんだよな。
これから何もしなかったら、今の俺のままじゃん、これから先ずーっと」
エスカレーター式に肩書が変わる時期って確かにあったわ。
そのお陰で自分は前進しているって思っていたけど、でかくなるのは身体だけだったな。
そして、ある程度までいったら自分で肩書を変えていかなくちゃならない。
なかなか大変だよ。凡人には。
「ほんとは、誰のことも応援していないんだよ。
誰がうまくいってもつまらないんでしょ。
みんな、自分より不幸であってほしいって思ってる。
そのうえ自分は観察者でありたいって思ってる」
自分の状況は置いておいて、周りのことをばっかり気にしてる。
廻りの事を斜に構えて見ている内に自分だけおいていかれちゃうんだ。