『坂の上の雲(司馬遼太郎 著)』の感想レビュー。
日本の興廃を賭けて戦った日露戦争を描いた話。
戦争を描くに当たって、主人公役になるのが、
秋山好古、真之の兄弟。と、作者が好きな正岡子規。
兄、好古(よしふる)は、陸軍視点。
日本陸軍における騎兵部隊の創設者として、
騎兵隊を率い、コサック騎兵団と戦った。
弟、真之(さねゆき)は、海軍視点。
海軍における海戦戦術の創案者。
作戦担当参謀として、バルチック艦隊と戦った。
正岡子規は、秋山真之の同郷同窓の友として。
なお、戦争が始まる前に病気で死ぬ模様。
※明治の文学史に大きな足跡を残した俳人
感想
俺の中で日本軍って、精神論が横行する脳筋組織だと思ってた。
けど、日露戦争当時は論理的に作戦を立ててたことに驚いた。
ロシアにスパイ送り込んで、革命扇動までしちゃうんだぜ?
ロシア「極東の日本?あんな猿に負けるわけねーだろ」
日本「ロシアの戦力は・・・内政は・・・戦略は・・・」
こんなナメプだからロシアは負けるんだけど、
戦力比こんなんだからね。
日本 | ロシア | |
面積 | 38万km2 | 200万km2 |
人口 | 4600万人 | 1億人以上 |
陸軍 | 100万人 | 200万人 |
海軍 | 23万トン | 51万トン |
ナメプする気持ちも分からんでもない。
こんな状況で日本が勝ってしまったもんだから、
奇跡だと神風だので、
第二次世界大戦の精神論に繋がってしまう・・・と。
本文より
日本はそのすぐれた計画性と敵軍の事情のためきわどい勝利を拾い続けたのが日露戦争。
戦後の日本は、この冷厳な対立関係を国民に教えようとせず、国民もそれをしろうとはしなかった。
日本軍の神秘的な強さを信仰することになり、その部分において民族的に痴呆化した。
日露戦争を境として日本人の国民的理性が大きく後退して狂騒の昭和期に入る。
やがて、国家と国民が狂いだして太平洋戦争をやってのけて敗北するのは、
日露戦争後、わずか四十年のことである。
敗戦が国民に理性を与え、勝利が国民を凶器にするとすれば、
長い民族の歴史からみれば、戦争の勝敗などというものはまこと不可思議なものである。
それにしても、戦術、戦略って見てると面白いよなー
あと、人間心理。
この部分だけでも読むべきだわ。
あと、日本の近代史を学ぶって意味でも一読の価値あり。
ハードカバーで6巻、文庫で8巻。
気合入れないとだけど。
おまけ:なんかメモしてた文章
ふつう人間の一生で、他人に繰り返し語るに値する体験というのは、一つあればいいほうであろう。
筆者がそれをきいたとき、余生はそれを語るために酒を飲んで暮らしたという垣花善の一生は
かれの青春での一体験だけでするどく結晶しきっているように思えて、はなはだ愉快におぼえた。