小説

【流浪の月】もっと言いたいことを言えよ・・・【凪良ゆう】

『流浪の月』表紙

『流浪の月(凪良ゆう 著)』の感想レビュー。

もくじ

あらすじ

せっかくの善意をわたしは捨てていく。
そんなものでは、わたしはかけらも救われない。
愛ではない。けれどそばにいたい。
新しい人間関係への旅立ちを描き、
実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。
わたしを心配するからこそ、誰もがわたしの話に耳を傾けないだろう。
それでも文、わたしはあなたのそばにいたい---。
再会すべきではなかったかもしれない男女がもう一度出会ったとき、運命は周囲の人間を巻き込みながら疾走を始める。
新しい人間関係への旅立ちを描き、実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。

主人公:家内更紗

父が他界し、自由人の母は男を作って蒸発。
叔父夫婦の家に預けられたらそこの息子に性的ないたずらをされる。

なかなか過激な人生(8年間)を過ごしてきた女性だけど、
同情できるのはここまで。

以後の展開は、優柔不断すぎてひたすらイライラさせられる。

家出して匿ってもらったロリコンが捕まった時に、
ロリコンは悪くないこと、
家出した理由をちゃんと警察に伝えれば問題なかった。

叔父の家に戻って息子のいたずらが再開して息子の頭をカチ割った後、
反撃が始まるのかと思いきや、隠ぺいをする叔父叔母に何も言えずに施設送り。

大人になってからも、結婚を申し込んできた彼氏に対して言葉を濁しながら、
内心では不満を吐露する。

「思ってることはちゃんと伝えろや!」

それで「周りは私のことを理解してくれない!」
ロリコンに誘拐された経歴から周りとの壁が・・・
と過去を甘えの理由にしているとしか思えないんだよなぁ・・・

更紗が思っていることをちゃんと伝えていれば状況はもっと良くなっていたと思う。

ロリコン?佐伯文

完璧主義の母親に育てられ、
とある事情で自身が周りと違うことに悩み生きてきた。

19才の時に、2ヶ月間8才の更紗を監禁した罪で捕まる。
正確には更紗が自分の意志で着いていっただけなんだけど。
終盤、少女を家に連れて行った理由には理解できる点があるが世間からみたらロリコン誘拐野郎。

ロリコン誘拐という犯罪歴がついてしまったので名前を変えて生活するものの、
大人になった更紗に見つかり、再度交流することに。

ノーと言えないイエスマン。

婚約者:亮

逃げ場のない女性を彼女にして暴行を加えるDV野郎
とは、亮の妹談。

その実、浮気して男と出て行った母親にトラウマを抱えていて、
浮気(と自分が思ったら)と判断したらプッツンして反射的に相手を殴ってしまう
性格に難がある人。

敵だと認識したらとことんやるけど、
相手が戻ってくる気配をみせると途端懐柔しようとしてくる。

パート仲間:安西さん

シンママ。
娘を更紗に預け、既婚者の男性と一週間以上もデートに出かける人。
細かいことは気にしない性格とは言うけれど・・・

まとめ:分からないを許容せよ

主要人物がやべぇやつらしかいねぇ・・・

イライラしっぱなしだったけど、最後まで読むと、
犯罪者たちの苦悩が垣間見える。
今は、ネットで名前を検索すると当時の犯罪状況が一発で検索できてしまう。
永遠に風化しないネットタトゥー。

世間は、自分が納得できる情報に飛びつく。
「〇〇だからかわいそうだね」
と同情を示す。

本人たちは気にしないで欲しいのに・・・
そういう意味では、更紗は細かいことを気にしない安西さんとの親和性が高かったのだろうけど・・・
安西さんもヤベーヤツだしなぁ

作中の言葉

わたしの常識は叔母さんの家の非常識である。

様々な経験を通すことで、
自分の中の常識を作り上げていかないとね。

今の時代、なにも珍しいことじゃない。
人が殺される場面ですら、検索すれば簡単に見ることができる。
未成年だからといって、なにも守られたりはしないのだ。
善良な人たちの好奇心を満たすために、どんな悲劇も骨までしゃぶりつくされる。

犯罪にかかわらず、やらかしたことがネットに上げられると、
一生ついて回ることになってしまう。
ネットタトゥーとはよく言ったもの。

手放すときがくるなんて考えず、
好きと思ったものを集められる幸せ。
養護施設に入ったとき荷物はさらに減り、
恋人と暮らした部屋を出るときも減り、
それらの喪失を経て、今はもう品物は眺めるだけになった。
集めてもこぼれ落ちていく。
だかれ手に入れない。
持たずにいれば捨てずにすむ。その方が楽だ。

持っているとメンテナンスも手間だしね。
僕は更紗と違う理由で所有欲が少ないんだ。

「亮くんはいつもそういう人を選ぶんだよ」
「そういう人って?」
「いざってとき、逃げる場所がない人」

なのでDVやりたい放題なのだ。
逃げ場がないからある程度なら不満があっても逃げないだろう。
そう思っている人って思っていたよりいそうだ。

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