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【みをつくし料理帖3】【想い雲】感想レビュー【高田郁】

『想い雲』文庫表紙

みをつくし料理帖シリーズ『想い雲(高田郁 著)』の感想レビュー。

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もくじ

あらすじ

土用の入りが近づき、澪は暑気払いに出す料理の献立に頭を悩ませていた。
そんなある日、戯作者・清右衛門が版元の坂村堂を連れ立って「つる家」を訪れる。
澪の料理に感心した食道楽の坂村堂は、自らが雇い入れている上方料理人に是非この味を覚えさせたいと請う。
翌日、さっそく現れた坂村堂の料理人はなんと、行方知れずとなっている、天満一兆庵の若旦那・佐兵衛と共に働いていた富三だったのだ。
澪と芳は佐兵衛の行方を富三に聞くが、彼の口から語られたのは耳を疑うような話だった―。
書き下ろしで贈る、大好評「みをつくし料理帖」シリーズ、待望の第三弾。

感想

豊年星~「う」尽くし~

水無月(6月)の出来事

つる家の常連になった坂村堂が雇っている料理人が江戸天満一兆庵の料理人富三だった。

偶然の再開と、人手不足のためつる家にヘルプに来てもらうが、

料理人の魂である包丁が研がれていないことから澪は富三に違和感を覚えた。
芳に近づいた富三は芳に息子を探してやると言い、大切にしていた簪を換金し、吉原へ遊びに行く

後日、富三と問い詰めると、吉原通いをしていたのは自分で、息子に嬢殺しを擦り付けたと証言した。

悪い包丁を使うと料理の味が変わる!

・・・どんだけ悪い包丁なんだ?

戻ってきた髪飾り、一話も持たずに芳の手をはなれてしまうのだった。

作中では一月も経ってない?

今回は騙されて持っていかれたし、種市の気持ちを考えると・・・
まぁでも、息子、生きていて良かったね・・・

想い雲~ふっくら鱧の葛叩き~

立秋を迎えた頃の話。

大阪ではこの時期のハモは絶品なんだけど、

江戸では出回っていない。

そもそも獲れないのかもしれないね。

そんな折、吉原の翁屋が大阪からハモを仕入れたらしい。

ハモは、ウナギと同じように粘膜や血に毒がある。

さらにウナギより凶暴で噛みついてくるので始末が悪い。

骨が多く、調理も難しい魚。

翁屋ではハモを扱える職人が居らず、澪に声がかかる。

翁屋といえば、野江ちゃんが居る場所・・・

もしかして、一目見る機会があるかも・・・?

江戸人が知らない京料理→ウマー

はもはや様式美。

ハモはあさひ太夫の為に取り寄せたのかな?

一瞬だけど、野江ちゃんに会えた澪。よかったね。

花一輪~ふわり菊花雪~

顔の良い女性が料理をつくり提供する。

そんなお店や、つる家の屋号を真似た店が乱立するも、

味はイマイチということで安心していたつる家一行。

そこに、旧つる家跡地につる家を名乗る店が登場!

料理番付の住所は旧つる家で紹介されている。

そこにお店は出されては・・・と澪は文句を言いに行くと、

底に居たのは登龍桜を追い出された末松だった。

末松は澪への復讐に燃えており、確信犯で旧つる家に店を構えたのであった。

そんな折、末松のつる家で食中毒事件が発生!

これでこの争いも一安心と思いきや、

「料理番付にのっているつる家が食中毒を起こすわけがない。

てことは、こっち(新)つる家が食中毒を起こしたに違いない!」

という風評被害まで発生。

一気に客足が遠のいた新つる家に澪たちはどうするのか・・・?

良いものは真似されるそれは世の常だね。

真似されても問題ないクオリティがつる家の強み。

それでも、意見に流された群集心理を変えることは出来ず・・・

困難にぶつかっていき、少しずつつる家がブラッシュアップされていく姿がいいね。

初雁~こんがり焼き柿~

神無月(10月)のころの話。
父親の借金返済のために登龍桜で奉公しているふきの弟健坊は、登龍楼で叱られつる家に脱走してきた。
一日だけは、とふきと一緒に過ごし、翌日登龍楼へ戻っていったが、
後日、登龍楼の職人たちがやってきて健坊が戻ってきていないことを伝えてきた。
時代的に子供が行方不明になると戻ってこないことがほとんど。
焦ったつる家の面々は連日健坊の捜索を続けるが見つけることができなかった・・・
みんな憔悴する中、澪は店を「再開しなさい」とりうに諭される。

健坊は無事に戻ってきた。
その後、借金を肩代わりして健坊を引き取ろうとする種市とベテラン女性陣のやり取りが好き。

種市「昨日からずっと考えていたことだが、健坊をうちへ引き取りてぇと思う。どうだろうか?」

りう「情に厚いのは結構なことですがねぇ、身の丈を超えた情をかけるのは、健坊にとっても不幸、つる家にとってもまた不幸です」

種市「だがよぅ、万が一にも俺に今すぐ払える額だったら、思うようにさせてもらうぜ」

芳「ここに居る四人が四人とも、健坊とふきちゃんの幸せを一番に考えていることに大差おまへんやろ。
その上で、私もりうさん同様、旦那さんのお話には反対させて頂きとうおます」

種市「わけを・・・わけを聞かせてくんな」

芳「奉公始めは一番大事な時だす。
六つ七つの子ぉが奉公先かが辛いから逃げる、いうんはようあることだすのや。
けれど、その尻拭いを他の者がしたのでは、これから先も嫌なことから逃げ出す一生になってしまいますやろ」
辛抱と精進。
ひとの生涯の宝となるそれらを身につけさせるのも大人の務めと思う、と芳は言葉を紡いだ。

澪「私も健坊と似た境遇だからわかります。
甘えさせてもらえるなら際限なく甘え、優しくされるのが当然になる---
そうなってしまっては駄目なんです」

相手を思った愛のある問答。
こういうのに弱いよ・・・ウウウッ

澪も、料理をするうえで一皮むけたし、今後がまた楽しみですね。

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