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古流剣術の師範が描く剣劇立ち合い【装甲悪鬼村正】

装甲悪鬼村正

突然始まったオススメゲーム紹介。

鎧(ツルギ)というロボットというよりパワードスーツを身にまとって刀で切り合うスラッシュダークADV。
古流剣術師範がシナリオライターをやっていて、体験版を遊んだときにツルギ同士の立ち合いが凄く面白いの。
刀を構えてにらみ合っているだけなのにすんごい緊張感があるの!

という訳で、装甲悪鬼村正、最初の一戦の一部を紹介。

六波羅幕府の武者・鷺沼 vs 元六波羅の落人・垣見

ゲーム開始直後、プロローグでのモブ同士の一戦。

村人と軍兵がそれぞれ、息を詰める。

大鎧の武人---鷺沼は、切先を前方へ向けて構えた。
一撃必殺、敵を突き殺す正眼の剣形である。

大鎧の武人---垣見は、剣を肩へ担ぐように構えた。
一刀両断、敵を切り伏せる雷刀の剣形である。

そうして相対し、両者は凝固した。

時が徒に流れ過ぎゆく。
村人たちは、手に汗を握るばかりであった。
軍部隊の大半も、前触れ無しの決闘を唖然と見守るだけであった。
しかしそのうち一握りの者は、静止の意味を正しく洞察し、勝負の行方を思って固唾を呑んだ。

両者いずれも、意図するところは明らかである。

中断に構える鷺沼は、刺突にて相手の喉を狙う。
この構より斬撃せんとすれば、剣を振りかぶる余計の動作が入用となり、
敵に遅れを取るため、まずつく以外の選択は無いと言ってよい。
そして、厚い鎧で身を守る者の泣き所は、どうにも覆いようのない関節部。
その最も致命的たるが喉回りの隙。
これを突くに如かず。

対する垣見は、担ぎ上段より相手の首元を狙う。
そこもまた鎧の守り切れぬ隙であり、
垣見の横からやや太刀を寝かせ気味に斬り込めば、
兜と肩甲の挟間を潜ってその部分へ刃先を打ち入れる事が叶う。
他の箇所を狙おうとすれば、やはり予備動作が必要となり、
敵に対しての遅れとなるであろう。

斯様に両者とも、攻め手は決している。
しかし両者とも、不動にて時を送る。
それは両者とも、攻め手に併せて受け手を用意しており、
そしてどちらも、対敵にその備えがあることを疑っていなかったからである。

六波羅の将、鷺沼が突き出せば---
垣見は僅かに身を捻るのみでその鋭鋒を躱し、
鷺沼が姿勢を立て直す前に切り下ろして、勝負を決するであろう。

落人、鋭鋒が先に切掛かれば---
鷺沼は一歩引いて剣撃を外し、すぐさま跳ね戻って宿敵を刺し殺すであろう。

攻め手が必殺なら受けてもまた必殺。
互いに対敵の手の内を読み切り、故に動けず、戦況は膠着する。
かかる情勢、勝負は即ち、体力気力の削り合い。
垣見と鷺沼、対峙する二者は今、
敵を一足一刀にて仕留め得る体勢と敵の微細な変化をも見逃さぬ集中力、
その二つを維持しながら向き合っている。
なればこその膠着。

これが両者の心身に多大な負担を掛ける事は論ずるまでもない。
渓谷を綱渡りするにも等しい過酷さである。
やがては一方が力尽き、構を崩す。
その時もう一方が余禄を残していたならば、即座にその崩れを狙って攻め掛かり、勝利者となるであろう。

軍将、鷺沼。
落人、垣見。
いずれがいずれの役を負うか。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・っ・・・」

齢の格差が現れようとしていた。
鷺沼が壮年の頃であるのに対して、
・・・はそれよりやや年高、老境の迫りを肌に感じる年齢である。
体力差は大きくはないが、確かに存在する。
鷺沼が優勢であった。
膠着は若さを残す者に利する。

垣見はやがて崩れ、敵刃に首を委ねるであろう。
その運命を望まぬなら、乾坤一擲、自ら攻めだして鷺沼を討ち取るよりほかにない。
無論の事、それとて分の良からぬ賭けである。
麾下の兵を顧みず単騎で決闘に臨んだ猛者は、微塵の油断もなく、
昔の上官であり今の叛徒である対手を見据えているのだ。
破れかぶれの猪突など容易く防ぎ、完璧な返し技で勝ってのけるだろう。
落人垣見の進退は窮まった。

進めば、死。
進まずとも、死。

傍目には、湖面のように移ろわぬ情景。
されど水面の下、勝利と敗北、栄誉と破滅の天秤は傾きを定めつつある。
時がまた流れ、戦いは静粛なまま、閉幕へ向かう。
相手よりほんの少し老いに近い者が、徐々に呼吸を乱す。
次第次第に、膝頭の震えが大きくなる。
明らかになり始めた状況の変化を見て、一部の軍兵が笑いの形に唇を歪めた。
幸福にも、村尾田たちは何も気づかなかった。
---今は、まだ。
それでも、不穏な気配は感じ取ったのか、
誰かが励ますように、お武家さん、と声を投じた。
あるいはその一声が背を押したのかもしれない。

落人垣見は、勝負に出た。
強い息吹を吐き出しつつ、己への体を前方へ撃ち出す。
されこそ、と。
一瞬の遅れもなく、六波羅の鷺沼は反応して動いた。

・・・勝負は、この時点で決着。
鷺沼が家計の攻勢を見落とす、万に一つの可能性も実らなかった以上、
もはや順当な結果が顕れるのみだ。
選定の斬撃は躱され、ただ虚空に弧を描いて終わり、
後手の刺突が標的を抉るだろう。
そのようになる。
ここまで状況が定まっては、そうなる以外に無い。
前提が違っていれば、話はまた別だが。
例えば---
斬り掛ったと見えた垣見の挙動が、欺瞞であったとか。

前方へ振り下ろされる筈だった太刀は、軌道を転じ使い手の左脇へ、新たに構えられる。
斬り上げの剣形。
斬り下ろしの幻で敵を退かせ、
その隙を追い、本命の一刀を繰り出す。
---呼吸外しの術。

斬り上げにて狙うは腋下、あるいは股間
---鎧甲の守りが薄い箇所。
対手が失敗を悟って跳ね戻るよりも先に、その死命を制し得るであろう。
意表を突かれた者と、想定通りの者。
どちらが早く動けるかは自明の理である。
・・・この詐術を最初から仕掛けていえば、手練れの武人たる鷺沼は難なく見破ったに違いない。
追い詰められた老兵垣見の、真に追い詰められた末からであればこその釣り込み技。
瞬間の閃きであった。
滅びの結末は避けられなくとも、この一戦にだけは負けられぬとの念が閃きを生んだ。
刹那の間に状況は激変を遂げる。

今度こそ本当に、垣見は前方へ攻め出る。
斬り上げの太刀を繰り出す。
勝敗が決する。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・鷺沼」
「ふ、ふふ、ふふふ」
「・・・」
「すでに先の無い身だ、相打ちで良かろうに。無用の欲をかきおって」
「ぐふっ」

落人垣見の口から、赤い濁流が溢れ返る。
村人の間で、絶叫が上がった。

垣見の太刀が、斬り上げの技を示すことなく・・・
鷺沼の一刀は、垣見の喉を見事に刺し貫いている。

「俺は相討ちでも良いと、腹を据えていたぞ。
だから貴様が何をしようと構わなかった。
貴様が動いた時、喉笛を射抜いてやる事だけを考えていた」

「・・・・・・」

「貴様はちがったな・・・。
冥途の土産に勝ちを欲しがって、小細工を弄したために惨めな最後を迎えることになったわ」

「ぐ、むぅ・・・」
「死ぬがいい」

まとめ

どうよ?
これは、剣術を知っている人の戦いだで。
どんな作品かわからない中、
モブ同士なのにこの緊張感・・・
も、燃えるッ!!

個人的に好きな戦いは、三章逆襲騎にて、アベンジが新記録を出すところ。
冒頭で六波羅一味も登場して、物語に厚みが出てくる章なのだ。

面白いから是非遊んでみて!
※日常パートが冗長な感じもするんだけどね・・・

DVD版もダウンロード版もあるでよ!

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