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【あと少し、もう少し】中学にも駅伝があった!?3km×6人、18kmの青春小説【瀬尾まいこ】

小説『あと少し、もう少し』文庫表紙

『あと少し、もう少し(瀬尾まいこ 著)』の感想レビュー。

中学駅伝を通して男子生徒6人の心情を語った青春小説。
中学生にも駅伝ってあったんだ!?

全国中学駅伝大会

1993年から毎年開催
男子 6区間18.0Km(3.0km×6)
女子 5区間12.0Km(3.0 km→2.0 km→2.0 km→2.0 km→3.0 km)

参考:wikipedia

ハードカバーと文庫のデザインがかなり違う作品

ハードカバー表紙
小説『あと少し、もう少し』ハードカバー表紙

文庫表紙
小説『あと少し、もう少し』文庫表紙

あらすじ

陸上部の鬼顧問が異動で別の学校に行ってしまった。
代わりに顧問になったのは頼りない女美術教師の上原。

駅伝のことは何も知らない上原先生に、六人揃わない駅伝メンバー。
陸上部以外からなんとかメンバーを集めたが、
気弱、
喫煙不良、
頼まれたら断れない人、
唯我独尊、協調性なし吹奏楽部、
陸上部二年、
陸上部部長
の六人。

寄せ集めの六人は県大会出場を目指して、たすきを繋いでいく・・・

感想

各章が1区、2区~6区と、実際に走る区間仕立てで、章の一人称も各区間の走者という構成。

1区:設楽

気弱な性格。陸上部員。
迷惑をかけないように努力して、
駅伝メンバー上位の成績を収めるようになる。

わかるわー。
他人に迷惑をかけないように生きる。わかるわー。
今でこそ他人の視線を気にしないようになったけど、
学生時代は他人の顔色をうかがう人生だったわ。

迷惑をかけたくないという制約を努力に昇華しているのがえらい。
僕なんか思うだけだったからね。

2区:太田

小学生時代はなんでもソツなくこなせていたタイプ。
努力しないから落ちぶれる
→それを他人に見せたくないから何事も本気を出さない
→また差がつく
→そのままドロップアウト
の悪循環。

わかるわー。
他人に良く見られたいけど、
対価(努力)を支払わない。わかるわー。

自分が好きなことって案外解ってたりするんだよね。

3区:ジロー

Noと言えないジロー。

わかるわー。
親のいう事が絶対。わかるわー。

僕もね、『自分がやられて嫌なことは他人にやるな』
という教訓に雁字搦めにされて
一時期、コミュニケーション不全だったよ。
まさか、世の中には叩かれるのが好きなヤツも居るなんてなぁ
多様性だよなぁ

ジローは親の指示を受け入れて、
自分流に落とし込んでいるのがえらい。

4区:渡部

渡部の理想としている姿

何度も迷って失敗して、
試行錯誤を繰り返して、俺は今の俺をつかんだ。
騒がずはしゃがず冷静で、
音楽や美術が好きで知的であか抜けている。
ハングリー精神はゼロで、無駄な努力はせず、
いつも余裕が溢れている。

これが正解なのかもわからない。
だけど、こういう俺でいれば大丈夫なのだ。

がんばることが格好悪い。
思春期にありがちなそんなぬるい思考じゃない。
人知れず苦労しているところを知られるなんて、俺にとっては死活問題になる。
そういったがつがつしたものとは無縁でいないといけないのだ。

わかるわー。
何でもさらっとこなせるキャラクター願望。わかるわー

太田と渡部は対比されるキャラクターだよね。
目指していた場所は同じ(何でも楽にこなせるキャラクター)なんだけど、
太田は努力をしなかった。
渡部は努力してポジションを得た。

ただ、二人とも現状に同じような不満をもっている。
そこが面白い。

5区:俊介

駅伝メンバー唯一の二年生。陸上部員。

俊介の感情って中学生から目覚めたりするのかな?
後天的な要素が多いと思っていたんだけれど・・・

俊介だけ共感できなかった。

6区:桝井

陸上部部長にして、駅伝のリーダー。
駅伝に並々ならぬ闘志を燃やし、チームを集めるも、
自身が不調になってしまう。

周りから求められたキャラクターを演じ、
それに雁字搦めになっている。

わかるわー。
キャラクター演じちゃうの分かるわー。

同学年のすぐ感情爆発させるヤツを羨ましく感じたことあったわー。

監督:上原先生

陸上部顧問としてみるとポンコツだけど、
悪い先生じゃないんだよな。
というか、教師適正高くない?

相手の状態を見て言葉を選べる人。って印象。
作中ではあまりフォーカスされていないけど、
彼女には彼女の駅伝に対する悩み、あったんだろうな。

案外、居酒屋で友達や教師仲間に愚痴ってたりして。
そんな姿が容易に浮かぶキャラクター。

感想の感想

練習中の同じ出来事でも視点によってとらえ方が違う。

思春期特有の誰もが持つ悩みを、
中学生&駅伝で落とし込んだところが良い。

六人のメンバーの悩み、何かしらは
当時の自分にも当てはまるんじゃないかな。
分かるわー、分かるわーって読み進めてた。

僕の駅伝のイメージって大学生なんだけど、
これが大学生設定だとしたら、
お前の悩み、大学生(18~22歳)にしては幼稚じゃね?
になりかねない。というかなる。

僕が一番近いのは太田。
不良や、喫煙とかじゃなくて、
『良く見られたいけど努力はしない』
ってやつ。
授業態度はまじめだけど、テスト勉強しないから点数は悪い。
太田ほど、不良になり切れない。

いわゆるマジメ系クズ。
どうしようもないわホントに。

太田は駅伝を通して自分のやりたいことを見つけ、
高校に進んでも陸上を続けるんだろうなぁ

『目的があれば努力できる』

僕はどうだろうな・・・

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作中の好きな言葉

「昔、先生が言ってたんだ。
中学校っていくら失敗してもいい場所なんだって。
人間関係でも勉強でもなんだって好きなだけ失敗したらいいって。
こんなにやり直しがききやすい場所は滅多にないから。
まあ、中学に限らず、人生失敗が大事って、よく言うじゃん。
だけどさ、取り返しのつかないこともごくたまにはあるでしょ?
失敗しちゃだめな時って」
上原が間をおかずに話すから、俺はうなずくことしかできなかった。
「それが今だよ」

高校に大学にその先の世界。
進んで行けばいくほど、俺は俺の力に合った場所に収まってしまうだろう。
力もないのに機会が与えられるのも、
目に見える力以外のものに託してもらえるのも、今だけだ。

「桝井君さ、自分の深さ三センチのところで勝負してるんだよ。
だから、さわやかに見える。
それだけしか開放しないで、生きていけるわけないのにね」

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