小説『恥知らずのパープルヘイズ(上遠野浩平 著)』の感想レビュー。
ジョジョの奇妙な冒険第5部の登場人物、パンナコッタ・フーゴのその後を描いた物語。
ジョジョ5部のアニメも無事終わったことだしね。
本編と独立したスピンオフ『the book』とは違い、
本編との絡みを残しつつのスピンオフらしいので楽しみです。
※the bookも面白いよ
もくじ
あらすじ
西暦2001年、パッショーネの抗争から半年後にパンナコッタ・フーゴは組織の副長になったグイード・ミスタにジュゼッペ・メアッツァまで呼び出される。
ミスタはかつてブチャラティチームを裏切ったフーゴに対して改めて組織への忠誠を証明させるために、ジョルノが進めている裏社会の清浄化の一環としてディアボロの残党・負の遺産である「麻薬チーム」を始末するように命じた。
フーゴは、派遣された仲間、
ボス親衛隊のシーラE
情報チームのカンノーロ・ムーロロ
と共に、麻薬チームの足跡を追う。
本編冒頭より
これは、一歩を踏み出すことができない者たちの物語である。
将来になんの展望もなく、思い出に安らぎもない。
過去にも未来にも行けず、現在に宙ぶらりんにされている者たちが足掻いているーーー
そのことについての奇憚である。
彼らが足掻くのは、一歩めを何らかの形で踏み出したいと思うからなのか、
前進するのか、後退するのか、それは誰にもわからない。
本人たちにはもちろん、彼らをそのような運命に落とした世界の方も、何もわかってはいない。
はっきりしていることはただ一つ、
彼らの立っている足場の方はどんどん崩壊していっており、
もはや同じ場所にはとどまれないということだけだ。
明日はなく、故郷もない。
その中で人はどこに希望を見出すのか、あるいは何を絶望して怒りをぶつけるのか---
そのことを一人の少年に託して、研究していくことにしよう。
少年の名はパンナコッタ・フーゴ。
人から裏切り者と蔑まれ、恥知らずと罵られる彼がいかなる運命に辿り着くことになるのか、それは彼の選択次第である。
感想
ジョジョ5部のアニメを見終わって感想を読み漁っていた時、
「このまま『恥知らずのパープルヘイズ』もアニメ化して欲しい」
というのを度々見かけたので読んでみた。
ジョジョ5部本編との整合性を保ちつつのストーリー展開と、
独自解釈による物語の補完やファンサービスがベネ(良し)!
ディアボロ・パッショーネを潤していた麻薬が実は、スタンド能力で生み出されていたもので、
ジョルノ・パッショーネはそれを撲滅するために潜伏した麻薬チームに対して暗殺者(ヒットマン)を派遣する。
きっと、何チームか派遣されていて、
麻薬チームに肉薄していたのが、ズッケェロとサーレーってのも面白い。
※お前らが再登場すんのかよ!?的な意味で。
麻薬を作るスタンド使いは、四部のトニオ・トラサルディの弟という非公式設定。
”自分がスタンド使いになったなら兄もスタンド使いになっているかもしれない。
能力は自分に近いものだろうけど、兄の場合はその能力で他人を幸せにしているに違いない---”
なんて独白が悲しい。
フーゴは、組織への信頼度回復の名目で麻薬チームの暗殺命令が下される。
麻薬チームを追う過程で、自分の気持ちを整理していくのが本筋。
人生経験豊富な、敵の爺さんの言葉が重いんだ。
フーゴは未だにサン・ジョルジョ・マッジョーレ島での出来事を忘れられないでいた。
けど、乗船しなかったことに対して罪悪感はない。
じゃあ、なんで自分は悩んでいるのか?
その悩みにどのような決着を見せるのか?
それが本著の見どころ。
自分のことは自分で選択しなくちゃダメだってことだね。
にしても、ジョルノのカリスマ性に『凄み』が出ている。
父親(DIO)の系譜、すごいです。
台詞回しや、ちょっとした設定にジョジョ愛を感じる作品。
ジョジョ五部を読んだ人に対してオススメ。
ジョジョ初見の人だと、置いてけぼり感を感じるかも。
※僕が読んだのはハードカバー。
文庫版は短編が一話追加されているそうですよ!
作中の言葉
他愛のない会話、どうでもいい食事。
それが何故か、ひどく貴重で尊いものに感じられる。
日常をきちんと積み重ねてこられた者だけが、こういう和みを得ることができるのだろう。
テキトーに生きている僕には刺さる言葉。
まわりが結婚して、家庭を持ち始めたので尚更に。
「---初めて”この人にだけは失望されたくない”と心の底から思った」
”君は皆を裏切ってきたんじゃあない。単に相手にされていなかっただけだ。
誰も信じない君は、誰からも信じられていなかった。
君の無敵さは実のところ、無駄だ。
どんなに強くとも、君には挑むべき目的も築き上げる未来もないのだから。”
「自分の薄っぺらな根性がすべてみすかされたことに猛烈な羞恥心を覚えた。
それは初めての気持ちだった・・・。
”恥”の感覚。
それはオレにとって、人生で初めての”熱さ”だった。
その気持ちに出会うことをオレは、虚しい生活の中でずっとずっと待っていたのだ」
図星を突かれて謙虚になれる人って凄いよね。
ジョルノに流れるDIOの血とカリスマ性が垣間見れる瞬間。
なんということだろう。
ブチャラティは、その意味でチームの誰よりも遅れていたのだ。
他の者たちは全員、彼と出会うことで人生がかわったのだが、
ブチャラティ自身は・・・
その少年と出会うまで、その感覚を知らなかったのだ。
(中略)
彼は、こんなにも簡単なことさえ、それまで知らなかったのだ。
誰かに憧れて、その人に未来を、夢を託したいという気持ちを。
人生において、良い師や仲間に出会えることがどんなに素晴らしいことか・・・
それはおそらく、あらゆる人間に共通する人生の目的だ。
自分にとっての勇気がなんなのか知ること---。
それを一生かかって探っていくのが、すべての人に科せられた宿命なんだ。
人間讃歌は「勇気」の讃歌ッ!!
人間のすばらしさは勇気のすばらしさ!!
一部から受け継がれているジョジョのテーマ。
スピンオフでも健在。
※僕が読んだのはハードカバー。
文庫版は短編が一話追加されているそうですよ!