『イニシエーション・ラブ(乾くるみ 著)』の感想レビュー。
ネタバレは悪!
なのに本著は公式でそれをやりやがった!ゆ、許せん!!
さて、どこまでがネタバレになるかは人それぞれだけど、
僕の場合、
・後半のどんでん返しが凄い!
・叙述トリック!
・ラストで作品の評価が変わる!
なんてのもネタバレに含める。
衝撃なオチでも身構えていたら面白さ半減だよ!
というわけで、イニシエーション・ラブ、文庫版背表紙のあらすじをどうぞ。
もくじ
文庫版のあらすじ
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。
やがて僕らは恋に落ちて・・・。
甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説—
と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)
で、本書は全く違った物語に変貌する。
「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
>最後から二行目で、本書は全く違った物語に変貌する。
おい、ふざけんな!
ハードカバーのあらすじ
大学四年の僕(たっくん)が彼女(マユ)に出会ったのは代打出場の合コンの席。
やがてふたりはつき合うようになり、夏休み、クリスマス、学生時代最後の年をともに過ごした。
マユのために東京の大企業を蹴って地元静岡の会社に就職したたっくん。
ところがいきなり東京勤務を命じられてしまう。
週末だけの長距離恋愛になってしまい、いつしかふたりに隙間が生じていって・・・。
こういうのでいいんだよ
---!!!ネタバレ注意!!!---
推理してみる
本編は、
Side-A 鈴木と繭子が静岡で出会い恋を育む話
Side-B 鈴木が東京に三年間の研修となり、繭子との遠距離恋愛とすれ違いを描く話
の2パートで進行する。
>最後から二行目
を当ててやるぞ!のもと、
Side-Aまで読み終わり、若干の違和感を覚えつつ、
Side-Bを読み始めて少しして、「ははーん」と。
「これは読めたぞ」と。
この時点で何点かの仮説を立て、その内の何点かは正解していた。
ドヤァ!
と、こうやって推理小説として読むとトリックが分かりやすいので微妙な小説。
恋愛小説として読むと、よくあるやつという評価になってしまう。
本著、イニシエーション・ラブの本当の楽しみ方は、
読み終わった後、作中の時系列を整理することなのだ!
俺も手元のメモと脳内の情報を整理して時系列表を・・・
って、もうあるじゃん
※とても分かりやすい
そうそうこんな感じ。
自分の感覚とちょっと違うけど、
しっかり分析するとこんな時系列になるんだろうな。
---!!!マジにネタバレ注意!!!---
イニシエーションの意味
「イニシエーションって、言葉の意味、わかる」
「イニシエーション・・・通過儀礼ってこと?」
「そう。子供から大人になるための儀式」
私たちの恋愛なんてそんなものだよって、彼は別れ際にそう言ったの。
初めて恋愛を経験したときにはだれでも、この愛は絶対だって思い込む。
絶対って言葉を使っちゃう。
でも人間には、この世の中には、絶対なんてことはないんだよって、いつかわかるときがくる。
それがわかるようになって初めて大人になるっていうのかな。
それをわからせてくれる恋愛のことを、彼はイニシエーションって言葉で表現してたの。
それを私ふうにアレンジすると、イニシエーション・ラブって感じかな」
イニシエーションは連鎖する。
天童→美弥子→辰也→繭子→夕樹→???
最初の違和感
繭子が夕樹のことをたっくんと呼ぶようになったところ。
→確かに分るけど、無理ある気が・・・
→SideBでたっくん呼び。
→これは名前を同じにした別人だなキリッ
作品上のミスリードもあったけど、
繭子が二股防止で付けたあだ名という面もあった。
やるなぁ、繭子。
あだ名決める前、たっくんと呼びかけた繭子、学習してる。
辰也はそれで墓穴を掘った訳だしね。
誰が一番怖い?
4位:夕樹
まだイニシエーションしていない恋愛初心者。
自分の知らぬところで全ては完結した。
繭子とはうまくやっていけるのか?
はたまた、イニシエーションを果たすのか?
3位:美弥子
辰也が彼女持ちと知りつつ、関係を持つ。
自分の容姿に自信があり、寝取る気まんまん。
自分に素直なのは良いこと?
2位:辰也
初彼女が繭子?
東京に出て、大海を知る。
繭子でイニシエーションを果たし、美弥子に乗り換え順調にステップアップを図る。
蒔いた種を実らせたのはヨクナイ。
1位:繭子
たっくん読みを統一させるなど一番上手く立ち回っていたと思う。
彼氏と一週間以上離れられない子。
辰也が突発性難聴→観劇と二週連続で会いに来ないことで、
いずれは自分から離れると悟り、付近の男を物色する。
辰也が子供を産もうといえば、結婚していたのだろうか?
文庫版の評価
背表紙のあらすじはクソったれだったけど、
文庫版によくある同業者の解説、これが素晴らしい。
正確には『解説~再読のお供に~』。
本編の時代背景、1987年代に当たり前だった若者たちのギミックが紹介されている。
・テレホンカード
・男女七人物語
・ハイレグ
などなど
一番秀逸だったのが『六十分のカセット』の解説。
化石媒体、カセットテープの説明。その最後。
A面を聞いているときには、B面も一緒に回っているのだ。
おぉ~いいっすね!
この一文で文庫版は幕を閉じる。余韻がよい。