小説

【プールの底に眠る】僕が優しさを封印した理由【白河三兎】

『プールの底に眠る』文庫表紙

『プールの底に眠る(白河三兎 著)』の感想レビュー。

あらすじ

夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢った。
木の上で首にロープを巻き、自殺しようとしていた少女。
彼女は、それでもとても美しかった。
陽炎のように儚い一週間の中で、僕は彼女に恋をする。
あれから十三年・・・。
僕は彼女の思い出を辿っている。
「殺人」の罪を背負い、留置場の中で---。
誰もが持つ、切なくも愛おしい記憶が鮮やかによみがえる。
第42回メフィスト賞受賞作。

感想

留置場から十三年前を思い出す主人公ことマザの回想話。
妙に落ち着いている性格のため、高校生よりも大人びた印象を感じる。
マザが大人びているのは、身近な人の死を間近でかかわっているから。

鉄柵を乗り越えようとして足を滑らせて串刺しになってしまった兄弟。
夜中、遊んでいた友人の一人が翌日以降風邪をこじらせて死んでしまう。
痴呆が進む祖父の自殺を肯定したこと。

上記のような要因が相まって自分の心のに壁を作り、大人びた性格になっている。
ただ、副作用もあって、マザは異性に好意を感じるものの、愛せない性格になってしまった。

そんな心を融かせるのは、
一緒の小中高に通っている、由利なのか、
真夏の裏山で出会った自殺未遂少女、セミなのか。

マザと由利の関係で付き合ってないってのも不思議な感じ。
毎日一緒に登校していたり、夏祭りに二人で行ったりしていたらそりゃ彼氏からも疑われるわ。

由利が朝は弱いから一緒に登校していたり、
メインの彼氏といく夏祭りようの練習だったり、用語できる点はあるんだけどね・・・
リア充的な会話がなんともむずかゆい。

一方の自殺未遂少女、セミ。
マザがエロ本を山に捨てに行ったら首吊り用のロープの前で死のうとしていた少女。
奇妙な出会いからお互いが惹かれあうもののセミは過去のいじめから自分を守るために別の人格を作り出していた。

お互い接点は無いけど、マザを中心とした三角関係?
と、心に傷を負ったもの同士の踏み込まない会話が魅力的。

プールの底に眠っているものはいったい・・・?

作中の言葉

「(自殺の)動機はなんだったの?」
「祖父ちゃんは自分が呆けていくのを自覚していた。
祖父ちゃんは祖母ちゃんの思い出を失いたくなかったんだ。
それを失ってまで生きていたくない。
生きている意味がない。
祖父ちゃんはそういった」

自分が自分でなくなるのなら生きている意味がない。
同感するけど、自分は死のうと思ってもビビってしまいそうだ。

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