『日本沈没 上(小松左京 著)』の感想レビュー。
友人に勧められて。
沈むまでが面白いって触れ込み。
レンゾー「日本沈没って温暖化で氷が融けて海面上昇とか?」
友「それじゃ、世界沈没だよw」
レンゾー「そりゃそうだwww」
友「じゃなくて、日本直下のマントルが活性化してね・・・」
レンゾー「ネタバレやめーや!」
いや、タイトルが既にネタバレだけどさ。
あらすじ
伊豆諸島・鳥島の東北東で一夜にして小島が海中に没した。
現場調査に急行した深海潜水艇の操艇者・小野寺俊夫は、地球物理学の権威・田所博士とともに日本海溝の底で起きている深刻な異変に気づく。
折から日本各地で大地震や火山の噴火が続発。
日本列島に驚くべき事態が起こりつつあるという田所博士の警告を受け、政府も極秘プロジェクトをスタートさせ、日本人を全員海外へ移住させるべく、極秘裏に世界各国との交渉に入った。
小野寺も姿を隠して、計画に参加するが、関東地方を未曾有の大地震が襲い、東京は壊滅状態となってしまう。
感想
上巻の感想。
日本近海の海底で何かが起こっている。
調査を進めていくうちにある仮説が博士の中に・・・
「なぜ、そんなにお急ぎになるのですか?」
と小野寺はいった。
「いったい、どんな兆しが見えるんですか?」
「それは・・・」
と田所博士は、首をふった。
「まだいえん---だが、わしの中に、一つの気がかりがあって、そいつがわしをせかすんだ」
文庫 165ページより
そこから田所博士の焦らしプレイが延々と続く。
小難しい説明は良いんだよ!
文字の強調もやりすぎるとくどい!
(小説のタイトルで)ネタは上がっているんだ!
いいから早く吐けッ!
「教えてください。---いったい日本列島に何が起ころうとしてるんです?」
「このことは、もう一度肝に銘じておいてほしい。諸君!」
田所博士は、テーブルを拳で、ドシン、となぐりつけた。
(10ページによる説明)
「最悪の場合---日本列島の大部分は、海面下に沈む・・・」
凍りついたような沈黙が、部屋の中におちてきた。
文庫 332ページより
タイトルで読者は既に気づいているのに、田所博士がひたすら焦らしやがる。
ようやくネタバレしたと思ったら、その直後に関東大震災。
下巻に向けての引きが強い。
上巻は、日本沈没の可能性の調査と、政府の上層部にのみ可能性を伝え、
今後の方針(最悪の事態を想定して)の協議と学者と政治面のやりとりが強い。
下巻は、一般人視点まで落とし込んで、震災後の生活と、
沈没するなら日本脱出に向けて諸外国とのやりとりって感じかな?
そういえば、作中に国鉄という表現が出てきたり、
第二次世界大戦経験世代が現役で働いていたりするけど、いつ頃でた小説なんだろう?
→1973年
結構古いね。
作中の言葉
台風国であり、地震国であり、
大雨も降れば大雪も降るという、
この小さな、ごたごたした国では、
自然災害との闘いは、
伝統的に政治の重要な部分に組み込まれていた。
だから多少不運な天災が重なっても、
復旧はきわめてすみやかで活発に行われ、
国民の中に、災害のたびにこれを乗り越えて進む、
異国人から見れば異様にさえ見えるオプティミズムが歴史的に培われており、
日本人の僕もそのケがあるのだろうか?
災厄は、何事につけても、新旧のラジカルな衝突をいやがる傾向にあるこの国にとって、
人為的にでなく、古いどうしようもないものを地上から一掃する天の采配として、
受け取られてきたようなふしがある。
明暦の大火の後の復興とか見ると確かに・・・と思った。
男は、両親の庇護のもとから離れても、
「荒波荒い”世間”に出て行く」とはいえないような状態になってきた。
そのうえ、この社会の保護過剰状態に対応した、女性の社会への大量進出がある。
現在では、日本の社会そのものが総体的「マイホーム化」しつつあり、
男は身体的に成熟しても、生ぬるい「家庭化した社会」の中で、
たくましい「成人」になる場を見いだせない。
むむむ・・・
現代にも言える問題かもしれん・・・
僕は雄として活動できているのだろうか?
若い連中は知らないんだな。
社会も家庭も、そういうことをちっとも教えてやらないんだ。
可哀そうに。
何事も言えること。
先人の知恵は偉大なのだ。
偉大だけど、それを踏襲するだけではいけない。
常に改善、改良を繰り返して時代に合わせて行かなくては。