短編小説『肉食屋敷(小林泰三 著)』の感想レビュー。
もくじ
感想
肉食屋敷
田舎の寒村。
敷地内の産業廃棄物を棄ててもらおうと村役場環境課に務める一人が地主の屋敷もとい研究所へ訪問した。
研究所は人のパーツが家具(手のドアノブや壁紙に人の顔が浮いていたり)な悪趣味な作りでどことなく薄気味悪い雰囲気。
来訪を告げ、研究所の奥へ行くと小戸が居た。
小戸が言うには、復元したDNAを既存の生物に注入し、新たな生物を発生させたこと。
その生物が自分の手に負えなくなって今や屋敷全体を包み込んでいること。
生物が夜に活動を再開する前に、産業廃棄物Aを使って研究所を燃やしてほしいこと。
燃やすだけでは殺し切れないので産業廃棄物Bの強アルカリ性を用いて完全に生物を殺して欲しいことを伝えてきた。
私は急いで研究所を出て、山頂にある可燃性廃棄物を積んだトラックに火を放ち研究所へ突撃させた。
研究所は盛大に燃え上がったのであった。
最初は田舎の住人トラブル的な話かと思って読み進めていたら、SFじみたホラーだった。
オチが救いようのないホラー展開ってのも読了感におぞましさが残る良い終わり方。
ジャンク
人間の生体パーツを身近な道具に変換して生活している世界の話。
生体パーツは高値で売れるので世の中にマンハンターが蔓延っている。
マンハンターに恋人を殺され復讐を誓うハンターキラーが主人公。
主人公の復讐物語なんだけど、物語のほとんどは生体パーツを使用したゾンビ部品を通しての世界観の説明。
脳は劣化が早く、丁寧に扱わないと高値で売れない。
ゾンビ馬は作るのが大変、など。
長編でも話を作れそうな設定でワクワクした。
妻への三通の告白
癌で余命が宣告された野原は書斎の整理をしていた。
書斎の奥から出てきた妻に出しそびれた手紙。
そのうち二通は十年以上前のもので封筒には封がされあとは投函するだけの状態になっていた。
いまさら過去の手紙を読み直したところでそれは今の自分とは別人。
もし、君が読みたいというのなら強制はしないけれど、できればそっとしておいて欲しいな。
主人公が妻に宛てた三通の手紙を過去に遡りながら読み解いていく物語。
野原と野原の妻綾。
そして、綾にちょっかいを出してくる磯野という友人。
最初は磯野の横恋慕かと思いきや・・・
自然に状況が入れ替わったので、どのタイミングで場面転換したのか読み返してしまったぜ。
獣の記憶
多重人格で凶暴な副人格との闘いの物語。
副人格は自分が寝ている間に主人格への嫌がらせを行う。
精神科の病院に通院するものの解決の目途が立たなかった。
そして、ついに副人格が殺人を行ってしまう。
多重人格は本当に副人格なのか?
状況証拠的にあれ?って思うシーンが多数あって、真実にたどり着いた!
と思いきや、二転三転する結末。