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【正欲】世間に認められない欲は正しい欲?【朝井リョウ】

『正欲』ハードカバー表紙

小説『正欲朝井リョウ』の感想レビュー。
『性欲』ではなく正しい欲と書いて『正欲』。
一体、どんな欲なんだろう?

あらすじ

あってはならない感情なんて、この世にない。
それはつまり、いてはいけない人間なんて、この世にいないということだ。

息子が不登校になった検事・啓喜。
初めての恋に気づいた女子大生・八重子。
ひとつの秘密を抱える契約社員・夏月。
ある人物の事故死をきっかけに、それぞれの人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、”多様性を尊重する時代”にとって、
ひどく不都合なものだった――。

「自分が想像できる"多様性"だけ礼賛して、秩序整えた気になって、
そりゃ気持ちいいよな」

これは共感を呼ぶ傑作か?
目を背けたくなる問題作か?

作家生活10周年記念作品・黒版。
あなたの想像力の外側を行く、気迫の書下ろし長篇。

感想

世の中には様々な好きがある。
風船が割れるのが好き。
水しぶきを見るのが好き。
小さい男の子が好き。

そんな好きが性癖まで昇華してしまい、人に話せず一人生きずらい社会を生きる人々の話。
作中に出てくるのは、水しぶきが性癖の人たち。
歪んだ性癖のない人間の意見になっちゃうけど、
このくらいの性癖なら笑いながらカミングアウトしても良さそうなものだけれど・・・
それができずに各々が鬱屈してる。

そんな奴らがSNSを通して交流を図ることに成功!
市民プールでキャッキャと性癖を満たし合っていると、知り合いが通りかかって・・・
な、なんてタイミングの悪い・・・

逮捕交流され、尋問される中でも性癖を理解してくれそうな人はおらず、各々が心を閉ざすのであった・・・

みんな本当は、気づいているのではないだろうか。
自分はまともである、正解であると思える唯一の依り所が”多数派でいる”ということの矛盾に。
三分の二を二回続けて選ぶ確率は九分の四であるように、”多数派にずっと立ち続ける”ことは立派な少数派であることに。

多数派で居続けるのって難しいよなぁ・・・
誰だって少数派の性癖や趣味をもっているはずなんだよね。

多数派って?
少数派って?
誰にも迷惑かけてないのに少数派だけで迫害されるのは・・・

数の暴力を思い知らされる内容だった。

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