小説『とある飛空士への追憶(犬村小六 著)』の感想レビュー。
本の題名は「とある飛空士への追憶」。
歴史にその名を刻んだ偉大な皇妃と、歴史の闇に消えた名もない飛空士。
ふたりが織りなす、ひと夏の空戦の物語である。
もくじ
あらすじ
「美姫を守って単騎敵中翔破、1万2千キロ。やれるかね?」
神聖レヴァーム皇国の傭兵飛空士シャルルは、そのあまりに荒唐無稽な指令に我が耳を疑う。
次期皇妃ファナは「五芒五里に及ぶ」美しさの姫。
レヴァーム皇国の戦闘機よりも圧倒的な性能を誇る敵国帝政天ツ上の戦闘機、
作戦の全貌が敵軍に漏れ待ち伏せされる中、傭兵と次期皇妃の身分違いの旅が始まる。
蒼天の積乱雲がたちのぼる夏の洋上にきらめいた、恋と空戦の物語。
ラノベ版と新装版について
ラノベ版 2008/2出版
新装版 2011/8出版
ラノベ-新装版の間に、続編(とある飛空士への恋歌、とある飛空士への夜想曲)が出版され、
続編に繋がるように内容や構成を改変したものを新装版として出したもの。
違いその1-挿絵-
映画の直前に一般の読者層を狙ったのかガガガ文庫レーベルではないので挿絵は一切ない。
→僕は挿絵は要らない派なので嬉しい。
違いその2-ラブコメ-
恋愛(ラブコメ)要素、シャルルの性的トラブルの対処が童貞臭くない。
→というより、萌えのあざとさの緩和かな?
新装版の表現の方がより大人って感じで好きなんだな。
違いその3-設定変更-
続編につなげるために設定の変更、構成が違う
→加筆修正と順番を入れ替えてある。
違いその4-ファナのその後-
ファナのその後が少し描かれている。
→見れて良かったけど、蛇足な気もする。
どっちを読むべき?
作者の成長により文章が精錬され、読みごたえが上がった新装版。
といいたいところなんだけど、僕はラノベ版をオススメする。
理由1-余韻-
新装版のファナのその後ってやっぱいらないかな。
終章で終わるラノベ版の余韻がたまらないんじゃ。
理由2-表紙-
新装版の表紙、なんだこれ!?
それに比べてラノベ版のファナの可愛さ(凛々しさ)よ。
挿絵のモノクロよりカラーの方がいい仕事してるんじゃないすか?森沢先生!
この表紙の絵、作中のとあるシーンなんだよね。
読み終わって、心地よい余韻の中表紙をみると、「ああこのシーンかぁ・・・」
ってなる。たまりませんわぁ!
理由3-本のサイズ-
ラノベ版・・・文庫サイズ
新装版・・・・単行本サイズ
単行本サイズのブックカバー持ってないんだよ!
感想
シャルルは、混血最下層階級のため正規軍には入れない。
なので傭兵として空軍に所属しているけれど、空戦の腕は正規兵を含めても部隊随一。
そんなシャルルに極秘任務の白羽の矢が立つのは必然。
昔お互いがが出会っていたというお約束はあるものの、
次期皇女候補のファナとの身分格差をどう出合わせ、一緒に行動させるか、
という部分に違和感が無く読めた。
シャルルは自分の境遇に折り合いをつけた上で生活しているのに対して、
ファナは心を逃がすことによって現状を受け入れている。
そんなファナが海猫作戦を通して、自分の境遇を受け入れ成長していく姿は見ていて楽しい。
逆説的だけど、身分格差の恋愛は結ばれてはいけないと思う。
『結ばれた後の苦労』よりも老いてから『結ばれたらどうだったろう?と想像』するほうが幸せだったりするんだよ。
ファナも海猫作戦の思い出を胸に精力的に活動して、レヴァームと天ツ上との和平を結ばせるんだろうし。
シャルルはどうなったか分からないけど、終戦まで生き残っていて欲しいね。
それにしてもエピローグが素晴らしい。
ラスト四ページで作品の評価がぐーんと高まる一品。
読めば分かる!読めば分かるんだ!!
オススメ!