小説『続巷説百物語(京極夏彦 著)』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
人の世に凝るもの。恨みつらみに妬みに嫉み、泪、執念、憤り。
道を通せば角が立つ。倫を外せば深みに嵌まる。そっと通るは裏の径。
所詮浮き世は夢幻と、見切る憂き世の狂言芝居。身過ぎ世過ぎで片付けましょう。
仕掛けるは小悪党、小股潜りの又市。山猫廻しのおぎん。事触れの治平---。
手練手管の指の先、口の先より繰り出されるは、功緻なからくり、眼眩。
邪心闇に散り、禍は夜に封じ、立ち上がるは巷の噂、物怪どもの妖しき姿。
野鉄砲、狐者異、飛縁魔、船幽霊、死神、老人火---。
「御行奉為---」
感想
前半の単発の話が『死神』で一つにまとまっていった展開が鳥肌。
放火魔一人で話が作れるのに放火魔レベルのやつらが集合しちゃうんだもんな。
頭のネジがぶっ飛んでるやつらはどうやって知り合ったんだろう?
『死神』の集大成で終わるのかと思いきやもう一遍『老人火』。
蛇足じゃね?って思っていたら死神の後日譚。
本巻で完結だなーって展開。
え?続編があるの!?
作中の言葉
「もう語るこたぁねぇよ。
何をどう語ったってその傷は消えねぇぞ。
そのうえその傷は痛む。
だから忘れることだって出来やしねぇ。
そりゃ一生背負わなきゃならねぇ重てぇ枷だ。
下手人ぶっ殺したって恨みは晴れねぇ。
だから、慣れるしかねぇ」
トラウマは、慣れるしかないのだ・・・
でも、復讐できることなら復讐したいと思ってしまう。
作中の妖怪
野鉄砲(のでっぽう)
北国の深山に居る獣なり
人を見かけ
蝙蝠のごとき物を吹出し
目口をふさぎて息を止め
人をとり食らとなり。
狐者異(こわい)
狐者異は高慢豪情の一名にて
世話に云無分別者也
生きては法にかかはわらず
人を恐れず人のものを取りくらい
死しては妄念執着の思いを引きて
無量のかたちを顕し仏法世法の妨げをなす
飛縁魔(ひのえんま)
顔かたちうつくしけれども
いとおそろしきものにて
夜な夜な出でて男の清血を吸い
ついにはとり殺すとなむ
船幽霊(ふなゆうれい)
西海にいづるよし
平家一門の死霊のなす所となん
いいつたふ
死神(しにがみ)
死神の一度見いれる時は
必ず横死の難あり
自害し首くくりなどするもみな
此もののさそひてなすことなり
老人火(ろうじんのひ)
木曽の深山にや
老人の火という物あり
是を消さんとするに
水をもって消せ共更にきえず
畜類の皮を以て消さば
老人ともに消ゆるといへり