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【十年交差点】『10年』をテーマに五人の人気作家が紡ぐ物語【アンソロジー】

小説『十年交差点』表紙

小説『十年交差点』の感想レビュー。

もくじ

本の紹介

その一瞬の選択が、あなたの10年後を変える。

「10年」。それだけのテーマに五人の人気作家が自由に物語をつむいだら、
泣けて、震えて、心が躍る、こんな贅沢な短編集ができました!

時間を飛び越える機会を手に入れた男の、数奇な運命を描く物語。
戦慄の結末に背筋が凍るミステリー。
そして、河童と猿の大合戦に超興奮の時代ファンタジー。

などなど全五作。
それぞれの個性がカラフルにきらめく、読み応え満点のアンソロジー。

地球に磔にされた男(中田永一)

あらすじ

29歳無職、ギャンブル中毒の柳廉太郎(やなぎれんたろう)は
父の友人、実相寺時夫(じっそうじときお)の遺品を整理していた。
パチスロの軍資金にするために物色していると高そうな懐中時計を見つけた。

その懐中時計は、自分を一瞬だけ10年前に転送して直ぐに戻ってくる謎のタイムトラベル装置だった。
しかし、その一瞬の干渉でバタフライ効果が起こり、世界は分岐した。

廉太郎が戻ってきた世界は分岐後の世界で、その世界には別の廉太郎も存在していた。
他の自分がどんな人生を歩んでいるのか?
廉太郎はタイムトラベルを繰り返し、様々な自分に合っていく。
オリジナルよりも裕福なもの、貧困なもの、幸せなもの、不幸なもの。

様々な自分と語らい、自分の幸せを考える廉太郎。
タイムトラベルの終着点で廉太郎は何を思うのか・・・?

感想

並行世界の自分達と語らい幸せとは何かを問い続ける廉太郎。
並行世界の廉太郎を救おうとする行動が好き。

タイムトラベルの終着点。
流されるように終着点として選んだ場所だけど、今の廉太郎ならやっていけるでしょ。
そんな余韻を残す終わり方。

ほんの些細なことで、10年後の自分はこんなにも変わるんだ。
僕も並行世界の自分を観測してみたい~

白紙(白河三兎)

あらすじ

『十年後の自分』の課題作文を白紙で提出してきた立川小登乃(たちかわことの)。
教師の大塚は小登乃を生徒指導室に呼び、なぜ白紙なのかを尋ねて、
小登乃と言葉を重ねていくうちに悩みがあることが分かった。

教師信条と熱量で小登乃の悩みを聞き出し、作文も再提出された。
小登乃の悩みを解決するにあたって知り合った小柳先生とも上手くいきそうなのであった。

だが、本当の悩みは別のところにあって・・・

感想

この終わり方はねーよ・・・
10年という尺度も作文の課題ってだけだしさ。

何を伝えたい作品なのだろう?
『余計なことをするな』かな?

ひとつ、ふたつ(岡崎琢磨)

あらすじ

北川巴留(きたかわはる)はターナー症候群という持病で子どもが限りなく産めない身体。
10年前、結婚を考えていた彼氏に伝えたところふられてしまった。

10年。その月日が心の傷を塞ぎ、また彼氏も作れるようになった。
また彼氏も作れるようになったが付き合って半年、彼氏から突然プロポーズされ、
10年前のことがフラッシュバックする。

巴留が出した回答とは・・・?

感想

言葉には気を付けましょうな話。
彼氏「無精子症の僕にはターナー症で子どもが作れない君が≪ちょうどいい≫」

『ターナー病の巴留』を見ている。
『北川巴留』自体を愛していない!フザケンナ!
そんな彼氏とどうなるかは読んでからのお楽しみ。
誠実でいることも大事だよね。

君が忘れたとしても(原田ひ香)

あらすじ

桜井結実子(さくらいゆみこ)の姉、智子が亡くなった後、姉の息子壮真(そうま)を預かることが多くなった。
そのうち、義兄の家に新しい彼女が出入りすることになるのを目撃するようになった。

私が身を引いて、10年経った。
今日、成長した壮真と会う。
どんな顔をして会えばいいのか・・・?

感想

結実子ちゃんの優柔不断ぶりに悩まされる作品。
義兄に新しい彼女が出来た→私が身を引くべき?→デモデモ…
義兄が引っ越す→私は身を引いた→デモデモ…
壮真と10年ぶりに会う→会いたい!→デモデモ…

ウオオオォォォン!
イライラさせられるんじゃ!

もっと自己主張すれば自分の望んだ未来が手に入ったろうに・・・

一つ足りない(畠中恵)

あらすじ

九千坊河童は、倭国の西、海の果てにある中国の地より、
飢えと寒さから逃げるように一団を率いて日本へやってきた。

九千坊は自分の名前にコンプレックスを抱いていた。
九千坊の九千。それは万から千、欠けている数。
九は十より、一つ少ない。
九十年と聞けば、あと十年ですねと言われる。
「千、欠けているのが九千坊か。おれは頭として何かが足りない者なのか」

九千坊は新しい地で上手くやっていけるのだろうか・・・?

感想

妖怪時代劇。
名前に不満を持つパワー系河童が主人公。

大陸から自分たちが持ち込んだ秘術によって
倭国の猿VS河童を劇化させてしまう。

その問題を解決して、倭国の河童たちに認められる。
・・・マッチポンプ?

名前、考え方変えたらよくね?
十年より一年早く事を成せたらよくね?
と前向きに考えられるようになりました。
↑10年要素?

総評

アンソロジーって作者によって当たりはずれがデカイ。
僕は中田先生の作品を読みたくてこの本を手に取った。
自分の面白かった順は、

  1. 地球に磔にされた男(中田永一)
  2. ひとつ、ふたつ(岡崎琢磨)
  3. 一つ足りない(畠中恵)
  4. 君が忘れたとしても(原田ひ香)
  5. 白紙(白河三兎)

なお、表紙の可愛い女の子は出てこない。

感想に不満しか並べていない感じになったので申し訳ない。
何かをテーマにして作品を書くなんて大変だよなぁ。
僕も『10年』をテーマに何か考えてみよう・・・

『10年』をテーマに物語を考えてみる

大冒険

場面は地元居酒屋。
飲んでると友達が話しかけてくる。

「あのときの冒険覚えてる?」

それは10年前の冒険譚。
小学生だった僕たち5人は夏休みに自転車で海を目指した。

計画性皆無の大冒険は海へ向かう道中に日が暮れ途方に暮れる。
引き返そう。
いや海までいくべきだ。
帰りたい。

疲労と不安から喧嘩を始める少年たち。
結局、警察に保護され親にはこっぴどくしかられた。

同窓会も終わり、電車に乗り帰路につく。
車窓から見える外の景色。
そういえば、この辺りを自転車で走ったんだっけ。
大人になれば簡単に行ける場所。
小学生だった僕たちには大冒険だった。

あのときは、結局海まで行けなかったんだよな。
今度、当時の五人に声を掛けて自転車で海に行く計画を提案してみよう。

動機

20年に渡り犯行を繰り返して来た、幼児誘拐殺害犯が捕まった。
犯人は神父だった。

神父は法廷の場で
「私には将来親を殺す子供を見分けることが出来るのです」
「その運命を変えたくて子供に矯正を施していたのです」
「決して殺すつもりはなかったのです・・・」

法廷の場に居た人間たちは身勝手な言い訳に怒り、
聖職者が起こした猟奇殺人事件として、メディアは大々的に報道した。

神父は死刑になった。

10年後—
テレビである特集が組まれた。
『近年増加している親殺しをする子供たち』

コメンテーターや知識人がそれっぽいことを喋る。
フリップには、親を刺し殺した子供の写真が表示されている。
成人しているがその子供は、神父が潜伏していた施設から保護した子どもだった。

警察に保管されている資料によると、
施設から保護した子どもは3人。
犯人から押収したリストにはまだ数十人の児童の名前が記されている。

ノスタルジィ路線とミステリィ路線の二つを考えてみた。
他にも何個か考えたけど似たような内容なので割愛。

本を読んで、『10年』を自分だったらこう表現する
って考えるのも面白い一冊。

皆が考えた10年も見てみたいな♪

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