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【本と鍵の季節】高校の図書委員の二人組が日常の謎に挑む短編六話収録【米澤穂信】

小説『本と鍵の季節』表紙

小説『本と鍵の季節(米澤穂信 著)』の感想レビュー。

男子高校生で図書委員の二人がちょっとした出来事や、
先輩、後輩からの依頼で謎ときに挑む日常系ミステリー。

もくじ

あらすじ

堀川次郎(ほりかわじろう)は高校二年の図書委員。
利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(まつくらしもん)と当番を務めている。
背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。
そんなある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。
亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいというのだが・・・。
図書室に持ち込まれる謎に、男子高校生ふたりが挑む全六編。

感想

主人公堀川と、友人の松倉、二人は高校二年生で図書委員。
委員会の会合で話すようになり、交友歴は半年ほど。
高二の初夏~冬までの約半年に起こった出来事を、
時系列ごとにまとめた短編六つ。

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元図書委員で一年先輩の浦上先輩が図書室に訪ねてきた。カワイイ。
依頼内容は亡くなった祖父の金庫を開けて欲しいとのこと。
何で僕たちが?と思いつつ、しぶしぶ金庫の謎に挑むことになったのだ・・・

過去、学校で暗号を解いたことがるとはいえ、
素人二人に金庫の開錠を依頼してくる浦上先輩。
プロに頼めばよくね?
という疑問からどんどん疑問を掘り下げていって、出た答えが・・・。

学生の日常でハートフルなミステリーかとおもいきや、こういう路線なのね。

ロックオンロッカー

松倉の床屋が休みなので、堀川の美容院を紹介された。
四割引きの割引券に釣られて男二人で美容院に。
いつもの違う対応の美容院だったが、
店長の何気ない一言で疑問が確信に・・・

たまたま巻き込まれてしまったおとり事件。
終わり方は、堀川と松倉の考え方の違いが分かる一面が。
あの状況なら犯人はすぐ捕まるだろうしね。

一話読むことに、主役二人の性格付けがされていく。

金曜に彼は何をしたのか

週末に学校の窓ガラスが割られる事件があった。
その容疑者に上がったのが、図書委員の後輩、植田の兄。
テストの問題用紙を盗むために窓を割り侵入したというのが教師の言い分。

それに納得いかないのが植田で、
当日の兄のアリバイ探しを堀川と松倉に依頼する。
二人は、植田兄のアリバイを探すが・・・

植田兄の無実ははらせた。
けど、後味がよくない。この後、植田弟はどうするんだろう?

そして、窓を割った本当の理由。
ハハハッ!そんな理由で割るんかい(笑)

ない本

学校の三年生が自殺したらしい。
その三年生の友人長谷川先輩が図書室を尋ねてきた。
自殺した三年生、香田が最後に読んでいた本を知りたいらしい。
図書室のルールで閲覧履歴を教えるわけにはいかない。
長谷川先輩の記憶を頼りに本の特徴を教えてもらい、本を探すことにするのだが・・・

最初の嘘が原因で、嘘を重ねて引き返せないことはよくあること。

昔話を聞かせておくれよ

堀川と松倉のちょっとした過去話。
ちょっとした話のはずが、松倉の親父の遺産?を探すことに。
松倉が6年間探して手掛かりを見つけることができなかった遺産だが、
第三者、堀川の視点から見ることによって新たな手掛かりが見つかる。
果たして遺産を見つけることができるのか・・・?

堀川のプールの話、好き。
ただ、事実を突きつけるだけじゃなく、相手の気持ちを考えた上で行動する。
大事なんだけど、むつかしいよなぁ。

松倉の昔話は、堀川に聞いてほしくて話を振ったのかな?
新聞記事を読んで、感傷からポロッと出ちゃったのかな?

良くも悪くも、遺産発見の目途はついたけどさ。

友よしるなかれ

第五編の続き。
遺産を見つける過程で、遺産の正体に気づいた堀川。
翌日、裏を取るために朝イチで図書館にいき、六年前の新聞記事を探す。
遺産の全容を知り、一息ついたところで、松倉に声を掛けられる・・・

賢いと余計な真実に辿り着いてしまうもの。
知らなければ、明日も笑顔で挨拶が出来たろうに。

経済的に豊かな松倉と、貧乏な堀川。
二人の考えは平行線なのだろうか?

感想の感想

堀川と松倉が論理的で冷めている印象があり、
物語は淡々と事実のみを追いかける。

事件が解決して、最後に感情面での問題提起がある。

”解決したけど、当事者や証拠はその後どうするんだろう?”

各話、想像力を働かせる終わり方をしている。
松倉には戻ってきて欲しいけど、
戻ってこない終わり方も悪くないよなぁ

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