小説『かがみの孤城(辻村深月 著)』の感想レビュー。
2018年本屋大賞受賞作!
図書館に予約しておいてようやく順番が回ってきました。
読むぞ~ッ!!
あらすじ
学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。
輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。
そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。
すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
感想
かがみを通して辿り着いたお城で出会う同年代の男女七人。
話してみると、全員が中学1~3年生。
それぞれの理由で学校に行けてないようだが・・・?
城にはオオカミのお面をかぶった少女の管理人”おおかみ様”が居て、
「どんな願いも一つだけ叶えることができる」という。
叶える方法は、お城のどこかにある『願いの鍵』をみつけ、『願いの部屋』を開けること。
ただし、ルールがいくつかある。
・願いをかなえられるのは一人だけ
・願いの鍵を使ったもの以外の記憶はなくなる
・起源は3月まで(10ヶ月ほど)
みんな、素知らぬ顔でカギを探すけど見つからない。
そのうち、仲間と過ごす時間が楽しくなっていって・・・
という展開。
最初読んだ段階では、カギを見つけるために七人の騙し騙されのドロドロな話かと思いきや、不登校をテーマにした内容。
七人それぞれの悩みがなにかしら読者にも当てはまるのではないでしょうか?
この本は、主人公のこころたちと同じような年代の子が読むとより良いのかな、と思いますが、
大人になって読んでみてると、当時の自分はどうだったかな?なんて思いを馳せることができます。
情けない話ですが、僕は努力をしない子だったので、成績は下の中。
別段いじめを受けるわけでもなかったのだけれど、クラスに馴染めないパッとしない子で学校に行くのが嫌でした。
けど、親がそれを許さずほぼ皆勤賞で登校するという状態。
そのお陰でドロップアウトしなかったので感謝はしていますが、学生生活に良い思い出もあまりありません。
作者は、インタビューにてこのように語っていました。
自分が10代で逃げ場がないような気持ちでいた頃、私の傍らにいつもあったのが本の存在でした。
私の部屋の鏡は光りませんでしたが、本がカバンの底や本棚の片隅で光って、扉をあけて、私をいろんな世界へ冒険に連れて行ってくれました。
今、僕はどうにかこうにか生きております。
学生の頃にあった焦燥感も落ち着いております。
僕にとって、『光る鏡』はなんだったんだろう?
なお、本著の根幹にあるギミックを早い段階で予想できてしまったので、面白さは少し落ちてしまいました。
最終章で全てが補完される内容になっており考察の余地は無くなってしまったのが残念。
推理可能だけどハッキリさせない情報開示で想像の余地を残してほしかったというのが正直なところ。
※その辺りはネタバレ考察を読んでみてください。
それでも、オススメできる作品です。
作品の言葉たち
引きこもっていて、
しかし、その一方で、こころは思い出していた。
毎日毎日、薄いオレンジ色のカーテンを引いた部屋の中でドラマの再放送を楽しみに見ていたけれど、一日の終わりには、そのストーリーがうろ覚えになっていたことを。
ドラマだけじゃない。ワイドショーやバラエティーも、観た端から内容についての記憶がどんどん薄くなっていった。
惰性で見たテレビ番組とかって記憶に残らないよね。
特にテレビやyoutubeなどの動画系はなんとなーくで見がち。
なんでもそうだと思うんだけど、自分の意思を持ってやらないと記憶に残らないし身に付かない。
僕が、高校知識すら怪しいのはそれが理由なのです。
「たかが学校のことなのにね」
「たかが学校?」
「うん」
こころは驚く思いで、全身で、その言葉を受け止める。
そんなふうに思ったことは一度もなかった。
シーン(学生生活)で捉えるとそれが世界の全てに見えてしまうけど、
ストーリ(人生)ーで捉えると大したことがなかったりするよね。
大人になったら大したことなかったって気づけるんだけど、人生経験の浅い間はなかなか気づけない。
それに気づける学生が増えれば、不幸な事件は減るんじゃないかなぁ
続く:かがみの孤城のネタバレ考察、スバルはゲーム制作者になれたのか?