小説『三匹のおっさん(有川浩 著)』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
還暦ぐらいでジジイの箱に蹴り込まれてたまるか!
とかつての悪ガキ三人組が自警団を結成。
剣道の達人・キヨ
柔道の達人・シゲ
機械いじりの達人・頭脳派ノリ
ご近所に潜む悪を三匹が切る!
その活躍はやがてキヨの孫・祐希や
ノリの愛娘・早苗にも影響を与え・・・・
痛快活劇シリーズ始動!
設定が好き
定年後の老人問題をあつかった本作。
・・・って重たいものじゃないけど。
還暦を迎えた同級生三人のじじいおっさんが徒党を組み、
自警団として自分たちの手が届く範囲に対して干渉していく。
人間は、共同体に寄与してこそ、幸福感を感じるのかもしれない・・・
実生活でもさ、小説内みたいに自警団を組んで大立ち回りなんてする必要はないんだ。
自分の能力で賄えることをすればいい。
公園の草むしりをしてさ、公園で遊ぶ子供たちを見守る。
それだけで幸せなんじゃないかな。
老人という主人公
老人はいい、偉そうなことを言ってもそれっぽく聞こえるし、
『剣道の達人』って言われれば厳しい鍛錬の元、達人になったんだなぁ。って設定にすんなり入り込める。
剣道が持つステレオタイプのキャラ付けも出来るし、
若い頃の苦労話などのストーリー展開にも事欠かない。
老後の結末が見えているので若い頃の話にもブレが生じにくい。
また、加齢による体力の低下や頭の固さが弱点となり人間らしさを醸し出す。
それが三匹もいるんだよ?
結構キツイ内容
自警団レベルで解決するにはディープな内容な気がする・・・
・恐喝事件
・連続強姦事件
・高齢離婚詐欺事件
・動物虐待事件
・アイドル斡旋詐欺事件
・高額販売詐欺
連続強姦事件は、作中では未遂で終わったけど、いままでの被害者が居た訳で・・・
アイドル斡旋詐欺事件も、一歩進めば写真撮影だけじゃなくて・・・
どうも性犯罪系は苦手だ・・・
でも、事件の内容に対して終わり方はどれもさっぱりしていて、人間関係の前進がみられる終わり方。後味は良い。
特に、動物虐待事件の終盤、大人が子供に対するしつけに対する考え方が好き
「子供の将来のため・受験に影響が出るから?
んなこたぁ筋が違うんだよ。
あのガキどもは親や学校が庇ってくれるのを見越してやがる。
自分たちがブランドだって知ってやがる。
親も学校も子供や生徒がかわいいんじゃねぇ、
自分の持ってるブランド品に傷がついたら価値が下がる程度の了見で今回の件もうやむやにしやがったんだよ。
子供の将来を思うなら、ここで補導させとくべきだった。
受験で不利になるとしてもな。
ガキの間違いを今まで全部うやむやにしてごまかしてきたんだろうよ。
だからあんな小賢しいブランドガキができあがる。
ガキが間違うのは当たり前だ。
ガキが間違ったら親はガキがションベンちびるほどガッツリ起こって、
ああ、こりゃあ悪いことだと教えてやらなきゃ駄目なんだよ」
世代間交流
小中学校ので出来たコミュニティを大事にして、
大人になってもそのコミュニティのみしか友人がいないなんて悲しすぎるよ。
もっと縦の繋がりを持つと知らないこといっぱい知れて面白いよ。
孫世代は老人世代に接することで、生き様を見て敬意を評す。
老人世代は孫世代と接することで、ファッションやトレンドを教えてもらう。
多様性ってすばらしい。
まとめ
事件はヘヴィだけど内容はコミカル。
老練した戦略は安心してみていられるけど、自警団でやれる内容・・・か。うん。
どうも、ヘヴィ⇔コミカルのギャップに頭がついていかない。
コンセプトが「時代劇を現代でやったらどうなるの?」らしいので、
勧善懲悪モノとして楽しく読めます。
続編もあるみたいだから、今度読んでみよう。