『インシテミル (米澤穂信 著)』の感想レビュー
レビューを書くにあたって、色々メモを取るようになりました、レンゾーです。
今回は、米澤穂信のインシテミル。
古典作品が沢山出てきますが、別段知らなくても楽しめた作品です。
もくじ
内容紹介
車を買う金欲しさにアルバイト探しをしていた学生・結城がコンビニにあった求人情報誌で見つけたのは、時給11万2000円という破格の好条件の仕事。
それは、1週間「ある人文科学的実験の被験者」になるだけという、短期のアルバイトだった。インターネットや雑誌を見て、山間にある施設に集まったのは12人の男女。
彼らは、実験の内容を知り驚愕する。
それは、より多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームだった――。
地下の実験用施設「暗鬼館」に閉じ込められた12人。最初の殺人が起こり、疑心暗鬼に駆り立てられる参加者たち。互いに推理を戦わせ始める彼らを待ち受ける衝撃の運命とは!?
まずは、感想から、面白かった。
人にオススメしたいね!
古典ミステリーをリスペクト
この小説には他作品が多数出てくる
十角館の殺人(綾辻行人)
そして誰もいなくなった(アガサ・クリスティ)
まだらの紐(コナン・ドイル)
緑のカプセルの謎(ジョン・ディクスン・カー)
隅の老人の事件簿(バロネス・オルツィ)
第三の銃弾(カーター・ディクスン)
二つの微笑を持つ女(モーリス・ルブラン)
僧正殺人事件(ヴァン・ダイン)
犬神家の一族(横溝正史)
Yの悲劇(エラリィ・クイーン)
茶の葉(E・ジェプスン&R・ユーステス)
絶妙のショット(E・C・ベントリー)
Xの悲劇(エラリィ・クイーン)
ほとんど読んだことないや
「まさか『ヴァン・ダインです』でぽかぁんとしたクチじゃないだろうな!?」
・・・はい、僕です。
###ここからネタバレ###
###(感想)読む前に(本を)読もう###
殺人をさせるための舞台構成
何もしなければ簡単に大金が手に入るのになんで殺すんだよ!
なんて思っていたけど、死ぬ役、殺す役のサクラが参加者の中に混じっているんだもんな。
そうでもしないと、物語は動かないか。
自分がもし、暗鬼館に放り込まれて生存者になったとしたら・・・
なんて考えると、鍵のかからない部屋はとても恐ろしい場所だよ。
好きなことにたいする心理
参加者の中でミステリーに精通しているのは、三人。
鼻が利いて、他人と同調できなくなるのが面白い。
岩井は言わずもがな、
結城も岩井を助けるよりも推理の方を優先させちゃう場面とか。
自分も趣味の話題だと同じような行動をとっているのかもしれないな。
プロローグの募集者たちは誰?
インシテミルの本編は、結城の一人称で物語は進みますが、
Day before(プロローグ)とDay after(エピローグ)は各参加者の募集動機とその後の姿が描かれています。
Day afterでは誰がどのエピローグかが描かれていますが、Day beforeは誰がどのプロローグなのか描かれていません。
参加者12人に対してエピローグは9つ。
結城、須和名は除外。大迫と若菜をペアと考えて割り当ててみようと思います。
作中の順番ではなく、自身があるものから紹介していきますね。
関水
モニターの一人は、電話で誘いを受けた。
ちょうど金がいるところだった。
細かい条件など、検討どころか聞くことさえもしなかった。
気にしたのは、いつ始まるのか。いつ終わるのか。入金はいつなのか。
その人物は、何でもするつもりで応募した。
電話で誘い→クラブからの直接依頼
ちょうど金がいる→10億のこと
殺人鬼枠でのオファーですね。
西野
モニターの一人は、人づてに誘いを受けた。
その人物は考え、悩み、苦しんだ。
異常さに気づいてはいた。しかし、実際に参加してみれば、思ったより異常ではないかもしれない。
わからなかった。
わからないまま、安い酒を飲んだ。飲み続けた。
その人物は、夜明けに応募した。
人づてに誘いを受けた→クラブではなさそう?
ヤクザ?闇金?
”安い酒を飲んだ。”
の部分に経済的な困窮を感じます。
西野も実生活では、
事業に失敗したり、
連帯保証人になって借金があるなど
進退窮まった状態だったのではないでしょうか?
自ら死を選ばなければならない状態ですしね。
ということは、自分のためではない?
自身の借金から家族を守るために応募した。とかでしょうか?
大迫&若菜
モニターの一人は、やばそうな仕事があると持ちかけられた。
話を聞いてもしばらく放置していたので、興味がないんだなと受け止められた。
しかしある日、その人物は、気まぐれのように募集要項を尋ねた。
よくよく考えて、金が必要だと思い至ったのだ。やばいかどうかは意識しなかった。
その人物は、警告を無視して応募した。
”やばそうな仕事があると持ちかけられた。”
若菜から大迫に持ち掛けたイメージ。
”よくよく考えて、金が必要だと思い至ったのだ。”
急いで金は必要ではないが、まとまった資金が必要。
→結婚資金
淵
モニターの一人は、条件のいい短期雇を必死に探していて、求人に目を留めた。
その人物は、条件文のおかしさを最初から問題にもしなかった。
募集元か印刷所が間違ったのだと思い、それを疑うこともしなかった。
掛かれている文字を読まず、こうだろうという自分の思い込みを読んだのだ。
その人物は、他の短期雇いと並行して応募した。
”条件のいい短期雇を必死に探していて”
”他の短期雇いと並行して”
→店の維持と夫の入院費を稼ぐため
”それを疑うこともしなかった。”
”こうだろうという自分の思い込みを読んだのだ。”
淵のイメージ通り。
普通のおばちゃんって感じがします。
次から難しくなってくる・・・
釜瀬
モニターの一人は、求人広告の「誤り」を大いに笑った。
こんなにおかしなことが書いてある。友人たちにそう触れまわった。
笑い転げ、バカにしているうちに、いつの間にか応募することになっていた。
ちょうどアルバイトは探していたところで、それで特に問題はないように思っていた。
その人物は、冗談のつもりで応募した。
釜瀬みたいなヤツって案外友達多いんですよ。
類友みたいなのが。
みんなでバカにしているうちに、
”いつの間にか応募することになっていた。”
周りにおだてられて気が大きくなったんでしょうか?
決定に自分の意志が無い辺りが釜瀬っぽいなぁ。
友達たちにも、作中通りまではいかないまでも、
同じようないじられ方をされていたのかな。
安東
モニターの一人は、無料求人誌を見ていてその求人に気づいた。
条件文のミスはさておいても、あやしい話には違いない、とその人物は考えた。
そして、こんなあやしい話に乗るのは馬鹿だ、と考えた。
さらに、馬鹿しか乗らない話に自分が乗ったら、旨いところを掠め取れるのではと考えた。
その人物は、馬鹿共を出し抜いてやろうと応募した。
作中はそうでもないけど、
Day afterを読んでいると安東がしっくりくる。
最初から人を見下しているからこそ、Day afterの憤慨。
こっから下はもう、勘だね
箱島
モニターの一人は、雑誌の隅に求人を見つけた。
常識外の条件を読んで、その人物は、募集自体が何かのミスだと考えた。
しかし数日後、ふと思いつく。もしもミスでないとしたら。
あるいは、自分の才覚を試す一世一代の大舞台になるかもしれない。
その人物は、波乱を期待して応募した。
作中で見せるリーダーシップは自信の表れ?
真木曰く、
「お前(安東)と箱島は、どっちが賢いことを言えるか競い合っている」
岩井
モニターの一人は、インターネットで求人情報を見つけた。
その人物は十分な注意を払うことを怠った。
募集要項の異常な点を、まるで見逃してしまったのだ。
後におかしいなと気づきはした。しかしその疑問は日々の中に封殺された。
その人物は、小遣い稼ぎのつもりで応募した。
作中、ちょっと抜けている印象があったので、
”その人物は十分な注意を払うことを怠った。”
の部分で岩井。
真木
モニターの一人は、友人から「おかしな求人がある」と教えられた。
友人は、世の中にはこんな楽しい誤植があるという冗談のつもりで求人誌を持ってきたのだった。
しかしその人物は、あるいはこういうこともあるのかもしれないと考えた。
その人物は、記述が真実かどうか確かめるために応募した。
消去法で余った最後が真木。
真木の人物像、情報が少なすぎる・・・
以上、インシテミルの感想でした。