『あきない世傳金と銀10 合流篇(髙田郁 著)』の感想レビュー。
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あらすじ
呉服太物商でありながら、呉服仲間を追われ、呉服商いを断念することになった五鈴屋江戸本店。
だが、主人公幸や奉公人たちは、新たな盛運の芽生えを信じ、職人たちと知恵を寄せ合って、これまでにない浴衣地の開発に挑む。
男女の違いを越え、身分を越えて、江戸の街に木綿の橋を架けたい──そんな切なる願いを胸に、試行錯誤を続け、懸命に精進を重ねていく。
両国の川開きの日に狙いを定め、勝負に打って出るのだが・・・。
果たして最大の危機は最高の好機になり得るのか。
五鈴屋の快進撃に胸躍る、シリーズ第十弾! !
感想
■木綿の染め良い出来
木綿の藍型染めが良い具合に出来ている。
噂だと、侍が着る服も似たようなことをしているらしいけど、
力造が思いついたのと違う方法で異常に手間暇がかかる高価なもの。
競合にはならないと幸は判断した。
■菊栄江戸到着惣次と対面
菊栄とお梅が初の江戸入り。
菊栄は江戸出店のために毎日物見遊山に出かける。
そんな折、両替商にも挨拶しておこうということで、
幸と菊栄とで五鈴屋が懇意にしている両替商に出向くと、
そこには惣次がお客として来ていた。
目線で火花を散らす二人だけど態度に表すことは無く挨拶をかわす。
■反物の扱い方断ちかた
お客の声を聞いて商売のタネを見つけた幸、
早速、木綿反物の扱い方、断ち方、縫い方教室を始めた。
今まで、古手を買うだけだった人々は反物の扱い方を知らないので、
欲しくても加工のやり方が分からずなかなか手を出すことができなかったのである。
そこで反物扱い教室を開き、加工のやり方を学ぶと、
息子、娘のために新品の衣装をあつらえようと、売り上げが伸びたのであった。
■お梅と梅松
お梅と梅松の仲がなかなか発展しない。
まわりがやきもきする中、お梅が子猫を拾う。
小梅と名付けられた子猫は梅松に飼われ、
小梅の世話をする!
とお梅は足繁く梅松の元へ通うのだった。
■菊栄、江戸に残る
鉄助、菊栄、お梅が江戸に日が近づいてきた。
菊栄は江戸出店のため江戸に残る旨を皆に伝える。
薄々気づいていたものあり、
驚くものあり。
幸は前々から聞いており、
三者三様の受け止め方をしたのであった。
菊栄も一緒に大阪に戻ると思っていたお梅は狼狽する。
梅松が気になるお梅は大阪に戻るべきか心が揺れるが、
結局なにも言い出せず、帰郷当日を迎える。
お梅は朝イチで「小梅の世話は私がしなくちゃ!」
という理由で江戸に残ることを皆に宣言したのだった。
■菊栄、三嶋屋を買う
五鈴屋の隣、提灯屋の三嶋屋が引っ越すため、
空き店舗を五鈴屋に買い取ってほしい。
という打診をうけていたけれど、
絹の取り扱いを止め、木綿事業も先行きが見えない中、
買取の資金を捻出することができなかった。
そんな中、菊栄が買い取りに名乗りを上げる。
資金は潤沢にあるらしいが、
菊栄の商いを始めるには店舗が大きすぎると感じた幸は、
もっと手狭な場所から商売を始めるべきだと進言するが、
我に秘策あり。
と、三嶋屋を買い取ってしまうのであった。
■型彫師、誠二江戸へ
梅松と同郷の誠二が地元の扱いに耐えられなくなり、
江戸にやってきた。
着の身着のまま、死にかけの状態で五鈴屋に保護された誠二は、
梅松の看病により無事、快方に向かった。
■誠二回復して型を作る
誠二は、梅松に出来ない新しい型彫りができる。
快癒した誠二は早速、鈴と紐が描かれた型紙を披露する。
その味わいがなんとも涼しげで、五鈴屋の面々を驚かせる。
その出来栄えに、
型の絵柄を考える賢輔は重圧を感じ、スランプ気味になってしまう。
■千代友屋から型紙を買う
裁断前の大きな型紙の方がより良い画がかけそう。
ということが分かり、手分けして裁断前の型紙を探すものの伝手が見つからない。
そんな折、以前から縁のあった、千代友屋が火事の被害にあってしまった。
店舗は無事だったものの、商売の紙が水で使い物にならなくなってしまった。
幸は何か手助けは出来ないかと、紙を売値のまま大量に買い、
臨時の寝具を貸し出した。
そのお礼として、千代友屋が裁断前の型紙を探し、売ってくれた。
■花火柄完成&売り出し方のアイデア会議
スランプ気味だった賢輔だったが、
「自分が着てもらいたい人の気持ちを思い画をかけ」
との助言に従い、見事花火柄を完成させる。
そこからは売り出し会議。
木綿の花火柄を売るにはやはり夏に売り出すべき。
今、季節は冬。
来年の夏に向けて無策な振りを続け、音羽屋を騙し続け、
一気に売り出すことにした。
■三嶋屋を五十鈴屋へ
花火柄の浴衣を売りに出せば勝算はあることを幸は確信していた。
しかし、供給する店舗の大きさと在庫置き場が心もとない。
悩んでいたところに、菊栄から三嶋屋を買わないか?
と切り出される。
支払いは三年分割で良いとのこと。
幸はありがたくその提案を受け入れた。
菊栄の商売は、店舗の端っこでこじんまりと始める予定。
■湯屋に着て貰う
五鈴帯、小紋柄は人形浄瑠璃や歌舞伎を利用して宣伝したが、
今回の浴衣は湯屋の番台に着てもらうことにした。
庶民の着るものなので生活に紐づいた場所で宣伝しようと考えたのだ。
湯屋面々は、川開きの日に船を借りて湯屋をアピールするそうだ。
五鈴屋はそこに浴衣を着てもらえることを取り付け、
制作に取り掛かる。
必要枚数500着。
着つけ教室や反物扱い教室のお客さんに声をかけ、
アルバイトとして雇ったのであった。
■花火柄浴衣売り出し
船に乗った500人が同じ浴衣、同じ柄というのは花火柄浴衣のデビューは鮮烈だった。
打ちあがる花火と、花火柄、その光景は目に焼き付いているけどどこで売っているかわからない。
探し回っても分からず、湯屋にいくと番台は同じ浴衣を着ているではないか!
話を聞くと、浅草の五鈴屋で取り扱っているとのこと。
翌日から五鈴屋は数か月賑わい続けるのであった。
■仕立屋も始める
アルバイトで雇っていた人数人に残ってもらい、購入した反物の仕立屋も始めた。
自分で仕立てられない人が反物を購入する理由にもなり、売り上げはさらに伸びるのでった。
感想の感想
9巻で木綿の柄付けに成功した!
よっし、10巻では早速売り出しだ!
と思ったら、売り出すのは10巻最後・・・
その弓を引き絞っていくような引きのせいでページをめくる手が止まらない。
最後、引き絞った弓から放たれた矢はカタルシスへと一直線。
良いことも悪いことも人の縁も全部つながっているこのラスト。
まさに合流という感じだったね。
みをつくし料理帖が10巻で完結だったので、
なにを勘違いしたのかあきない世傳も10巻で終わるものだと思ってた。
まだまだ幸の五鈴屋の物語が読めるのが楽しみです。
ねぇねぇ、11巻マダー?