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【明日の記憶】若年性アルツハイマーと戦う中年の仕事と家族の物語【荻原浩】

小説『明日の記憶』ハードカバー表紙

『明日の記憶(荻原浩 著)』の感想レビュー。

読んだのはハードカバー。
小説『明日の記憶』ハードカバー表紙

これ表紙なんだけど、タイトルと表紙絵でどんな物語を思い浮かべますか?

あらすじ

中堅広告代理店の営業部隊部長、佐伯雅行49歳。

仕事は、大きなクライアントとの契約案件を抱え、
プライベートは、娘の結婚が決まる。

と充実した日々を過ごすも、
突如、物忘れが激しくなり、めまい、幻覚といった症状が出るようになった。

妻に促され、病院を訪れ診察を受けた結果、医師から若年性アルツハイマー病という診断を下される。

調べれば調べるほど治ることはない。
症状は着実に進行しいく。

大口の仕事、娘の結婚式、忘れたくない。
アルツハイマーに苦しむ中年の物語。

感想

本著は、若年性アルツハイマーになった主人公・雅行が、
仕事、家庭、趣味、三つの居場所を通してアルツハイマーと向き合う?抗う?物語。

忘れないために書き始めた日記(備忘録)も難しい漢字が減っていく。
確実に何かが失われていいく感覚。
作品を通して徐々にアルツーが進行していく描写が恐ろしい。

仕事とアルツハイマー

20年以上務めた中堅広告代理店。
雅行はCM制作部隊の部長職。

アルツハイマーであることが発覚してから
必死にメモを取って忘れないように、周りに悟られないようにする雅行の姿は、
部長まで登り詰めただけはある。

僕は、雅行と会社の関係性にはそこまで悲壮感を感じなかった。
損害を出す前に辞めて欲しいっていうのは会社職場側としては真っ当な意見だしさ。
辞めないなら閑職に移動させるのも無理やりクビにしないだけ良心的でしょ。

逆に周りに迷惑にかかるまえに早く辞めたほうがいいんじゃ?
なんて思ってしまう。

異動した後も、部下が訪ねてくれる辺りは、
真摯に仕事していた雅行の人柄が評価されたようでうれしい。

家庭とアルツハイマー

親が難病の子にするように、
アルツハイマーに効くと聞けばどんなものでも試そうとする妻。

医療じゃ完治できない。
けど、どうにかしたい。
その心の隙間を狙う奴はどこにでもいる。

まさか、
高額民間医療編とか、
新興宗教編に突入か!?
と思ったけど悲惨な結果にならなくてよかった。

夫と添い遂げようとする妻・枝実子(えみこ)、美しい。
本著はアルツハイマーの第一段階で閉幕する。

その後を考えると心の美しさはどこまで保てることができるのだろう?

趣味とアルツハイマー

読んでてすごく苦しくて、
ピークは、ハードカバーで190ページあたり。

アルツハイマーであることを信頼できる人に告白した雅行。
相手は親身になって聞いてくれる。
ああ、この人には打ち明けてよかったなーって。

雅行はホッとする。僕もホッとする。
身内以外にも拠り所は必要だよ。

その後も何気ないやり取りは続いていく。
相談して良かった。

雅行「そういえばこの前のお金、まだ払っていませんでしたよね?」
「はい、まだいただいてません」
・・・え?
払っているんだよ・・・
お金、払っているんだよ!!

素直に支払いに応じる雅行。
これ、今後も搾取され続けるやつじゃん!
・・・救いは無いのですか?

感想の感想

自分で自分の世話が出来なくなったら死にたいな・・・
祖父母の介護の手伝いをしていると思うことがある。
こんなみじめな姿を晒してまで生きたくない。ってさ。

それはアルツハイマーも同じで、
自分が自分で無くなる前に自分でケジメを付けたい。

なんて思うけど、実際は自殺なんてできないんだろうなー

本著も終わりまでひたすらに病状が悪化していく。
最後、記憶の忘れてはいけない一線を越えてしまったのに
なんで綺麗に終われるんだろう?

オススメ!

表紙について

もう一度ハードカバーの表紙を。

小説『明日の記憶』ハードカバー表紙

作品内容を一切知らない状態で読んだので、
読書前、読書後で表紙の印象がぜんぜん違うものになった。

COMMENT

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