小説『火のないところに煙は(芦沢央 著)』の感想レビュー。
読み方は、芦沢央(あしざわ よう)
もくじ
あらすじ
「神楽坂を舞台に怪談を書きませんか」突然の依頼に、作家の「私」は、かつての凄惨な体験を振り返る。
解けない謎、救えなかった友人、そこから逃げ出した自分。「私」は、事件を小説として発表することで情報を集めようとするが―。
予測不可能な展開とどんでん返しの波状攻撃にあなたも必ず騙される。
一気読み不可避、寝不足必至!!読み始めたら引き返せない、戦慄の暗黒ミステリ!
感想
物語は、小説新潮から『怪談』をテーマにした短編小説の依頼を受け、過去相談された怪談じみた内容を掲載するところから始まる。
最初の怪談『染み』が呼び水になり、主人公の元には様々な怪談話が舞い込むようになり、短編小説は連載という形をとるようになる。
連載は好評で単行本化されることになり、連載していた怪談話を校正していくうちに気づく違和感。
「この怪談話たちは、偶然自分の手元に来たものなのだろうか・・・?」
染み
大学時代の友人、瀬戸さんに紹介された角田さんの話。
付き合っていた男性との相性を占い師に占ってもらったら、
「いますぐ別れなさい」という結果に。
その結果に、彼氏が激高したものの関係は継続。
なんだかんだで結局は分かれてしまうんだけど、その後彼氏は事故死した。
それから、角田さんが担当する仕事の印刷物に彼氏からメッセージが来るように・・・
そのメッセージが本の背表紙
血の染みみたいなのに「あやまれあやまれあやまれ・・・」と細かくびっしりと。
こんなのが毎回、自分の担当印刷物のみに浮き出てくるとか怖すぎィ!
お祓いを頼む女
『染み』を読んで連絡をくれた同業者の君子さんから聞いた話。
自分たち一家が祟られていると勘違いしている女性から相談をされる。
君子さんは論理的にそれを紐解き、女性に説明し、女性は安心して帰っていった。
ただ一つ、腑に落ちない点があるけれど・・・
一部、『染み』と同じような現象がこの話でも起きてる。
この本は、そういう話じゃな・・・?
妄言
同業者で怪談系が得意な榊さんが話してくれた内容。
中古だけど条件を満たした一軒家を購入した夫婦。
近所づきあいも上手にできそうだ。
ところが、隣家のおばはんが
「旦那は浮気している!」
「人も殺してる!」
などと妻に無いことばかり吹き込んできて夫婦仲は最悪に。
それにプッツンした旦那がおばはんを・・・
いきなりテイストが変わった話。
実はおばはんには特殊能力があったんだけど上手く扱いきれなくて・・・
みたいな幕切れ。
特殊能力のせいで、怪談みたいな内容に。
助けてって言ったのに
ネイルサロンで働く智世さんから聞いた話。
智世さんは義実家に入ってから嫌な夢を見るようになった。
それは家が火事になっていて逃げ遅れている場面。
不定期に見る夢は見るたびに場面が進行していて・・・
その悩みを家族にいうと義母も一時期その夢を見ていたそう。
義母「あなたの夢はどこまで進んでいるの・・・?」
智世さんの夢は・・・
旦那の劣等感を満たすために犠牲になった智世さん・・・
旦那もここまでになるとは思ってない辺りが誰も救われない話。
誰かの怪異
千葉県の大学にかよう岩永さんから聞いた話。
岩永さんは四月から大学の近くで一人暮らしを始めた。
暫くして妙な現象が起きるようになった。
女性の髪の毛が排水溝に詰まっていたり、
テレビが突然ついたり、
鏡に女性がうつっていたり。
怖くなった岩永さんは、除霊を依頼するも、
貼って貰ったお札は剥がされ、
盛り塩は崩された。
以後、現象は酷くなる一方で・・・
盛り塩崩すほどの霊の力!
そういったバリアが壊されると状況が悪化する・・・
霊の仕業かと思いきや、母の愛が原因でした!
他の話とはちがってほっこり系。
禁忌
単行本書下ろしの話。
「『染み』をはっぴょうしてから怪異の話を聞く機会が格段に増えたって書いてあっただろう。
他にもいろんな話を聞いたんじゃないのか?
その中で、どうしてこの話を書くことにしたんだ?」
たしかに、他にもいろんな話を聞くようにはなった。
その理由はおそらく単純だ。
「今はどんな話をかいているのか」という世間話に「階段を」と答えるようになったため、その流れで
「怪談と言えば、こんな話を聞いたことがある」というように打ち明けてもらう機会が増えたからだ。
集めた話の中からたまたま選んだ怪談たちにもしかしたら共通項が・・・?
そして、各話での共通項にかかわった人たちの顛末が語られ、
その影響は主人公にも・・・
といったところでこの話はおしまい。
何も解決していないし、共通項も予測でしかない。
でも、この現象に説明がつかないし・・・
軽いホラー的な終わり方なのでした。
感想の感想
実際の雑誌掲載日を物語の演出として使っている面白い構成。
ホントにあった話!?って思ったけど、無事作家活動は続いている模様。ヨカッタヨカッタ
こじつけさを感じるけど、一連の怪談の裏に同一人物の影がちらほら。
「どんな些細な事でも私を疑うやつは全て罰されるべき!」
とか、自己顕示欲の塊すぎるだろ・・・
そんなヤツが他人を呪えるほどの能力を持った日にゃろくなことになりませんな。
一話一話サクサク読めて、あっという間に読み終わりました。
人間、どこで恨まれるかわからないってのが怖いな。って思わせてくれる作品です。