『滅びの前のシャングリラ凪良ゆう』
もくじ
あらすじ
「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」
学校でいじめを受ける友樹、人を殺したヤクザの信士、恋人から逃げ出した静香。
そして―荒廃していく世界の中で、四人は生きる意味を、いまわのきわまでに見つけられるのか。
圧巻のラストに息を呑む。滅び行く運命の中で、幸せについて問う傑作。
感想
突如、一月後に地球へ恐竜滅亡クラスの隕石が落ちてくると報道された。
人々は当初は信じていなかったものの、世界中で報道されたことから皆、残り一ヶ月の命を意識するようになる。
そして、略奪が暴動が始まり、荒廃していく世界の中、舞台は日本。
四章仕立て、四人の視点で人類最後の一月が進行していく。
一人目:江那友樹
17歳、小太り母子家庭。
父親は友樹が小さい頃に他界している。
柔和な性格で同級生にイジメに近いパシリな扱いを受けていた。
同級生にイジメられている間は妄想の世界に逃げ込み、毎日世界が滅べばいいと思う毎日。
ところが、本当に世界が滅ぶことになろうとは。
地元、広島で友樹は残り一月を過ごすのだろうと漠然と考えていると、
憧れの同級生、藤森さんが東京に行くという。
友樹は小学校の頃の約束を思い出し、藤森と一緒に東京を目指そうとするが、
イジメの主犯格井上を始め男子三人が藤森と一緒に上京するという。
友樹は出鼻を挫かれたものの、藤森の後を付け一緒に上京する。
しかし、新幹線は途中で止ってしまい、徒歩で向かうハメに。
友樹は途中下車し、藤森を探そうとするとそこには藤森に襲い掛かる井上たちがいた。
友樹は井上を殴り殺してしまう・・・
二人目:目力信二
冴えないゴロツキ。
兄貴分からライバルヤクザの幹部を暗殺してほしいと依頼された。
幹部は愛人の娘の誕生日に無防備になる。
公園デートの真っ最中、公衆トイレの中で幹部を射殺する。
幹部の愛人からどうせ一月で全員亡くなるのにわざわざ殺さなくても・・・
と抗議される。
最後の一月、クズな人生だった信二にも唯一愛する女性がいた。
どうせ最後なんだからと、役所で住所を調べ会いに行くことにする。
三人目:江那静香
友樹の実母。
元旦那のDVにより、夫から逃げ出し女手一人で友樹を育ててきた。
暴力を振るわれていたけど愛していた夫と再会し、友樹を迎えに東京へ向かう。
最後は、家族全員で過ごすことができた。
四人目:Lico
売れっ子歌手。
しかし、自分がやりたい音楽ではなく、プロデュースされた偽りの自分。
恋人兼プロデューサーは他の歌手にお熱。
そんな環境が許せなくて咄嗟にプロデューサーを殴り殺してしまった。
そんな中、一月後に隕石衝突。
何もかも失った私にできる事っていったい?
それは、滅亡の瞬間にライブだよぉッ!!
感想の感想
世界があとひと月で滅ぶとして、ここまで暴力的になれるかなぁ?
なんて自問自答してしまう。
自分がならなくても周りが暴力的になったら対応するために自分も暴力的にならざるを得ないのかな?
そしてそのままエスカレートしていって・・・
最後、隕石の衝突描写は無いんだけど、余韻が残る終わり方。
各々の思いを持ちながら最後の時を過ごす。
自分だったら・・・
そう考えさせられる作品でした。