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【神様のカルテ】現役の医者が書いた医療小説【夏川草介】

小説『神様のカルテ』表紙

小説『神様のカルテ(夏川草介 著)』の感想レビュー。

現役の医者が描いた『医者同士の権力闘争』をつづった物語。
ではなく、地域医療の現場の過酷さを描きつつも、優しい気持ちになれる本。

あらすじ

主人公・栗原一止(くりはらいちと)は、信州松本にある本庄病院に勤務する内科医。
彼が勤務している病院は、地域医療の一端を担うそれなりに規模の大きい病院。
24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。
自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。
そんな病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。
周りから医局行きを勧められ、自分も先端医療に興味がないわけではない。

医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れる。

感想

作者の夏川先生は現役の医者で、本作の主人公、一止と同じ地域医療現場の経験がある人。
なので、内容が当人の普段考えている苦悩や、改善すべきところが出ている。

本編は、三つの短編で構成されていて、

どれをとっても、
『地域医療と命』、『友情と恋愛』、『医者となんぞ?』
などのテーマが織り込まれている。

実際、地域医療ってこんなに大変なのかね?
何日も泊まり込みとか、24時間戦えますかとか。
他人のためにそこまで頑張れる気がしない薄情な僕がいる。

それができるからこそ、一止には人が集まるんだろう。
登場する同僚たちもそれぞれ信念があって過酷な現場で頑張っている。
アパートの住人たち世間一般からみたら落ちこぼれと言われるだろうけど、
不思議なキャラクター達がそれぞれ悩みながら生きてる。
なにより、伴侶のハルがかわゆす。

小柄ながら、
山岳カメラマンで、20kgの荷物を担いで年中世界中の山を登っている。
気が利く。
常に敬語で話す。

たまらんキャラクターじゃないですか!

そういったコミカルなキャラクターたちが立ち回るお陰で、
人の死や医者の苦悩が前面に出すぎない作品になっている。

それでも、医療の現場ということで、死は身近にあるんだけどね。

僕は30代なのでまだ老衰には程遠いけど、いつかは死ぬんだよな。
死についても考えされられる一冊。
現場をしる医者+エンターテイメント=最強の小説

オススメ

好きなセリフ
医療の現場では患者の家族が「できることは全てやってくれ」ということがある。
~中略~

稚拙な医療レベルの時代であれば、それでよかった。
だが今は違う。
死にゆく人に、可能な医療行為全てを行う、
ということが何を意味するのか、人はもう少し真剣に考えねばならぬ。
「全てやってくれ」と泣きながら叫ぶことが美徳だなどという考えは、いい加減捨てねばならぬ。

難しいところだよな・・・
僕は、本人が望むなら延命治療は不要派。
本人が答えられない状況だったら・・・
そこまでになる前に意思疎通しておきたいな。

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