小説『教団X(中村文則 著)』の感想、レビュー
あらすじ
ふたつの対立軸に揺れる現代日本の虚無と諦観、危機意識をスリリングに描く圧巻の大ベストセラー!
突然自分の前から姿を消した女性を探し、楢崎が辿り着いたのは、奇妙な老人を中心とした宗教団体、そして彼らと敵対する、性の解放を謳う謎のカルト教団だった。
二人のカリスマの間で蠢く、悦楽と革命への誘惑。
四人の男女の運命が絡まり合い、やがて教団は暴走し、この国の根幹を揺さぶり始める。
神とは何か。運命とは何か。絶対的な闇とは、そして光とは何か。
宗教、セックス、テロ、貧困。今の世界を丸ごと詰め込んだ極限の人間ドラマ! この小説には、今の私たちをとりまく全ての“不穏”と“希望”がある。
感想
なるほどな。って思う言葉が多いんだけど、なんかごった煮という印象。
ごった煮すぎて主張があっちいったりこっちいったり、なんか読みづらかった。
興味のあるテーマだと読書ペースが上がり、興味が無いテーマだと読むのがキツイ。
分解して、それぞれのテーマで一冊ずつ深掘りして書いていけば面白そうなのにな~
ごった煮で500ページ超え。そら、賛否両論になりますわ。
印象に残った言葉
「結局、そのおばあさんの症状はストレスだったんだよ」
「除霊、というのも同じ性質だと思う。
もちろん本当に除霊する人もいるだろうけど、
体内にあるストレスの塊に一つの人格を持たせて、霊であるとして、
それを除去したと依頼者本人に納得させる。
・・・体の不調や精神の変調がストレスからきていた場合、体調はよくなるよ」
思い込みでストレスになって、思い込みで治る。
色んな事に当てはまりそう。
世界に不満があるなら、世界を変えるか、自分の認識を変えるしかない。
他人を変えるより、自分を変える方が楽だし確実。
常々思っております。
そうすると、自分を良くしようと思えるし、
他人に期待しなくなれるよ!
国家には死刑が必要だ。
死刑、つまり殺人という行為により”法”そのものを強靭化させることができる。
なんか僕の中でタイムリーな話。
犯罪を減らすには、刑罰を重くすればいい。
なんて言葉もあるくらいだし・・・
「今の日本はかつてないほど格差社会になっているが、なぜ顕著な犯罪増加とならないかわかるか?
様々に理由はあるが、一つはインターネットのお陰だ。
インターネットが、人々の不満のはけ口になってくれている。
・・・素晴らしい発明だよ。
これによって、社会にはびこる不満は少しであるがガス抜きされている」
不満をガス抜きしてるから犯罪が起きないのと同時に、
ガス抜きされているからプラス方向の努力にエネルギーを向けられないとも言える。
第二部 19
ハードカバー413ページ~
靖国神社と第二次世界大戦の日本についてのやりとり
長いので割愛。
”第二次世界大戦はしかたなかった”勢に対する反論。
この部分は面白かったなぁ
人間とは自分を善人と思いたい種族であり、
世界とは無関心の悪によって成り立つ。
干渉しないかわりに、救わない。
世界(他人)ってほんとにこっちのことに対して無関心だよな~
神に祈る人間達を私は時折微笑ましく眺めた。
たとえば、スポーツ競技で神に祈るプレイヤー達。
飢えて死ぬ子供たちを無視し続ける神が、選手の成否に関心を持つはずがない。
信じる神がいる人はどう思うんだろう?
誰かの人生を参考にするのは別にいい。
影響をうけることだって。
でも比べ過ぎては駄目なの。
ねえ、いい?よく聞いて。
他の人と比べることなんて、どうだっていいの。
大事なのは、目の前に出現したその自分の人生を歩くってことなの。
他人と比べるなんて無意味。
それがどんな人生であっても、問題は、それをどう生きるかなの。