【みをつくし料理帖10】【天の梯】感想レビュー【高田郁】

みをつくし料理帖シリーズ『天の梯（高田郁　著）』の感想レビュー。

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あらすじ

『食は、人の天なり』－－－
医師・源斉の言葉に触れ、料理人として自らの行く末に決意を固めた澪。
どのような料理人を目指し、どんな料理を作り続けることを願うのか。
澪の心星は揺らぐことなく頭上に瞬いていた。
その一方で、吉原のあさひ太夫こと幼馴染みの野江の身請けについて懊悩する日々。
四千両を捻出し、野江を身請けすることは叶うのか! ?
厚い雲を抜け、仰ぎ見る蒼天の美しさとは! ?
「みをつくし料理帖」シリーズ、堂々の完結。

感想

結び草～葛尽くし～

日照り続く中、翁屋の吉原復帰が遂に決まった。
翁屋が吉原に戻るタイミングで澪もつる家を出て行く。
つる家の面々は澪が一柳に勤めるものだと思っていたのに、自前で店を構えて商いをすると宣言した澪に皆は困惑する。
澪はあさひ太夫を見受けするまでどこにも属さない腹積もりなのだ。
鼈甲珠を翁屋に卸す算段をつけた澪は、さらなる商品開発を目指す。
久しぶりに会った美緒は、とてもやつれていた。
実家が火事になり、奉公人無しで子育てと店の再建に追われる美緒を元気づけるために葛を使った料理を創作する澪だった・・・

とうとう独り立ちした澪。
独り立ちしても周りから受けた恩はわすれずに疲れている美緒を料理でもてなす。
環境は変わっても根底の部分が変わらないのがいいよね。

出張大関～親父泣かせ～

山芋は灰汁が強いので調理前に灰汁取りをしないとすぐに黒くなってしまう。
しかし、政吉は灰汁をとらずにそのまますりおろしたほうが美味いと思っていた。
料理は見た目も大事。
一柳ではどす黒くなった山芋は評判がよくなかったが、
物は試しということでつる家で提供してみたところ大人気商品に。
そして、その年の料理番付で出張大関の地位を射止めたのだった。

一方の澪は、鼈甲珠の他に下級武士のためにお弁当を作ることになった。
16文でどこまでできるか？
久しぶりの制限のかかった調理に腕がなる澪。
下級武士たちから「美味しかった」と言われるうれしさを久しぶりに噛みしめるのであった。

料理を通して小松原様と繋がっているという会わないけどどこかで繋がっているぞ。という演出が良いね。
政吉も一度は否定された自慢の料理をちゃんと評価されてる。
美味いものは見た目があれでも美味い！

明日香風～心許り～

一柳の柳吾が突然投獄された。
原因は一柳に忘れられていた『酪』という牛乳を加工した食品らしいが・・・
そんな時、澪は天満一兆庵と佐兵衛を陥れた富三と再会する。
富三が言うには、采女宗馬が牛乳を秘かに手に入れ、佐兵衛と一緒に『酪』を作り、大金を儲けていた過去があること。
酪作りから抜け出そうとして、遊女殺しの冤罪をなすりつけられたことを語った。

柳吾を助けるためには、采女と佐兵衛の過去を話して解放してもわらなければならない。
それは、佐兵衛が投獄さてしまうことを指す。
悩む澪の元に、全ての佐兵衛が訪れ、全ての罪を告白し柳吾を解放する旨を伝えにやってきた。
そして、柳吾は戻ってきたが、佐兵衛は戻ってこなかった・・・

登龍楼との決着、
佐兵衛が一兆庵を潰して逃げた理由、
からの料理人復帰、
と一気に風呂敷を畳にきた印象。
采女宗馬とは、料理で決着をつけて欲しかった気もするけど、
悪事を働いた人間には相応しい最後だったね。

空の梯～恋し粟おこし～

あさひ太夫がチラシに載り幻の存在が現実になってしまった。
そうなると権力を持った金持ち達があさひ太夫に会わせろ！と迫って来るわけで・・・
対応に追われる翁屋はあさひ太夫の見受けを早めることを決定。
その話を摂津屋から聞いた澪は短時間で四千両を工面しなければならなくなった。
短時間でそこまでの大金を用意出来ない澪は知恵を絞るが・・・

最終話なのに四千両の目途が立っていない。
このままじゃ、私たちの戦いはこれからだ！エンドまっしぐらじゃん！
かと思いきや、そんな方法があったとは・・・策士だねぇ

野江の幸せを第一に考えた選択、いいね。
ちゃっかり、源斎先生も大阪へ。
みんなのこれからを想像できる良い終わり方だった。