小説『光圀伝(冲方丁 著)』の感想レビュー。
戸黄門こと水戸藩2代藩主徳川光圀の生涯を描いた歴史小説。
あらすじ
なぜ「あの男」を自らの手で殺めることになったのか―。
老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎で、誰にも語ることのなかったその経緯を書き綴ることを決意する。
父・頼房に想像を絶する「試練」を与えられた幼少期。
血気盛んな“傾奇者”として暴れ回る中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。
やがて学問、詩歌の魅力に取り憑かれ、水戸藩主となった若き“虎”は「大日本史」編纂という空前絶後の大事業に乗り出す―。
生き切る、とはこういうことだ。
誰も見たこともない「水戸黄門」伝、開幕。
感想
光圀公が若いころ、自分の中にある欲求(エネルギー)の使いどころが見いだせなくて、毎晩辻斬りしてた。
そんなぶっ飛んだエピソードを持つ御仁。
欲求は最終的に知識欲、学習欲に昇華されることになるけど、この部分だけでも光圀公のヤバさ(凄さ)が伝わってくる。
天地明察が面白かったのでこっちにも手をだしたけど、物語の方向性?が違う。
天地明察のつもりで読むと重たいストーリーに胃もたれするかも。
それでも、師や友人、部下たちに恵まれ名君に成長していく物語は見どころ抜群。
印象に残っている言葉
17歳ごろの徳川光圀(後の水戸黄門)が宮本武蔵に戦(戦争)を教えてくれ。と聞いたことろ。
樽に鼠のつがいを数匹入れてみろ。
という助言を実践し、数十日後の樽を覗いたときの話。
様々な要因で、大半が子を作れずに死ぬ。だが、樽の中のネズミには、天敵がいなかった。
餓えもなかった。病気にもならなかったらしい。そして代わりに空間がなくなった。
光圀が見たときは、二十匹を超す大人のネズミがいた。子ネズミはもっと多い。
そして目も開かぬ生まれたばかりのネズミが、わらわらいた。それら全て、食らい合い、犯し合っている。
ばらばらに裂かれたネズミの断片が餌に混じって散らばっており、満腹になったものが、殺し合いするものの横で眠りこけている。
そしてそのそばでは、躍起になって子ネズミを犯す大人のネズミたちがいた。
殺す必要などなかった。餌もあった。周囲は仲間だけで、敵はいなかった。
ただ自分の居場所を確保し、広げ、己の血筋を増やすためだけに殺しあっていた。
兄が、嫌悪もあらわに言った。
「父ネズミが生まれた娘を犯して子を生ませる。母ネズミが産んだ子を食う。兄弟姉妹がお互いを引き裂き合うか、犯し合う。
そうして子が増え、その子がまた子を産み、いっそう激しい殺戮が起こる。(中略)」
かっと目を見開いて、その凄惨な地獄を凝視している光圀は、
---戦国の世の人間もそうだ。
まさに武蔵がこの場にいて、そう告げられた気持ちだった。
ゲェーッ!!これが、地獄か・・・
映像よりも文字のほうがキツイ気がする。
実物を見てみたい。と思うけど、実践する勇気がでない。
実際に覗いたらどんな感想を持つのだろう?