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【天地明察】挫折を繰り返し、日本の暦に挑み続けた男たちの物語【冲方丁】

小説『天地明察』単行本表紙

小説『天地明察(冲方丁 著)』の感想レビュー。

日本の暦を作った男たちの物語。
再読なんだけど、何回読んでも熱くなれる。

元号も時の流れ。
令和一発目の読書にはグッドチョイス?

あらすじ

徳川四代将軍家綱の治世、ある「プロジェクト」が立ちあがる。
即ち、日本独自の暦を作り上げること。
当時使われていた暦・宣明暦は正確さを失い、ずれが生じ始めていた。
改暦の実行者として選ばれたのは渋川春海(しぶかわはるみ)。
碁打ちの名門に生まれた春海は己の境遇に飽き、算術に生き甲斐を見出していた。
彼と「天」との壮絶な勝負が今、幕開く―。
日本文化を変えた大計画をみずみずしくも重厚に描いた傑作時代小説。

感想

半生を使って改暦という一大事業に挑んだ男の話。
碁打ちの名門安井家に生まれた安井算哲は真剣勝負の出来ない今の碁に不満を持ち、渋川春海と名乗っている。
算学が好きで、それが高じて人との出会い、日本全国の天文観測に出て、ゆくゆくは改暦の事業を担っていく。

春海(はるみ)より、春海(しゅんかい)って度々読みそうになる。
碁打ちのイメージとしてね。

性格は春海(はるみ)って感じ。
温厚な性格ながら、算学にかける熱意は相当のもの。
それゆえに、周りから期待されては、公私ともに精神的にメッタメタにされる。挫折する。
けど、周りが助けてくれて立ち直る。

その過程がね、たまらんのよ。
これぞ、ビルディングスロマン(教養小説=成長物語)!
オススメ

改暦事業に向けて

本小説の主軸の改暦事業なんだけど、
単行本は総ページ474で改暦事業に任命されるのが294ページ目。

前半の半分以上が人物像の掘り下げに使われている。
掘り下げだけじゃなくて、改暦に関わるための実績づくりも絡んでるんだけど。

掘り下げを丁寧に行うことで、春海に対して非常に感情移入しやすくなる。

「まことに・・・私で、よろしいのですか」

すっと正之の背が伸びた。
「安井算哲よ。天を相手に、真剣勝負を見せてもらおう」

からん、ころん。
ふいに幻の音が耳の奥で響いた。
とっさにそれが何であるのか分からなかった。
わからないまま、強烈な幸福感に満たされていた。
いつか見た絵馬の群れの記憶がよぎった。
が、そうとはっきり認識する間もなく、
春海は、たまらず衝動的に座を一歩下がり、平伏し、

「必至!」
叫ぶように応えた。
反射的に口から出たそれが、碁の語彙であると遅れて気づいた。
正之が愉快そうに笑った。
「頼もしい限りだ、安井算哲」
それが父の名であるという意識が、初めて春海の心から綺麗に消えていた。

鳥肌もんですよ。

様々な算術

作中に出てくる馴染みのない算術たちを紹介。

・八算・・・割り算
・天元術・・・代数問題の解法
・勾股弦の定理・・・三平方の定理
・傍書法・・・代数

作中には図付きで数学の問題がいくつかでてくる。
腕に自信がある人は解いてみるのも面白い。
僕は・・・うん、読み飛ばしたよね。

好きな場面

名シーンはいくつかあるけど、
自分が読んでて一番楽しかったのは全国天測の旅。
建部おじいちゃんと伊藤おじいちゃんが良いキャラクターしているんだ。
年とっても、好奇心と行動力は忘れずに居たいよね。

伊藤「そうそう、次は安井さんもおやりなさいな」
建部「算術で、次なる北極出地を予測せよ」

春海「しかし、私の術は極めて未熟で・・・」
建部「何を申すか。こんなもの、まぐれがなくてはそうそうあたるものか」
伊藤「そうそう。途方もなく難しゅうございますからな」

春海「しかし、私では、術式でも答えでも誤りを犯すだけで・・・」
建部「それは良い。全霊を尽くして誤答を出すがいい」
伊藤「そうですそうです。遠慮なく外してください」

道中の建部、伊藤、この二人とのやりとりで春海がどれだけ救われたのか・・・
挫折は一人で悩んでても泥沼だよね。
手を差し伸べてくれる仲間がいることの素晴らしさよ。

総評

数学、政治、天文、歴史とテーマは小難しいけど、非常に読みやすい作品。
改暦事業の歴史的資料としてもそうだけど、
渋川春海の半生を描いた伝記的な側面も強い。

今でこそ当たり前にカレンダーを利用しているけど、
先人たちの努力のお陰なんだなぁとしみじみ。

天に手をかけるために努力した人々と、
日常の当たり前を再確認するための娯楽歴史小説!
オススメです!

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