小説『ライオンのおやつ(小川糸 著)』の感想レビュー。
あらすじ
人生の最後に食べたいおやつは何ですか――
若くして余命を告げられた主人公の雫は、瀬戸内の島のホスピスで残りの日々を過ごすことを決め、穏やかな景色のなか、本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者がリクエストできる「おやつの時間」があるのだが雫はなかなか選べずにいた。
――食べて、生きて、この世から旅立つ。
すべての人にいつか訪れることをあたたかく描き出す、今が愛おしくなる物語。
男手ひとつで育ててくれた父のもとを離れ、ひとりで暮らしていた雫は病と闘っていたが、ある日医師から余命を告げられる。
最後の日々を過ごす場所として、瀬戸内の島にあるホスピスを選んだ雫は、穏やかな島の景色の中で本当にしたかったことを考える。
ホスピスでは、毎週日曜日、入居者が生きている間にもう一度食べたい思い出のおやつをリクエストできる「おやつの時間」があるのだが、雫は選べずにいた。
感想
瀬戸内海の中の島にあるホスピス施設『ライオンの家』。
ホスピスとは、治療困難(主にガン)な病気の治療を諦め、
死を迎えるまでの日々を身体や心の辛さや痛みを総合的に和らげる緩和ケアのこと。
つまり、ライオンの家に入居している人々は、死を待つだけの人々。
そこに入居した雫も三十三歳の若さでガンのステージⅣを宣告されている。
作中の時間は二か月もたっておらず←!?
雫がライオンの家に来たタイミングでもう末期も末期だったんだな・・・
ライオンの家には一週間に一回、おやつの時間というものがあり、
入居者が食べたいおやつをなぜそのおやつが食べたいのか?
というエピソード一緒に投票し、ランダムで一枚開票しておやつの時間に提供されるというイベントがある。
雫はおやつの時間を通して入居者たちの事情を知っていく。
死を意識してから自分の半生を振り返り、記述されたエピソードはその人の本質を垣間見れる。
著者の母がガンになり・・・
母に癌が見つかったことで、わたしは数年ぶりに母と電話で話しました。
電話口で、「死ぬのが怖い」と怯える母に、わたしはこう言い放ちました。
「誰でも死ぬんだよ」けれど、世の中には、母のように、死を得体の知れない恐怖と感じている人の方が、圧倒的に多いのかもしれません。
母の死には間に合いませんでしたが、読んだ人が、少しでも死ぬのが怖くなくなるような物語を書きたい、と思い『ライオンのおやつ』を執筆しました。
おなかにも心にもとびきり優しい、お粥みたいな物語になっていたら嬉しいです。
誰でも死ぬ。
死ぬけど死を迎え入れることができる、怖くなくなるようにするにはどうすればいいのか?
その考えを持てるようになる本。