小説『六人の嘘つきな大学生(浅倉秋成 著)』の感想レビュー。
大学生の就活を扱った人が死なないミステリー仕立て小説。
あらすじ
初任給50万円をうたう、勢いのあるベンチャー企業、スピラリンクス。
5000人の応募から残った六人の男女は、最終選考のグループディスカッションに挑む。
グループディスカッションの内容次第で六人全員の合格もありえるということで、俄然燃える六人。
事前に集まり、対策を練り、飲み会を開き親睦を深めていく六人。
飲み会も終盤、スピラリンクスから一通のメールが届く。
「最終選考で採用するのは一人です」
愕然とする六人。
そして、当日。
グループディスカッションが始まった時、一通の封筒が出てきた。
封筒の中身は、各々に充てた罪の告白。
二時間半のグループディスカッション。採用される一人は一体誰なのか!?
感想
学生は履歴書を偽り、企業は業務形態を偽る。
就活なんてお互いの騙し合いなんだよなぁ
作品を通して、自分の就活時代を振り返り、当時の自分は内定が出なくて病んでたなぁ
なんて思い出す。
結局、採用された会社は5年ほど勤めて転職してしまった。
こんな仕事がしたい!なんて確固たる信念をもって就活している人ってどのくらいいるんだろう?
スピラリンクスに採用されたい!
と情熱を燃やす六人に嫉妬してしまうのであった。
なので、最終選考で封筒を忍ばせた犯人も自分が採用されるための小道具として利用したのでは?
なんて思っていたら、どんでん返しに次ぐどんでん返しでこういう落としどころになるのかぁ・・・
動機が変わると、犯人像にもしっくりくるなんて面白い構成だ。
月は常に表面だけで、裏を見せない。
裏は表よりもクレーターが凄いんだって。
人間も裏面は醜いのかもしれない。
けど、それも真実ではない可能性があるわけで・・・
酷い行動の裏にも実は理由があったりするのかな?
相手のことをもっとしっかり考えてみようと思うのであった。
就活という騙し合いの場で行われる議論ミステリー。
『十二人の怒れる男』の系譜を感じる作品。
『十二人の死にたい子どもたち』もそうなんだけど、
【十二人の死にたい子どもたち】安楽死をするために集まったのに、会場には部外者の死体が。どうする?どうする!?討論開始!!【冲方丁】
密室で議論しながら話が進む展開ってもしかしたら好きなのかもしれない。
そんなことにも気付かさせてくれた本作。
面白かった!オススメ!!
p.s.犯人は当てられなかったけど、パスワードは当てることができたぜ!