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【とんび】父親と息子がお互いに成長していく子育て奮闘記【重松清】

小説『とんび』表紙

『とんび(重松清 著)』の感想レビュー。

息子が3歳の時に母親が事故死。
そこから、父と息子の二人三脚が始まった。
友人たちに助けられ、息子は立派に成長する。
父子家庭の子育て奮闘記!

あらすじ

舞台は瀬戸内海に面した広島県備後市(市名は架空の名称)。
高度経済成長時代の1962年(昭和37年)、運送会社に勤務する28歳のヤスは愛妻・美佐子の間に息子・アキラが誕生し、生涯最高の喜びに浸っていた。
美佐子とともにアキラの成長を見守り、幸せな日々を過ごしていたが、ある日、ヤスが連れて行った仕事場でアキラを庇った美佐子が事故死してしまう。
ヤスはその日から幼くして父親に捨てられた悲しみと美佐子を亡くした後悔を乗り越えながら、アキラを不器用ながら真っ直ぐに育てていく。

感想

『とんびが鷹を生む』のことわざの『とんび』が小説のタイトル。
という訳で、父子家庭の父親、ヤスさんが主人公の小説。

このヤスさん、手が直ぐ出て、意地っ張りで、うじうじ悩む人なんだけど、
それがすぐ周りに透けちゃう裏表の無い性格の人。
仕事も一生懸命なので、仕事仲間や、友人たちにも恵まれ周りに愛されているマン。

物語は、ヤスさんと妻・美佐子の間にアキラが生まれてから、
アキラが結婚してヤスさんに孫が出来るまでのお話。

アキラが小学、中学、高校の頃は地元でのヤスさんの子育て奮闘記、
地元仲間や腐れ縁たちのアドバイスを聞きながら親子でぶつかりながらお互いに成長していく描写はとても良い。
ヤスさん、頑固すぎてアキラが理不尽な目に合っている時もあるけど、
中学部活時代など、身体を張ってトラブルを解決していく後ろ姿を見てると、反抗期もありつつ尊敬するんだろうな。

その後、アキラが東京に出て、大学、社会人と自立していき、寂しいけどアキラに意地を張っちゃうヤスさんが周りから宥められるのが面白い。
出ていったやつなんかしらん!ってスタンスなのに、東京で活躍するアキラの情報が入ると、周りに自慢するっていうね。

仕事におけるヤスさんみたいな人は今日日受け入れられないんだろうなぁ
殴られて学んでいくみたいなスタンスは何処から廃れたんだろうか?
厳しくしないと学ばないヤツも居ると思うんだ。

あとは、地の文がNHK朝の連ドラを彷彿とさせる語り口調。
不思議と15分区切りで物語を追っている気分になる。
ヤスさん、ヤスさん、って書いてあるからかな。

この本は、子育ての大変さを分かっている子育て経験者(特に父親)が読んだらすごく感情移入できそう。

オススメです!

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