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【夜市】ホラーレーベルだけれどファンタジー【恒川光太郎】

『夜市』ハードカバー表紙

小説『夜市(恒川光太郎 著)』の感想レビュー。
ホラーレーベルながらホラー要素薄めの不思議な短編二編収録。

もくじ

夜市

あらすじ

夜市とは、様々な世界とつながった異界の場所。
様々な世界から様々なものが出品される、市場。
こちらの世界では存在しない特効薬も、どこかの世界では存在しており、夜市には出品されていたりする。
中には、健康や寿命、才能なども売っている。

大学二年生の裕司は、小さい頃夜市に迷い込み、野球の才能と弟を交換してしまった。
弟を奴隷商に引き渡し、現実に戻ってみると弟の存在は無かったことにされていた。
唯一覚えているのは裕司だけ。

夜市は年中開催されているものの、裕司の世界と繋がるのは不定期。
とうとう、裕司の元に夜市の開催が知らされた。
裕司は弟を買い戻すために夜市へと乗り込んでいく---。

感想

夜市のルールが好き。
何か買わないと夜市から出れなかったり、
不正(嘘など)が無ければ
法外な値段でも夜市は許可される。
とか。

客はふらっと夜市に紛れ込む場合があるけれど、出品側はどうやって夜市で商品を売るんだろうね?
夜市に参加するきっかけが知りたい。

裕司に連れてこられたいずみにとっては、ハッピーエンドでもなんでもなく、
夜市で人生変わってしまった裕司と弟とは違い、ちょっとした非日常として描かれているのが不思議な読了感だった。

風の古道

あらすじ

人間にはなかなか知覚できない、人外の生物たちが利用する道、通称『古道』。
主人公が初めてそこに迷い込んだのは七歳の頃だった。
当時、迷子になり古道を使い帰宅できた主人公。
不思議だった体験はどこかいけない事だったようでもあり、人に話すこともなかった。
初めて人に話したのが12歳の頃。友人のカズキは「おもしろそう!」と反応し、
当時の道を伝い、二人で再び古道へ進入するものの出口を発見することができなかった。
迷った二人は、レンという古道を旅する人と出会い、出口を案内してもらうことになるが---

感想

木漏れ日がはいる舗装されていない並木道。という雰囲気を感じる古道。
夜になると人ならざるものが徘徊する危険なところだけれどちょっと歩いてみたいと感じてしまった。

本当ならわくわく古道体験記で終わるところが、死人がでてしまったからさぁ大変。
入り組んだ古道の先にある、人を蘇らせることができる『雨の寺』を目指すことになる。

その後、無事古道から帰還した主人公だったが、古道の記憶は曖昧になってしまった。
レンとの記憶も失ってしまったのだろうか?

終わり方が妙に切ないのだ。

これは成長の物語ではない。
何も終りはしないし、変化も、克服もしない。
道は交差し、分岐し続ける。
一つを選べば他の風景を見ることは叶わない。
私は永遠の迷子のごとく独り歩いている。
私だけではない。誰もが際限のない迷路のただなかにいるのだ。

主人公、心にぽっかり穴が空いているようだ。
頑張ったと思うけれど・・・

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