小説『残穢(小野不由美 著)』の感想レビュー。
もくじ
あらすじ
この家は、どこか可怪(おか)しい。
転居したばかりの部屋で、何かが畳を擦る音が聞こえ、背後には気配が・・・。
だから、人が居着かないのか。
何の変哲もないマンションで起きる怪異現象を調べるうち、ある因縁が浮かび上がる。
かつて、ここでむかえた最期とは。怨みを伴う死は「穢(けが)れ」となり、感染は拡大するというのだが──
感想
残・・・残った
穢・・・穢れ
始まりは怖い話を募集していた小説家の私のところに来た、久保さんからの1通の手紙。
『岡谷マンション』の204号室に住む久保さんは寝室から「畳を掃くような音」を聞くのだという。
同様の内容を過去にも貰っていたこともあり、「岡谷マンション」にて過去に自殺者がいるのではないか?と調べ始めるが、居ない。
調べていくうちに、「岡谷マンション」が立つ土地そのものが曰くつきなのでは?
という予想となり、さらに調査を進めるが・・・
と、穢れの出どころを求めてひたすら過去に遡っていく話。
物語は今世紀(平成)から始まり、
→前世紀(昭和)へ。
でもそれも違うな・・・
→高度成長期へ。
これも違う・・・
→戦後期へ。
うーん、違う・・・
→戦前へ。
違うなぁ
→明治大正期へ。
ここだ!
ここか?
→違うな
をひたすら繰り返す。
なげぇよ・・・
結局、とある土地で穢れに触れた人が穢れを持ち帰る。
※強力な穢れは感染し一緒に移動できるのだ!
すると、持ち帰った先の経年劣化した穢れや、弱い穢れが活性化して住人たちに視認できるようになる。
そうして活性化した穢れが「岡谷マンション」の怪奇現象の原因だった。
というのは中盤くらいに判明して、次の問題へ。
・強力な穢れは誰が持ち込んだのか?
・強力な穢れの発症はいったいどこなのか?
という展開へ。
”穢れを連れてくる”っていう設定が、現実に起こりえるんじゃないか?
って思えるのが恐怖ポイント。
家買うときに色々調べて、穢れも無い(弱い)ことも確認!
これで一国一城の主だぜ!
って思ってたら夜な夜な怪奇現象が・・・
なんで?なんで?と思ったら、
旅行先で訪れた恐怖スポットの近くを通りかかったら穢れを一緒に連れて来ちゃいました。
そうなのです。無意識に連れて来ちゃうんだよ。
本人は、心霊スポットとか穢れがある場所という認識すら無いまま感染して帰宅。
穢れはのうのうと居付くという・・・
酷い話だ・・・
もくじで追う捜査あらすじ
端緒
既視感の由来はこれだったのか、と思った。
久保さんと矢嶋さんと、二人が遭遇しているものは、同じものではないだろうか。
しかしながら、だとしたらなぜ部屋番号が違っているのだろう?
(中略)
私は久保さんにメールを書いた。
「401号室に尾崎さんという方が住んでいませんか?」
ちょっとした引っ掛かりから物語は動き出す。
今世紀
「でも、このマンションでは自殺なんて起こってないんですよね。
とすると、何かがあったとしたら、マンション以前ってことになるんじゃないでしょうか」
確かに、そう考えるべきなのだろう。
岡谷マンションが建つ以前、ここで何かがあったのだろうか?
---そもそも、マンション以前、ここには何があったのだろうか。
調査した結果、このマンションに不審な点は無い。
もっと前からなにかあったのでは?
前世紀
その原因は岡谷マンションやその前の小井戸家にはない。
過去のどの時点かはわからないが、岡谷マンションと団地、その双方に跨る家はなかったか。
その家で何かがあったのだとすれば、少なくとも現象の理屈はあう。
マンションから離れて考えてみよう。
ここから長い長い原因探しがはじまる・・・
高度成長期
「マンションと団地は工場の跡地にあるんですよね」
正確に言うならば、工場とそこに隣接する住宅地の跡地だ。
「じゃあ、さらに以前?
工場が建つ前に、工場と住宅地と双方に跨る何かがあったってことでしょうか」
かもしれない。それを探せばすべての根源が見つかるのかも。
まだまだ遡るぞ!
戦後期Ⅰ
怪談のあった工場、怪談のあった長屋。
こうなると、話はたぶんそれ以前に遡る。
植竹工業の創業は大正十一年。一九二二年のことだが、
それ以前に、ここには何があったのか。
この辺りで遡りのしつこさが・・・
戦後期Ⅱ
相変わらず植竹工業以前に存在した吉兼家については、知る方法がなかった。
長い旅だったが、ここが終着点なのかもしれない。
もくじがまだまだ終わらせないって言ってるんだよなぁ
戦前
これまでの経緯を説明し、最後に辿り着いたのが吉兼三喜であり(中略)
「ああ、顔が歪むという絵。あの奥山家ですね」
「御存じですか」
「北九州では有名です」
首都圏にある賃貸マンションの怪奇現象の原因究明は九州まで続いていた!?
明治大正期
こここそが奥山怪談の震源地。
穢れは人から人へ伝播し、土地を汚染していったのだった。
残渣
この原稿を書いている今現在も空き家のままだという。
穢れは風化しきれていないようだ・・・