小説

【望郷】島で起こった暗い過去との決別、ちょとだけ前に進める短編6偏【 湊かなえ】

『望郷』表紙

『望郷(湊かなえ 著)』の感想レビュー。

もくじ

あらすじ

瀬戸内海に浮かぶ、島に生まれ、育った人々。
島を憎み、愛し、島を離れ、でも心は島にひきずられたまま―― 閉ざされた“世界”を舞台に、複雑な心模様を鮮やかに描く湊さんの連作短編(全六編)。
収録作「海の星」が日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞、選考委員の北村薫氏は、
「鮮やかな逆転がありながら、小説の効果のための意外性のため無理に組み立てられた物語ではない。
筋の運びを支える魚料理などの扱いもいい。(中略)――ほとんど名人の技である」と絶賛。
自身も“島”で生きてきた湊さんが「自分にしか書けない物語を書いた」と言い切る会心作。
島に生まれ育った私たちが抱える故郷への愛と憎しみ・・・屈折した心が生む六つの事件。

みかんの花

あらすじ

内地の市と合併することになったため、25年ぶりに駆け落ちをして戻ってきた姉。
小説家となった姉は、白綱島市の閉幕式で祝辞を述べていた。
駆け落ちして、島を捨て、その後一切連絡をよこさなかった姉。
どんな気持ちで祝辞を呼んでいるのだろうか・・・?
妹の私は会場で姉の駆け落ち相手が訪ねてきたことを来た日のことを思い出す・・・

感想

島が嫌で出ていったのかと思いきや、裏の事情があった。
金に眼が眩んだヒッピー?とそれを守った母。
事情を知らないのは妹だけ・・・

おいおい、島を巡るほろりとした話じゃないのか?
・・・あ、作者湊かなえ先生だった。

星の海

あらすじ

父が行方不明になった。
母は、父が生きていることを信じて帰りを待っている。

息子は家計を助けるために堤防から魚を釣っていると、中年男性が魚をくれた。

以降、中年男性は定期的に家にやってくるようになり・・・
ある日、スーツ姿で来た中年男性は花束を渡しながら母に告白する。
「疾走してから三年たったんだ。自分の幸せを考えてもいいんじゃないか?」

感想

漁船で死体を引き上げると、警察に引き渡したり、事情聴取を受けたりとなにかと面倒らしい。
中年男性は漁船の船長。
少年の父が行方不明だと知っている。
なんで知っているのかだって?・・・一度は引き上げたんだよ。
その罪滅ぼしで母子に会いに来ていた・・・というオチを聞かされて、
ヒエェってなった。

夢の国

あらすじ

私が小さい頃憧れていた『東京ドリームランド』。
大人になり、ようやく家族で来ることが出来た。
いざ、堪能してみるとこんなものだったのか・・・
という感想。

私の思い出にある理想の『東京ドリームランド』は・・・

感想

こういう村社会の風習とか、祖母の顔色を伺って・・・
とか、なぞの縛りがイヤすぎる。

祖母もクソ、母もクソ。
福引の景品を返却してまで祖母が怖いのかよ・・・

あと、理想は理想のまましておいたほうがいいのかも?

雲の糸

あらすじ

島を出て有名ミュージシャンになった黒崎ヒロタカ。
ある日、島の同級生の会社式典に出てくれないか?という連絡がくる。

ヒロタカは島が嫌いだった。
アル中でDVだった父を母が刺し殺し、罪を償い出所した後も村八分にされたからだ。
その中でも筆頭でイジメてきたのが今回電話してきた男である。

嫌だ嫌だと思いながら結局島に帰省することになり・・・

感想

嫌なら断れぇぇぇッ!!
優柔不断なヒロタカにひたすらもやもやする話。
ゲロ吐くくらい、錯乱して崖から海に落ちちゃうくらい嫌なのに頼まれて断れない性格。
海に落ち、数日後、病院のベッドで目を覚まし、最後は自分の心にケリをつける。

・・・別に家族で島を出てもいいんじゃねーの?

石の十字架

あらすじ

台風が吹き荒れる日、私は昔を思い出す。
父が心の病で自殺し、祖母が居る白綱島にやってきた日のことを。
転校してから誰からも相手にされることもなく、唯一できた友達は周りから無視されていためぐみちゃん。
めぐみちゃんと山にある隠れキリシタンの十字架を探しに行き、願いをかける。
めぐみちゃんは何の願いをかけたのだろうか・・・?

感想

ふたりの少女の友情ってことでいいのかな?
めぐみは何を願ったんだろう?

光の航路

あらすじ

父がガンで高いし、同じ教師という立場に着き、
生徒間のいじめ問題に板挟みになった私に来訪者が現れた。

その人は、父のことを教師として尊敬しており、
また、私の記憶にある進水式に父が私ではなく違う子と見に行ったその当人であった。

その人は語る。
自信がいじめられいた経験を。
そして、私と父のわだかまりとなった進水式の時の話を・・・

感想

進水式の時の父の状況が判明し、心のなかで和解。
現状の自分と照らし合わせて前向きに進めるようになる。

全体の感想

暗い話が多め。
やっぱり、湊先生の作品通りじゃないですか~~ッ!!

暗い過去をふりかえり、現在にほんのちょっぴり救いがある。
そんな短編集。

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